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Gourmet
2019.09.02

【沖縄】三つ星シェフがゴーヤーチャンプルーをつくったら? 恩納村のハイアットの唯一無二の「沖縄料理」

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わたしは食文化ジャーナリストとして日本各地の食の取材を行っている。沖縄の食のシーンが、極めて注目すべき進化を遂げているという噂を聞いて、現地を訪ねてみた。

ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄


2018年夏、沖縄県恩納村にオープンした「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」。ハイアットの国内初となるビーチリゾートは、沖縄本島から橋でつながった小さな島・瀬良垣島に位置し、360度を海に囲まれた最高のロケーション。


全客室に設けられたオープンエアのバルコニーから、「瀬良垣ブルー」ともいわれる、澄み切った青い海を満喫する極上のひとときが過ごせる。

ミシュラン三つ星「かんだ」神田裕行氏が手掛ける「沖縄料理」

ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄の魅力は、ロケーションのみなららず「食の愉しみ」がとことん謳歌できることだ。オールダイニング、イタリアンに加えて炉端、寿司、鉄板焼、日本料理の4ジャンルで構成されたスペシャリティレストラン「シラカチ」を備えている。

なかでも注目は「シラカチ・炉端」。12年連続でミシュラン3つ星を獲得する、和食の名店である東京・西麻布「かんだ」のオーナーシェフ・神田裕行氏が顧問・プロデューサーを務める。

「琉球炉端 by Kanda」と銘打ち、店内の炉端カウンターでは。神田氏が厳選したイセエビ、アワビ、山原地鶏など沖縄産を中心とした食材の炭火焼が堪能できる。

しかしそれだけではない。神田氏による「唯一無二の沖縄料理」を味わうことができるのだ。

「琉球スペシャリティ」として提供されるのは、ゴーヤーチャンプルー、ラフテー、沖縄そば……。メニューリストには沖縄ではおなじみの料理が並んでいる。沖縄フリークのなかには、「若干食べ飽きた」という人もいるかもしれない。しかし、そんなあなたにこそ、食べていただきたい。「驚きの連続」が待ち受けているからだ。

三つ星シェフがゴーヤーチャンプルーを作ったら?

「沖縄には、島野菜をはじめ、個性あふれる多くの素晴らしい食材があります」と語るのは総支配人の野口弘子さん。「パークハイアット」「東京ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ」などの立ち上げに関わってきた野口さんは「景観だけに依存しない、その土地に根差した『唯一無二の魅力』があるホテル」を作り上げたい、と模索していた。

そのために、重要視したのが「沖縄の食」だ。

「この料理を食べるために『ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄』へ泊まりに行きたい、そんな『食のコンテンツ』を実現したいと思ったんです」。それも「どこにでもあるもの」ではない料理。野口さんは沖縄に住民票を移し、地元の食材に触れ、郷土料理を食べ歩いて研究を重ねるうちにふと思い立った。

「あの神田さんがゴーヤーチャンプルーを作ったら、どんな味わいになるんだろう?」って(笑)

もともと地元で親しまれている料理が、三ツ星シェフの手にかかったら、新たな魅力が浮かび上がるかもしれない。野口さんの想いを受け、メニュー作りに挑んだ神田氏。何度も沖縄に足を運び、食材を確かめ試作を繰り返したという。器、盛り付けまで吟味し、野口さんや現地スタッフとそれはそれは細かなやりとりが重ねられた。

そして誕生したのは、これまで誰も食べたことのない「沖縄料理」。

ゴーヤーが「縦切り」!世界一「癒し系」のゴーヤチャンプルー

神田流沖縄料理は前菜から予想を覆されるものだった。

鮮やかな朱色の漆器に盛り付けられた「本日のお惣菜盛り合わせ」は、「ゴーヤとセロリの梅和え」「海ぶどうとハンダマの胡麻ゼリー和え」「ニシンの昆布巻き」。

まず、ゴーヤーの形状に注目していただきたい。通常よく見る「輪切り」ではなく、縦にカットされているのだ。「神田切りです(笑)」と野口さん。「神田さんのアイデアに驚きました。食感と料理全体の味なじみがよくなるんです」。

口に入れると、サクサクとシャープなゴーヤーの味わい。おおむね、料理のなかにおいて主張が強いゴーヤが、セロリ、梅とバランスよく奏でる心地よい穏やかなハーモニーに驚く。

次なる衝撃は「ふわとろゴーヤーチャンプルー」。目の前に現れたのはどうみても、「オムレツ」! これが、ゴーヤチャンプルー?

戸惑いながら箸を入れると、かの「縦切り」ゴーヤー、豚肉、島豆腐にもやしが登場!

神田氏の遊び心あふれる、アイデアだ。ムース状のふわふわ、とろとろのたまごにくるまれたゴーヤチャンプルーは、これまで味わったことのない「やさしさ」に満ち溢れている。おそらく、世界一「『癒し系』のゴーヤチャンプルー」だ。

「日本酒」と好相性すぎる「ラフテー」、やさしすぎる「沖縄そば」

驚きは続く。「あぐー豚のラフテー、琉球煮物椀 冬瓜とハンダマ添え」。

沖縄風豚の角煮「ラフテー」をたっぷりの出汁と豚肉で煮物椀のように仕上げた一品だ。その味わいは「どこまでも繊細」。カツオと昆布の一番出汁と、エレガントな仕上がりのとろりとした豚肉は、透明感さえ感じるほど限りなく「和」に近い。

シラカチ炉端では、お酒とのペアリングも楽しめる。スタッフがこのラフテーに進めてくれたのは、泡盛ではない。「醸し人九平次大吟醸」である。

ラフテーを洗い流すのではなく、たおやかに寄り添うようなマリアージュ。最高の相性だ。

人気メニューという「島らっきょうと県産豚焼き」は、ニュージーランドの「クラウディー・ベイソーヴィニヨンブラン」とともに。

ジューシーな豚肉と島ラッキョウの個性が品がよく香り立つ串焼きは、みずみずしいアロマと爽快感のあるワインと合わさって、じつに軽やか。

シメには「アーサ入り沖縄そば」。

県内屈指の品質を誇る恩納村のアーサ(アオサ)をたっぷり使った沖縄そばは、またしても「やさしい」。たっぷりのカツオでとった芳醇な出汁に、潮の香り高くやわらかなアーサ、そして試作の結果、あえて灰汁を使わないで作られた麺とが醸し出す味わいは、寄せてはかえす夕凪のように穏やか。朝ごはんとしても食べたくなるようなホッとする一品だ。

食堂や居酒屋で提供される「にぎやかな味わい」の沖縄料理も楽しいけれど、食材ひとつひとつの旨みを感じる「繊細な味わい」の沖縄料理に舌鼓を打ち、新たな魅力を見出すのも、また楽しい。「唯一無二の沖縄料理」を堪能しに、ぜひ訪ねていただきたい。

ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄

書いた人

薬膳アテンダント。国立北京中医薬大学日本校卒業、国際中医薬膳師資格取得。食文化ジャーナリスト、さばファンの団体「全日本さば連合会」にて広報担当「サバジェンヌ」としても活動中。http://www.yuruyakuzen.com/