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2025.04.16

武田信玄、なぜここに!?「関ヶ原ウォーランド」がじわじわ泣ける珍名所だった

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あなたは「関ヶ原ウォーランド」をご存知だろうか? 珍スポットファンの間では絶大な人気を誇るテーマパークだ。

関ヶ原の戦いをコンクリート人形で再現! 敵に追いつめられる戦国武将の眼力がすごかったり、すでに死んでいたはずの武田信玄が激怒していたりとカオスな雰囲気がファンに大人気。

しかし、「関ヶ原ウォーランド」はただの珍スポットではない。設立者はある人の遺言に突き動かされ、熱い思いでこの場所を作ったという。早速、現地に行ってみた。

「数多の命が失われた地に弔いを」遺言がきっかけ

関ヶ原ウォーランドファンの間で有名なのは、入場するとすぐ出迎えてくれる武田信玄だ。「信玄は、関ヶ原の戦いには参戦してないぞ」とツッコミを入れたい読者もいるかもしれないが、このキャプションを見てほしい。

ノーモア関ヶ原合戦じゃ!

武田信玄の亡霊がでてきて戦を止めようとする、という演出だ。「関ヶ原ウォーランド」は、武将たちの勇ましい姿を見せる場所ではない。もう争いは止めようと、平和を願うコンセプトを持っている。

「ここは日本で一番有名な合戦地、関ヶ原。東西の思いがぶつかり合い、数多の命が失われた地。それなのに弔いのための寺もなければ、自国の雄たちの動向を残し示す資料館さえない。どちらもつくりなさい、必ずだ」このような父の遺言を受け、「関ヶ原ウォーランド」は創業されたという。

斬った首を運ぶ、足軽の目が……

「関ヶ原ウォーランド」見どころの一つは、首実検をする徳川家康だ。首実検とは、討ち取った敵の首を、大将に見せ検分すること。目の前に置かれた首を、家康が冷静に見極めている。

しかし、“平和を願う場所”という視点で関ヶ原ウォーランドを見渡すと、コンクリート人形からさまざまなメッセージが読み取れる。たとえばこれ!

徳川家康のもとへ、斬った首を運ぶ足軽たち。


顔をよく見ると、とても虚無感がただよう。目が死んでいるとは、まさにこの人形のこと!


首実検をする家康の脇に立つ本多忠勝も、そっぽを向いている。「関ヶ原ウォーランド」の制作担当・コンクリート人形作家の浅野祥雲が、戦争の虚しさを表現したのかもしれない。

「関ヶ原ウォーランド」の薬師如来は「死ぬな、生きろ」と訴える

ほかにも、反戦のメッセージを感じ取れる作品を見つけた。

血肉の争いをしているコンクリート人形群のなかに突如現れる薬師如来。まるで、出世争いに疲れた会社員の中年男性……のような顔立ちが味わい深い。

この薬師如来の説明文のなかに、とてもクセが強く心に響くフレーズがある。

(前略)薬師如来のご利益は「現世利益」として生きている間に受けられるとされています。
助けられる時は「今」であり、「未来」ではない(後略)

関ヶ原ウォーランドには、裏切った小早川に攻め込まれ、切腹に追いやられる大谷吉継(おおたによしつぐ)のコンクリート人形もある。

石田三成の親友だといわれ、負け戦だと思いながらも友のために西軍として出陣し、潔く切腹を決めた武将として有名な大谷。しかし、死んでしまっては現世で利益が受けられない。戦死などせず、生きて活躍すべきだという薬師如来のメッセージが表れているような気がする。

レストランで開催される牛肉の“関ヶ原の戦い”が美味しすぎる

ところで、「関ヶ原ウォーランド」の経営母体はレストランであることをご存じだろうか? 「Sekigahara 花伊吹(はないぶき)」という店名で運営する、牛肉メニューを中心としたレストランだ。

こちらの「関ヶ原合戦すき焼き」が、おすすめ。地元の飛騨牛と近江牛の食べ比べができる。しかも飛騨牛のほうの割り下は、牛骨スープで塩気がある珍しいレシピ。これがまた、まるでラーメンのスープのようにコクがあっておいしい!

近江牛は、おそらく戦国時代にも飼育されていた歴史あるブランドということで、選んだという。牛肉のにぎり寿司などサイドメニューもついて大満足!

また、店員さんが永遠にローストビーフを重ねてくれる肉丼も。びっくりするほどお得な値段、2200円!
毎日限定10食だそう。「関ヶ原ウォーランド」は当日何度も入退場ができるので、早めにレストランに入店するのもおすすめだ。


やわらかくてジューシーなお肉! こちらもおすすめだ。
ちなみにレストランで食事をすると、「関ヶ原ウォーランド」への入場も無料となる。ぜひセットでお楽しみいただきたい。

総勢200体……それぞれの武将の表情が泣ける

筆者の心に刺さったコンクリート人形のひとつがこれ。

敵に刺され、動揺している戦国武将。今まで積み上げてきたキャリアも人生も、すべて真っ白になってしまう! たった数時間の戦いで権力構造に激変が走った関ヶ原の戦いを象徴するような表情だ。ああ、諸行無常。

珍スポットファンに人気の場所ではあるが、よく見ると「ノーモア関ヶ原合戦」の精神が、200体あるコンクリート人形それぞれに宿っている「関ヶ原ウォーランド」。ぜひ現地を訪れてみてほしい。

関ヶ原ウォーランド 基本情報

アクセス
岐阜県不破郡関ケ原町関ケ原1701−6
名神高速道路 関ケ原I.C.より10分。高架下の看板を曲がって300m

https://sekigahara-gourmetgarden.com/warland/

書いた人

きゅうとうりゅう・さどう。信長や秀吉が戦場で茶会をした歴史を再現!現代の戦場、オフィス給湯室で抹茶をたてる団体、2010年発足。道後温泉ストリップ劇場、ロンドンの弁護士事務所、廃線になる駅前で茶会をしたことも。サラリーマン視点で日本文化を再構築。現在は雅楽、狂言、詩吟などの公演も行っている。ぜひ遊びにきてください!