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2021.07.02

ドヤァ!カッチカチやでぇ~!石レベルに硬い香川名物「カタパン」は日清戦争の非常食だった

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弘法大師生誕の町として知られる、香川県善通寺市。四国霊場第75番札所「善通寺」の仁王門近くのレトロな外観のお店が「熊岡菓子店」です。ここに日本一硬いと言われる「カタパン」というお菓子があります。どこがどれだけ硬いのか、そして何のためにそんなに硬くしているのか、謎は深まるばかり。現代の“ふんわり”“もっちり”“サクサク”といった“映えスイーツ”の形容詞をものともせず“カッチカチ!”にこだわり続ける老舗の味の秘密を探りに出発します。

朝の行列は地元じゃ有名。昼には売切れも!


創業は1896(明治29)年。建物は1913(大正2)年に建てられたもので、当時の面影そのままのレトロな外観に「名物本家カタパン」の暖簾。早朝にも関わらず駐車場には開店を待つ車や店先に並ぶお遍路さんの姿が。この光景は地元の人には見慣れた風景なのだとか。

「おはようございます~お待たせしました~」という声で引き戸が開かれます。

店をきりもりするのは3~5代目にあたる夫婦3組。店頭を取り仕切るのは3代目の店主・熊岡司郎さん(88)の奥さんである民子さん(86)です。店頭には使い込まれたガラスの陳列ケースが並んでおり、そこにカッチカチの“カタパン”が並べられています。

見た目はもうそのまま、紛うことなくストレートに“石”です。質実剛健的な。

並んでいるお客さんに話を聞いてみました。奈良から来たというお遍路さんのご夫婦は「前に来た時はお昼を過ぎていたから売り切れで。今回はお店の開店時間に合わせてお遍路のスケジュールを組んでリベンジしにきました」とのこと。また地元香川県のお客さんは「遠方に住む友人がTVで見て食べたいから送って欲しいと頼まれたので」と、車で1時間かけてやってきたそうです。カタパンは大人気で早い時にはお昼を待たずに売切れになってしまうことも珍しくないそうです。

かつて兵隊パンと呼ばれていたカタパンの歴史

カタパンの歴史は古く、考案したのは初代店主・熊岡和市さん。当時大阪の菓子店で大番頭をしていた和市さんに日本軍から軍用食の開発の依頼があったそうです。ちょうど日清戦争の頃だったといいます。戦地に赴く兵隊さんの常備食や非常食として「軽くて、日持ちがして、腹持ちも良い」という軍部の要望に応え、フランス料理にヒントを得て、和市さんが作り上げたのがカタパンだったのです。創業当時は“兵隊パン”と呼ばれていたそうです。

このカタパン、どうやって作っているのか、気になりますよね。民子さんに聞いたところ「詳しい作り方は一切公開していません。門外不出で先代から代々家のもんに受け継いできたもの」だそう。店の奥では何やら「トントントントン」というリズミカルな音だけが響いています。この奥で3代目、4代目、5代目が腕を振るっているんですね。「せめて材料だけでも」と食い下がると「メリケン粉と砂糖、あとはナイショ」と民子さんにおちゃめにあしらわれてしまいました。小麦粉と砂糖を練って伸ばして切ったものを焼いて乾燥させて作られるらしいのですが詳しい事はTOP SECRET!

カタパン作りの工程は昔から変わらず「変わったのはれんがの釜から電気になったくらいで、他は何も変わらないんです」と民子さんは笑います。

店頭を取り仕切る民子さん

この門外不出の作り方を貫き、ここでしか手に入らない味を守っているんですね。軍用食を経てカタパンは「善通寺」にお参りに来たお遍路さんの手土産として広まっていくことになります。さらに最近ではテレビ番組や雑誌、SNSなどを通じて“カタパン”の存在を知ったという若いお客さんも増えています。また「熊岡菓子店」のある善通寺は自衛隊の基地があることでも知られており、基地を見学に訪れた自衛隊のファンの人がお土産として購入する人もいるそうです。

さて、お味が気になりますよね。早速購入してみましょう。

店頭にあるのは「石パン」(100g200円)「角パン」(1枚30円)「中丸パン」(1枚50円)「大丸パン」(1枚300円)「小丸パン」(1枚20円)など5種類のカタパンですが最強に硬いのは「石パン」です。グラム売りなので、店頭で欲しいだけの量を伝えます。初めてで勝手がわからない時も「100gってどのくらいですか?」と聞くと丁寧に「このくらい」と教えてもらえるのでご安心を。中には「100gを20個ね」という強者のお客さんも珍しくありません。購入すると入れてくれる袋のデザインも可愛いんですよ。

イザ実食~! カッチカチやでぇ!

さてそれでは実食とまいります。

「硬っ、カッチカチやないか~い」。

カタパンの存在を知らず「甘い石」と言われたら信じてしまいそうなレベルで硬い。しかし味はほんのり甘く生姜の風味もふわりと鼻に抜ける優しい味です。

しばらくはキャンディーのように口の中で転がしてその味を堪能します。「そろそろいけるかも? 」と歯の弱い筆者が勇気100%で噛んでみたところまさに「歯が立たない」状態。危ない危ない。
それでもしばし口に含んでいると、ほろりとほどけて口に広がり、溶けていきました。

あら不思議。

食感はクッキーとも違い、口の中の水分を持って行かれることもないのでなるほどこれは軍用食にピッタリ、と納得しました。厳しい状況の戦地でほんのり甘いカタパンは兵隊さんの心強い味方だったに違いありません。

賞味期限は約1ヵ月と長めなのも嬉しい限り。軽くてコンパクトなので登山などに持参してもいいかもしれませんね。

史上最強の硬さを誇るカタパンの美味しさをぜひ味わってみてください。オンラインショップはありませんが、遠方の方への地方発送も対応してもらえるそうです。

店頭にはカタパンの他にもミレービスケット、えびせんべい、芋けんぴ、ボーロなど昔懐かしいお菓子が並んでおり、こちらも量り売りで購入できます。カタパンと一緒にあれこれお好みのお菓子を大人買いしてみるのも楽しそうです。香川にはうどん以外にも美味しいものがたくさんありますよ。

熊岡菓子店

住所/香川県善通寺市善通寺町3-4-11
TEL/0877-62-2644
営業時間/9:00〜16:00
定休日/火曜日(祝日の場合は営業・振替の場合あり)、第3水曜日
駐車場/5台
※連休中を除き電話による予約可能

書いた人

せとうちに暮らすカエル好きライター。取材先に向かう山道で迷いイノシシに遭遇した経験あり。京都国立博物館トラりんの強火おたく。ジャニヲタ。No J No Life。HP:https://ww-kitamura.com/ Twitter:@yukkisetouchi