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道行く人たちに四季折々の景色を届ける京菓子店「亀屋良永」
寺町通を上がり御池通(おいけどおり)にぶつかる手前の左角。「亀屋良永」のウインドーをのぞき込むと、斜め向かいに人の気配を感じます。視線を上げると、御池通に面したウインドーを凝視している人がいる。お互い、目が合って照れ笑い。
この店に足を運ぶようになって、こんな場面に何度遭遇したことでしょう。
和菓子とうつわ、花に掛け軸と趣向を変えた3面の出窓が、この店のもうひとつの〝顔〟です。
京菓子は四季を映しながら変わるもの。
暦どおりには季節は変わらない
「ウインドーの目を変え、品をかえることを考えるのは店の〝親父〟の仕事です。菓子屋に限らず、親父がいる店が少なくなったのは寂しいもんや」とは、5代目の下邑 隆(しもむら たかし)さん。
現在は息子・修(おさむ)さんが6代目を継いでいますが、5代目も毎日店に顔を出し、帳場から目配りをしています。
「京菓子は四季を映しながら変わるもの。暦どおりには季節は変わらないし、お菓子をかえるタイミングを決めるのが腕の見せどころ。外の空気を運んできてくださるお客様との会話も大事でね、頭の隅ではお菓子の参考になることはないかと考えてしまうね」と下邑さん。
名物「御池煎餅」に並んでウインドーを飾るのは、自身が創案した落雁「大原路(おおはらじ) 」。長方形の中に丸の入る単純なデザインですが、丸の形と色が変わるだけで、それが菖蒲(あやめ)にも秋の月にも見えてくる茶心あふれるお菓子です。
ウインドーショッピングという言葉が消えつつある今、京都の店先も変わりました。だからこそ昔ながらのあり方を続けるこの店が尊く感じるのです。