Craft
2019.08.28

神戸・六甲の人気器屋「フクギドウ」店主がおすすめする“器選び”

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器にこだわった暮らしをしているわけでもありませんが、季節が変わると新しい器が欲しくなります。ここ数年、日本の作り手が手掛けている器に惹かれるようになりました。産地や窯元まで訪ね歩くほどではないものの、器欲が高まると訪ねてしまうのが、神戸は六甲にある「器 暮らしの道具 フクギドウ」です。

7坪ほどの小さな店には、店主が選び抜いた日本各地の作り手が手掛ける器、手仕事の衣服や雑貨など、センスのよい工芸品が並びます。取り扱っている器を使った食のワークショップなどを開き、暮らしへの取り入れ方の提案もしているフクギドウ。仕入れから企画まで手掛けている店主・表ゆかりさんに、はじめての器選びについて、おすすめの作り手や器について、を教えていただきました。

日用のマグや茶碗からはじめたい

メディアにも頻繁に登場する「器 暮らしの道具 フクギドウ」。各地の窯元まで訪ね歩く“器達人”はもちろんですが、器を選ぶこと自体が初めての超初心者の来店も多いと言います。何を買えばいいの?と悩む人には、「まずは毎日使うお茶碗や湯呑、マグカップをすすめます」と、フクギドウ店主・表ゆかりさん。毎日使うことで、器そのものに愛着が湧き、そのよさや使い心地が自分なりにわかってくるそう。「それをもとにして次の器や作り手を選んで欲しい。気になる作り手がいるのならば、毎日使う器からはじめてみてください」と店主・表ゆかりさん。

神戸・六甲に友人と店を開いて10年になるフクギドウ。店主のひとりである、表ゆかりさん。

産地のイメージにこだわりすぎず

フクギドウでは東北から沖縄まで全国各地の作り手を扱っています。さまざまな作り手を見てきた経験上、産地や窯元のイメージにこだわりすぎずに器探しをして欲しいと言います。「益子や信楽など産地が大きいところは、いろんなタイプの作り手がいます。だからご自身が思い込んでいる産地のイメージで、ここは素朴で土っぽいなど、決めつけてしまわないほうがいい」。気になる窯元や産地の陶器市を訪ねるのもいいけれど、「工芸の器を扱う店は増えてきているので、まずはお店で気になることをたずねてみては」とアドバイス。

阪急六甲から徒歩2分。小さな店だが、目利き店主のセンスに惹かれて遠方から器好きが訪れる。近くにはフクギドウ201号室というイベントスペースも。

秋から冬にかけて器の品揃えが充実

秋から冬にかけては器選びにはいい季節。家にいる時間が増えるためか、煮込みなどの料理欲が湧くためか、この時期は誰しもが食や暮らしへ関心が高まりやすいとか。だから品揃えはもちろん、力をいれた個展やイベントを実施するなど、店側もより一層の充実をはかると言います。「フクギドウでは、秋から春にかけて器の個展が続きます。他のお店でも同じような動きをしてらっしゃいますね。また個展やイベントでは作り手が在廊する日もありますから、どんな風に作っているのかを気軽に聞いていただけます。作り手を身近に感じて、興味が深まることで、さらに器選びが楽しいものになりますよ」

秋から冬にかけては個展やイベントなどが目白押し。情報は店舗ウエブやSNSなどでチェック!

フキギドウ店主のおすすめ1.マグや湯呑

数多くの作り手とお付き合いするフクギドウ。店主がおすすめの作り手や器をいくつか選んでいただきました。

コーヒー、紅茶、ハーブティーと飲むものや気分にあわせて変えたいマグカップ。熊本の小代焼ふもと窯・井上尚之さんのマグカップは、持ちやすさ、たっぷりと入る量感がちょうどいいそう。「井上さん自身がコーヒーをとても好きなので、コーヒー好きの気持ちをわかったマグが多い。リピート買いするひとが多くて、誰にとっても使いやすいことがわかります」

スリップウエアの器も人気な井上尚之さんのマグカップ/(店主私物)写真提供/フクギドウ

手なじみや口あたりなど、使うたびによさを実感すると言う、生畑皿山窯・前野直史さんの土瓶や湯呑。「前野さんは、お茶の時間を大事にする作り手。たっぷり茶を淹れられる土瓶や大小サイズがいろいろとある湯呑など、お茶好きならでは気の利いた器が揃っています」

