祇園のど真ん中にある和と洋が調和する美術館
-文/和樂スタッフ小西治美(京都出身のフォトエディター。寺社にも強い)-
祇園の石段下近く、四条通に面した美術館の入口。いつも観光客で賑わうスポットだが、一歩中に入ると、静寂な異空間が広がる。ちょっと変わった館名には、常に定説を疑い、「何ぞ必ずしも」と、自由な精神を持ち続けたいという館長・梶川芳友(かじかわよしとも)氏の願いが込められている。建物の設計も梶川氏自身により、収集品も、その目を通して選りすぐられたものばかり。各々の作品に出合いから収集までの物語がある。
1963(昭和38)年、22歳のとき、村上華岳(むらかみかがく)展で若き日の釈迦の姿を描いた「太子樹下禅那(たいしじゅかせんな)」に出合い、「生涯を美術のことにかけようと決意し……この画はきっと自分の元に来るという妙な予感が心に浮かんだ」という。以来、華岳の絵を追って全国を訪ね歩き、ついに17年後に絵を手に入れた。
「何必館(かひつかん)」は村上華岳のための美術館として建てられ、5階の茶室にこの絵を掛ける最上の空間が設(しつら)えられた。その前に屋根のない坪庭が広がる。常設展は、村上華岳、山口薫(やまぐちかおる)、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)を中心に展示し、企画展では、木村伊兵衛(きむらいへい)、カルティエ=ブレッソン、ドアノーなどの写真家や現代美術家の展覧会を開いてきた。
私はエレベーターで5階から地下まで行ったり来たりすることにしている。1点1点の作品が、まるで舞台の照明のようにライティングされ、魅力をより引き出している。静けさと、作品から受ける緊張感と解放感。どれもがないまぜになり、心ひかれる美術館だ。
何必館・京都現代美術館(かひつかん・きょうとげんだいびじゅつかん)
住所 京都市東山区祇園町北側271
開館時間 10時~17時30分(入館は17時まで 展覧会によって変更あり)
休館日 月曜(祝日は開館)
入館料 1,000円