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2019.11.18

黒田官兵衛の刀剣から若冲まで!九州が誇る福岡市博物館の魅力を大解剖!

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金印『漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)』。歴史の授業でその名前に聞き覚えがある方は多いのではないでしょうか。このいちばん小さな国宝を所蔵するのが福岡市博物館です。

また、昨今の刀剣ブームなどの影響を受け、豊臣方と北条方を調停した武将・黒田官兵衛が、その礼として北条氏直から贈られた太刀、国宝 太刀 名物『日光一文字』(くわしくはこちら)を所蔵していることでも有名です。今回は、金印をはじめ、博物館を代表する作品や、展覧会情報などをご案内します。

福岡市博物館とは?

福岡市博物館は、平成元(1989)年に開催されたアジア太平洋博覧会のテーマ館を引き継いで翌年開館しました。アジアとの交流で育まれた福岡の生活文化の研修・発信を柱に、福岡藩主黒田家伝来の美術品やアジア地域の美術品、考古資料も多数所有しています。また、風俗研究家でもあった日本画家の吉川観方が収集した幽霊や妖怪の絵画のコレクションも充実しています。

福岡市博物館外観

入り口では巨大な彫刻がお出迎え

正面入口の両側に立つ4体のブロンズ像は、フランス近代彫刻の巨匠、エミール・アントワーヌ・ブールデルの作品です。高さ3.75m、重さ1tの巨人たちは、向かって左が「雄弁」「力」と名付けられた男性像、右側に「勝利」「自由」と名付けられた女性像です。4体の像は、もともとアルゼンチン大統領、アルベール将軍の記念碑の一部として制作されたもので、1912年に依頼を受け、10年以上の歳月をかけて制作。その後、福岡市が市制100年を記念してパリのブールデル美術館から購入しました。

作者のブールデルは、ロダンの助手をへて、1910年の「弓をひくヘラクレス」という、ギリシア神話の英雄ヘラクレスが怪鳥ステュムファリデスをで矢を射ようとする瞬間を表現した作品で世に認められました。このブロンズ像は全部で8組作られ、そのうち福岡市博物館のものは「雄弁」が6組目、他の3体が7組目に鋳造されたものです。国内では、同じ像一組が神奈川県の彫刻の森美術館、「力」が北海道立近代美術館に展示されています。

代表的な所蔵作品

金印をはじめ、福岡市博物館所蔵の貴重なコレクションを3つご紹介します。

金印『漢委奴国王』

江戸時代の天明(1784)年に福岡県の博多湾に浮かぶ志賀島(しかのしま)で発見された鋳造による金製の印。印面に「漢委奴国王」の文字が彫られていて、後漢の光武帝(こうぶてい)が「倭奴国」に下賜した印と考えられています。筑前藩主である黒田家に代々伝わり、昭和53(1978)年に福岡市に寄贈されました。金印について、くわしくはこちらをご覧ください。

小学館ウィークリブック『週刊ニッポンの国宝100』 vol.3 (燕子花図屏風/金印)より

『洛中洛外図屏風』

昔の京都の市中と市外を鳥瞰的構図で描いた『洛中洛外図屏風』は、室町時代から江戸時代まで数多く制作され、時代によって政治色が現れるなどその画面構成が変化していきました。

本作では右隻は五条橋から寺町通り、清水寺、祇園社。左隻は室町通から御所あたりまで。ほかの『洛中洛外図屏風』に比べると小型ですが、商いをする店の人や通りを行き交う人々など、桃山から江戸時代にかけての京都の風俗の表現に焦点が置かれているのが特徴で、ポルトガル人など外国人の姿も描かれているのが面白いところです。