前野直史さんの土瓶、湯呑/(店主私物)写真提供/フクギドウ

フクギドウ店主のおすすめ2 茶碗やプレート

沖縄のやちむんに力を入れているフクギドウ。なかでも“マカイ”と呼ぶ、五寸(約15㎝)サイズの小どんぶりは、定番人気の器です。ちなみにマカイとは、沖縄で茶碗を指す言葉。ごはんだけでなく煮物や汁物を盛るのにもいい。「読谷山焼北窯・松田米司さんのマカイは柔和な雰囲気で柄や色が多くて、選ぶ楽しみがあります。また松田さんのお弟子さん、なかどまり工房・登川均さんが手掛ける素朴で力強いマカイも普段遣いしやすいです」

松田米司さんの五寸マカイ/(店主私物)写真提供/フクギドウ

登川均さんの五寸マカイ/(店主私物)写真提供/フクギドウ

料理を引き立ててくれる皿は、タイプ違いのふたりの作り手を。美しい釉薬使いとプロダクトのようなシンプルさが特徴、益子に窯を持つ寺村光輔さん。広島の福山にて、練り上げ技法でアートのような皿を手掛ける掛谷康樹さん。「寺村さんの皿は、お料理を盛るとものすごく映えます。カタチもいろいろあるのでシリーズで揃えるひとも多い。掛谷さんの皿は、何を盛ろうが器の魅力で助けてくれる(笑)。食卓を盛り上げる器です」。

寺村光輔さんの器(右上の八寸皿、右下のオクトゴナル/店主私物)、掛谷康樹さんの器(左上の八寸皿、左下のオーバル皿/店主私物)写真提供/フクギドウ

皿のサイズに迷っているひとには、七寸(約21㎝)か八寸(約24㎝)サイズをおすすめすると言います。カレーやパスタからワンプレートディナーまで、一枚でカバーできる大きさなのでライフスタイルに関係なく使い勝手がいいそう。

フクギドウ店主のおすすめ3 手吹きガラス

焼き物にはない魅力を放つガラスの器や雑貨。石川硝子工藝舎の石川昌浩さんのコップと安土草多さんのペンダントランプは、フクギドウでも新作を待ちわびるファンが多いそう。

「手吹きガラスの作り手、石川さんが作るコップは口あたりがとてもいい。またやや黄味がかった“はちみつ色”のグラスは、何をいれてもおいしそうに見える。氷をいれた時の音の響きもいい」と表さん。

岡山県は倉敷で手吹きガラスを作る石川さん。ワイングラスはフルーツやアイスクリームを入れても。

写真提供/フクギドウ

口あたりのいい石川昌浩さんガラスコップ/左2,000円、右1800円(ともに税別)写真提供/フクギドウ

小ぶりでかわいい安土草多さんのペンダントライトは「吊ってもいいし、自立するので置いてもいい」と飾る場所を選ばないのも魅力。「手吹きガラスならではの文様が空間に揺らぐ美しさ。ちょっと贅沢な気分に」と表さん。秋の夜長を美しく彩ってくれるガラスのライトです。

飛騨高山の吹きガラス工房にて、さまざまなデザインのライトや器を手掛けている安土草多さん。ペンダントランプ/13,000円(税別)~写真提供/フクギドウ

お気に入りの器があれば、日々の暮らしがちょっと楽しくなるもの。新たな季節に、器活をはじめてみませんか?

店舗情報

器 暮らしの道具 フクギドウ
住所: 神戸市灘区八幡町3-6-17 六甲ヴィラ1F
電話:078-767-0015
営業時間:10:00から17 :00
定休日:日曜・祝日(企画展中は無休)
http://www.fukugi-do.com/

フクギドウ展示会情報

8月23日(木)~9月7日(土)器/沖縄やちむん展
読谷山焼北窯の松田米司さんの器をはじめ沖縄のやちむんが揃う。
10月予定 器/小代焼ふもと窯・井上尚之
11月予定 漆器/木漆工芸家 松崎修
12月予定 器/練り上げ・掛谷康樹
*詳細はフクギドウまでお問合せください

書いた人

和樂江戸部部長(部員数ゼロ?)。江戸な老舗と道具で現代とつなぐ「江戸な日用品」(平凡社)を出版したことがきっかけとなり、老舗や職人、東京の手仕事や道具や菓子などを追求中。相撲、寄席、和菓子、酒場がご贔屓。茶道初心者。著書の台湾版が出たため台湾に留学をしたものの、中国語で江戸愛を語るにはまだ遠い。