縄文時代に新潟県で出土し、縄文土器(じょうもんどき)の中で唯一の国宝に認定された「火焰型土器(かえんがたどき)」。発掘された年代は、約5300年前の縄文中期。約500年の間だけつくられました。歴史の教科書などにも掲載される代表的な縄文土器なので、その姿を目にすることが多いわりには、特徴や由来など意外と知らないことも多い…。今回はそんな「火焰型土器」の、まずは知っておきたい6つのことをご紹介します。
「火焰型土器(指定番号1)」国宝 新潟県十日町市 笹山遺跡 縄文中期 高さ46.5㎝ 新潟県・十日町市博物館蔵
1 ニワトリだと思ったら実はサカナ?
いちばんの特徴は4つの大きな「鶏頭冠突起(けいとうかんとっき)」。鶏のトサカに似ていますが、この時代・地域に鶏がいた記録はなく、「水面を跳ねる魚」か「四本脚の動物」を象ったと言われています。突起には左向きと右向きがあります。
2 逆さまに埋まっていました
1982年に新潟県十日町市の笹山遺跡から出土。鶏頭冠突起を下にした逆さまの状態で発見され、突起も尻尾もほぼ完璧な状態だったそうです。胴体下部と底は欠損していましたが、4年間かけて破片を捜索。完全な形に修復されました。
3 人類初の化学製品?!
粘土に鉱物や繊維を混ぜ、低温で焼いて硬い器にする。縄文土器は、人類が初めて化学変化を応用してつくったものでした。石や骨を削るのと違い、成形途中で形の修正ができる点も画期的。個性的な造形を生みました。
4 ギザギザのヒミツは…?
口縁(こうえん)にノコギリの歯のようなギザギザがあるのも、火焰型土器の特徴。このギザギザが「火焰」の語源となりました。その特徴的なデザインを強調するように、粘土のひもで縁取りされている点も見どころです。
5 「縄文」じゃないんです
縄文土器ですが、縄で文様をつける「縄文」はナシ。胴体の表面は粘土のひもを貼り付けたような隆線(りゅうせん)や隆帯(りゅうたい)と渦巻き文で埋め尽くされています。「トサカとノコギリはあるが縄目はない」のが火焰型土器のスタイルです。
6 実際に煮炊きしていました
器の内側にオコゲ(炭化物)や変色が見られることから、食物の煮炊きやアク取りに使われたことがわかりました。縄文人の主食は木の実。ドングリやクルミと動物性食材を合わせた料理も、つくられていたようです。