連載「日本画家・木村了子のイケメン考察」これまでの記事はこちら。
友人同士も大歓迎のラブホテル
大阪・京橋で絶賛稼働中の「ホテル富貴」。入口はTHE 昭和のラブホテル! 期待が膨らみます。外観は1977年の開業当初から変わりないそうです。

出張に、ラブホテル泊? と思われるかもしれません。しかし京橋はアートフェア会場である「大阪中央公会堂」から地下鉄ですぐ! そして京橋駅は複数沿線が通っており、移動にも超便利な立地なのです。
京橋駅から約5分、駅ビル、飲食街やコンビニからも近く、入室してからは出入り自由。そしてアミューズメント感あふれるお部屋にはクイーンサイズのベッド、ジャグジー付きのお風呂まで完備! もちろんパートナーとの濃密な時間を過ごすのも良きですが、友人同士や同性カップルも大歓迎とのこと。異空間の情緒が漂うお部屋で過ごす特別な夜は、日常や仕事で疲れた心と体をきっと癒してくれるはず。
ひとつひとつの部屋で内装が違う「ホテル富貴」
まずはコテコテの中華ざんまい!のお部屋。

縁起の良さそうな赤と緑を基調に、天女のレリーフもゴージャスな内装ですが、意外なほど落ち着きます。今では手に入らなそうな凝った布クロスやタイルも開業当時のまま、大切にお手入れして使われているそうです。
天井にほのぼのした春画が? 一番人気の部屋「江戸」
「江戸」という和風のお部屋、こちらは一番人気だそうです。

御簾越しのベッドも趣があり、江戸城大奥の姫君になったような気分になれますね。

ベッドに横たわると、天井のなんともほのぼのとした春画に癒されます。

そして枕元には、雅な杜若図の壁画をバックに、ティッシュやポップなコンドームが……

だってラブホテルですもの(笑)。
異国や古い時代への憧憬を求めた、ラブホテルの奥深さ
ところで、私の最新作《私のオダリスク・雅》は、和空間での「オダリスク」です。「オダリスク」(Odalisque)とは、オスマン帝国の後宮、いわゆる「ハーレム」で君主に奉仕する女奴隷のこと。18〜19世紀ヨーロッパでのオリエンタリズムの流行と共に、彼女たちは画家の妄想を大いにかき立て、多くの名作が生まれました。

御簾の奥、誰が袖屏風の前にーーまるでこのお部屋にオダリスク君がいるかの如く、一糸まとわぬ姿で優雅に横たわる男性を描いています。
私は2007年より男女反転させた「オダリスク」シリーズを数点制作しており、その部屋のモデルに今は残念ながらクローズしてしまった昭和のラブホテル・川崎迎賓館からインスパイアされたものも描いていたりします。
かつて西洋の画家たちが異国の後宮に夢を馳せたように、日本のラブホテルもまた、異国や古い時代への憧憬、秘めた欲望や日常では得られない特別な体験への期待が込められた異空間に、幻想のハーレムを求めていたのかもしれません。
そして「昭和」というファンタジーにも。館内の設備は確かに時代を感じさせますが、清掃も行き届き、大切にされている雰囲気がひしひしと伝わってきました。
大阪の京橋の裏路地にひっそりと建つ、時が止まったかのような貴重なラブホテルにて、まったりと静かに過ごすもよし、お相手を「オダリスク」に見立てるもよし――欲望や幻想が許容される密室で、素敵なひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

次回は、「オダリスク」について考察してみたいと思います。
欲望の赴くままに……
ホテル富貴
https://www.hotelfuki.jp/access.html
大阪市都島区東野田町3-7-11 / Higashinoda-machi 3-7-11,Miyakojima-ku,Osaka
電話番号 06-6353-4135 / TEL 06-6353-4135
京阪本線・JR環状線・東西線「京橋」駅より徒歩5分
木村了子 インフォメーション
【展覧会】
「NUDE礼賛 おとこのからだⅡ」

木村了子キュレーション
神保町文房堂ギャラリー(主催:TOKYO DUB AGENT)
2025年10月16日〜27日

