「すり鉢」と聞いて、「私には関係ないわ~」と画面を切り替えようとした方、ちょっと待って。「丁寧な暮らし」の代名詞とも思われている(!?)すり鉢ですが、実は「手軽においしいごはんを作りたい! 」と願う方にぴったりの名道具なんです。
すり鉢を使った味噌汁は、とってもおいしい
以前に「土鍋で作る味噌汁がおいしい」という記事を執筆して、さっそく実践された方から数々のメッセージをいただきました。自炊する機会が増えつつある今、やっぱり、普段の料理がおいしく仕上がる喜びに勝るものはないですよね。
心身に染みる絶品!時短料理にも活躍する「土鍋」で味噌汁を作ってみよう!
そんなわけで少し調子に乗って(笑)。土鍋に続いて私が気に入っているのが、すり鉢を使った味噌汁づくり。味噌をすり鉢ですって出汁に加えるだけですが、格別の味わいになります。だまされたと思って、ぜひ試していただきたい!
すり鉢を使った味噌汁の作り方
何はともあれ、まずは作って味わってみましょう。
1.出汁に具材を入れて火を通しておきます(味噌を入れる前の状態)。すり鉢に人数分の味噌を入れます。
2.1のすり鉢におたま一杯弱分の出汁を入れて、すりこぎですって味噌を溶かします。
3.2で溶かした味噌を、鍋に注ぎ入れます。ひと混ぜすれば、あっという間にできあがり!
100均にもある!? 一人分には小さいすり鉢もおすすめ!
一人分の味噌汁を作る時には、小さいサイズのすり鉢を使うと作業しやすくおすすめです。シンプルな味噌汁も、ほんのひと手間加えるだけでおいしく仕上がります。手のひらサイズのすり鉢は、100円均一のお店などにも置いてあります。気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
江戸時代の人々は、すり鉢で味噌をすっていた!?
私が味噌汁づくりにすり鉢を使うようになったのは、マクロビオティックという食事法を学んだことがきっかけでした。でも実は、江戸時代はすり鉢で味噌を擦るのはよく見られる光景だったのだとか。当時は、味噌と言えばつぶつぶ感のあるタイプがほとんど。濾(こ)した味噌が販売されるようになったのは明治末期になってからとされています。
また、昭和9年に発表された書籍『温かくて美味しい冬の家庭料理』には次のような記述もあります。
味噌は濾味噌よりも粒味噌を、拵(こしら)える度毎にすりつぶして用いる方がよい
もし手に入れば、ぜひ粒味噌をすり鉢ですってみましょう!
ちなみに、味噌汁が生まれたのは鎌倉時代末期~室町時代ごろ。これはすり鉢とすりこぎが広まった時期とも重なっています。すり鉢やすりこぎの登場によって、味噌はなめてそのまま味わう「なめもの」から、味噌汁や調味料へと展開していったのです。料理の幅を広げたという意味でも、すり鉢は偉大な存在ですよね!
温故知新!定番にしたい、すり鉢の使い方
もちろん、すり鉢は味噌汁づくりだけなく、薬膳料理や離乳食などさまざまな料理に活用できます。特に「身体にやさしい料理を手軽に作りたい! 」という方には、ぴったりの道具です。では、定番にしたいすり鉢の使い方をご紹介しますね。
すり鉢×ごま(ごま塩、青菜のごま和え)
すり鉢を使った定番料理と言えば、やっぱり「すりごま」ですね! 美味しい自然塩と組み合わせて「ごま塩」を作ってみましょう。我が家では1~2週間で食べ切る分ずつ作って、小瓶に入れて常備しています。手作りのごま塩はとてもおいしく、キケンなほどにごはんが進みますよ(笑)。
煎りたて擦りたてのごまを使うと、箸が止まらなくなる「青菜のごま和え」。すり鉢でごまを擦った後、さっと茹でて水気を絞った青菜を加えて、味付けして混ぜ合わせます。ちなみに、「ごまをする」のは子どものお手伝いにぴったりです。自分で作ったという自信と、甘辛くて香ばしい味わいがあり、野菜が苦手な子もおいしく食べられること間違いなし!
すり鉢×長芋・自然薯(とろろごはん)
「とろろごはん」もすり鉢を使った定番料理です。すりおろした長芋や自然薯をすり鉢に入れて、出汁や卵、酢やしょうゆなどの調味料を加えてすります。ボウルなどで混ぜて簡単に作ることもできますが、滋味深い味わいはすり鉢ならでは。お好みで、種を取って叩いた梅干しやすりごまなどを混ぜるのもよく合います。
すり鉢×よもぎなどの野草(よもぎ餅)
春になると食べたくなる「よもぎ餅」。先人の知恵にならって、すり鉢を使って作ってみましょう。よもぎの葉先(柔らかい部分)を摘み取り、さっと茹でて刻んだものをすり鉢ですります。これを白玉粉やもち粉などに混ぜて丸めたものを茹でれば、できあがり! 春らしい淡い緑色と独特の香りがあって、目からも口からも楽しめる一品です。
すり鉢×スパイス(中華料理、タイ料理などのエスニック料理)
すり鉢は、スパイスを砕く時にも役立ちます。例えば、麻婆豆腐に欠かせないスパイス「花椒(ホアジャオ)」をすり潰すのにも向いています。他にも、タイ料理などでよく使うスパイスすり潰し器「クロックヒン」などの代用としても使えます。砕いたばかりのスパイスは、とても豊かな香り! いつもの料理がグンと引き立ちますよ。
すり鉢×加熱した野菜(離乳食、ポタージュスープ)
すり鉢は、フードプロセッサーやミキサーの代わりに使うこともできます。写真は、離乳食づくりの様子。おでんや煮込み料理などで柔らかく加熱した根菜類を、すり潰して食べやすくしています。すり鉢で作る離乳食の主なメリットは、「少量でも作業しやすい」「テーブルで食べながら作れる」こと。
フードプロセッサーなどを使う場合に比べて、後片付けも断然ラク! また、つぶつぶ感は残りますが、ポタージュスープを作る時にも活用できます。「胃腸の調子がすぐれない」「消化に良いものを食べたい」という時にも、すり鉢は役立つ道具なんです。
他にも、すり鉢を使った定番料理としては、豆腐と野菜を組み合わせた「白和え」や山形県の冬の家庭料理「納豆汁」、くるみをすり潰して作る「くるみダレ」「くるみ餅」などもあります。アイデア次第で、まだまだいろんな料理に使えそう!
すり鉢を復活させて、奥深い魅力を感じてみよう
フードプロセッサーやミキサーなど、食材を粉砕する便利な道具が次々登場するなかで、すり鉢が昔から受け継がれてきたのには理由があるなぁと感じませんか?
時代を越えて受け継がれてきた、すり鉢。シンプルな道具でありながら、味噌汁をはじめ普段の料理をワンランクアップさせてくれる貴重な名道具です。もし、自宅の棚に眠っているすり鉢があれば、ぜひ引っ張り出してみて。そして、すり鉢の奥深い魅力を、思う存分楽しんでみてはいかがでしょうか。