Craft
2019.10.21

岐阜県多治見生まれ、秋にも使える風鈴〈3RD CERAMICSのサンカク〉

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去る8月24日は、二十四節気の処暑にあたる日だ。〈暑さが落ち着く日〉という意味で、この頃を境にだんだん涼しくなるとされている。

……とはいっても、それはあくまで暦の上の話。ピークは去ったものの、その勢いはまだまだ盛んで、30度を超す真夏日が綿々と続いている。古代中国の暦に物申すのも野暮な話だが、それにしてもひどい暑さである(処暑ということで近所の青果店が焼き芋フェアを行っていたが、まったく売れていなかった。無理もない話だ)。

理想の風鈴を求めて

こういうときに冷房に頼るのはいかにも容易だ。しかし、それでは電気代がかさむし、体にもよろしくない。せめて風鈴を取り付けて気持ちだけでも涼しく……と雑貨屋に出向いたが、これというものがなかなか見つからない。和雑貨の代表ともいえる風鈴。当然ながら、洋室にぴったりと馴染むものはそう多くないのである。

このまま夏が終わってしまうと危惧していたところ、ようやく巡り合ったのが、今回紹介する〈サンカク〉というプロダクトだ。

和にも洋にも馴染むデザイン

この作品を手掛けたのは、長屋有氏と土井武史氏、花山和也氏の3人が立ち上げた〈3RD CERAMICS〉というブランドだ。陶磁器で有名な岐阜県多治見市を拠点に、素材や製法にこだわったオリジナルアイテムを展開している。

ブランドのコンセプトは「気づきのある暮らしを送る人へ」。日々のささやかな幸せに気づけるような作品づくりを大切にしている。

外見(本体部分)には無釉の磁器を使用。和室だけではなく、洋室にも調和する奥行きの深いデザインに仕上げている。窓辺に飾れば空間の程よいアクセントになってくれそうだ。

外見は、液体状の素材を石膏型に流し込む泥漿鋳込み(でいしょういこみ)という成形技術で生産している。音鳴りを重視し、薄手の生地を作りやすいこの技法を採用したとのことだ。

こだわりに、こだわりを重ねて

短冊には手漉きの和紙を、吊り紐には蝋引きした麻紐を採用するなど、細かい部品選びにも妥協がない。特にこだわりを感じさせるのは、舌(内側にある重り)に真鍮を採用した点だ。風が吹くたびに金色の輪が見え隠れし、耳だけではなく、目でも風情を楽しむことができる。

ホワイトとゴールドの対比が実に美しい。メーカーによると、外見には通常のものより白色度の高い磁器を採用しているということだ、

風鈴を構成するすべてのパーツにこだわりが詰まっている。

新時代の風鈴

素材の特性上、音量はかなり控えめとなっている。ガラスの爽やかな響きも素敵だが、磁器ならではの奥ゆかしい響きも実に魅力的だ。ちなみに、この作品は他にもバリエーションがあり、形状ごとに音色が異なっている。聴き比べて、心の琴線に触れるものを探してみるのもまた一興だろう。

パッケージのデザインにも抜かりはない。大切な方への贈り物にもぴったりだ。

少し話が変わるが、時代の流れによって日本人の価値観が変化し、風鈴は〈騒音の発生源〉として捉えられるようになった。住宅が密集する都市部ではその傾向が特に強い。和室の減少と、ライフスタイルの変化。このふたつの要因が向かい風になり、風鈴は日陰へ日陰へと追いやられている。

和にも洋にも馴染み、音量も控えめな〈サンカク〉は、新時代の風鈴と呼ぶにふさわしい作品だ。風鈴を使わなくなった方や、これまで飾ったことのない方にぜひ試していただきたいと思う。日本の美意識が詰まったこの逸品は、海外の方へのお土産にしても非常に喜ばれそうだ。

真鍮は空気に触れることで表面が酸化し、味わい深い色合いに変わっていく。ぜひ、その美しい経年変化を楽しんでほしい。

この素敵な風鈴を夏の間だけのものにするのは、いささかもったいない。ドアベルとして使ったり、モビールのように飾ったりして、一年を通して耳目で楽しんでみてはいかがだろうか?

3RD CERAMICS スタジオ情報

住所:〒507-0026 岐阜県多治見市虎渓町2-16
Webサイト:http://3rd-ceramics.com/