洛中洛外図屏風 狩野孝信 重要文化財 六曲一双 江戸時代(17世紀前半) 福岡市博物館

洛中洛外図屏風(部分) 細かく描かれた女性たちの服装に注目したい 2016年8・9月号別冊付録より

なお、作者の狩野孝信(たかのぶ)は、永徳の次男で探幽の父。ふたりの天才絵師の橋渡し役となり、狩野派が徳川家の御用絵師となる礎をつくったという絵師でした。

伊藤若冲の『付喪神図』

室町時代の付喪神絵巻の冒頭には、「器物も100年経つと精霊になり、よく人をたぶらかす。これを付喪神(つくもがみ)という」というような意味の詞書があります。これだけを読むとちょっと怖さを感じる付喪神がコミカルに描かれているのが、伊藤若冲の『付喪神図』です。暗闇を背に手足が生えた茶釜や水指(みずさし)などがユーモラスな表情で描かれていて、見る人を思わず微笑ませます。

付喪神図 伊藤若冲 江戸時代中期 福岡市博物館蔵

2019年9月からの展覧会情報

特別展はもちろんのこと、各企画展示室でも多様な展示を行なっているのも魅力のひとつ。今回は、2019年8月から11月まで行われている展覧会をご紹介します。

特別展「侍 ~もののふの美の系譜~The Exhibition of SAMURAI」

平安時代中期(11世紀)から桃山時代(17世紀初頭)にいたる、約600年間にわたる甲冑・刀剣等の優品約150点を一堂に展示。戦場という実用性が高く求められる場で研ぎ澄まされてきた甲冑・刀剣の歴史的な進化を紹介。
入場料金:一般:1,500円 高・大生:900円 中学生以下無料
期間:2019年9月7日(土)~11月4日(月・振休)

公式サイト

企画展示

■古の刀剣
日本において北部九州ではじまった戦いと刀剣の歴史について、弥生時代から古墳時代の遺跡から発掘された出土品を中心に紹介。
期間:令和元年8月20日(火)~10月20日(日)

■藩主になるはずだった殿様
江戸時代、筑前国(ちくぜんのくに 現在の福岡県北西部)ほぼ一国を治めたのは、福岡藩主・歴代の黒田家です。歴代黒田家の中で、藩主の長男で幕府からも跡継ぎと認められ「藩主になるはずだった」にも関らず、何かしらの理由で藩主にならなかった殿様を取り上げ、その人柄や理由を解明。
期間:令和元年7月9日(火)~9月8日(日)

■市制施行130周年記念 福岡市 これまでとこれから2
明治22(1889)年に福岡市が誕生してから130年目になることを記念し、市内の都市化や地域の開発の際に行われている発掘調査とその時代背景について紹介。
期間:令和元年7月17日(水)~10月27日(日)

■筒描(つつがき) ー庶民生活の華ー
筒描とは、染色方法のひとつで、筒先から絞り出す糊を用いて輪郭を防染(ぼうせん。染料で布が染まらないようにすること)し、模様を描く技法のこと。風呂敷に描かれた筒描からひとつの物語(フィクション)を仕立てた展示。

福岡市博物館の利用案内

住所:福岡市早良区百道浜3丁目1-1

観覧料:一般 200円 高大生 150円(特別展の観覧料は別途)
開館時間:9:30〜17:30(入館は17時まで)
休館日:毎週月曜日(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)、年末年始(12月28日〜1月4日まで)

■福岡市博物館のアクセス
・市営地下鉄:西新駅1番出口から徒歩15分、または、西鉄バスで10〜15分

・西鉄バス:博多駅から 行先番号【312】能古(のこ)渡船場行き、または【306】藤崎行きに乗車、博物館北口で下車。乗車時間約25分。

天神駅から 行先番号【302】能古(のこ)渡船場行き、または【W1】【W2】藤崎行きに乗車、博物館北口で下車。
行先番号【300】【301】能古(のこ)渡船場行き、または【303】マリノアシティ福岡行きに乗車、博物館南口で下車。
行先番号【W1】【W2】福岡タワー(TNC放送会館)行きに乗車、福岡タワー(TNC放送会館)で下車。それぞれ乗車時間約20分。

参考:福岡市博物館公式サイト、小学館ウィークリブック『週刊ニッポンの国宝100』 vol.3 (燕子花図屏風/金印)

※本記事は、雑誌『和樂』2015年和樂8・9月号、2016年8・9月号別冊付録、2017年8・9月号を再編集したものです。
※入場料などの情報は2019年8月26日現在のものです。