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4,5月号2026.02.28発売

美の都・京都で出合う うるわし、工藝

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Art

2026.04.15

究極の職人技にうっとり!【京都の美術館で「工藝の美」に酔う】後編

職人の町でもある京都は、そこかしこに工藝が息づいています。【京都の美術館で「工藝の美」に酔う】後編では、いつ行っても優れた工藝を鑑賞することができる5つの美術館をご紹介します。

【京都の美術館で「工藝の美」に酔う】前編は、こちら

京都市京セラ美術館|京都の近代工芸を季節ごとに紹介、岡崎エリアのおすすめスポット

左/5代清水六兵衞(きよみずろくべえ)の『大礼磁仙果文花瓶(たいれいじせんかもんかびん)』。作者が生み出した独自技法「大礼磁」を体現する一作で、端正なフォルムに配された仙果(吉祥の果実)文様が、上品な趣を添えている。右/楠部彌弌(くすべやいち)の『青華水指(せいかみずさし)』。呉須(ごす)の濃淡で異なる竹の表情を巧みに描写。日本文化に根ざした竹への思いが感じられる作品。

京都で工藝を楽しむのに“穴場”ともいえるのが、京都市京セラ美術館のコレクションルームかもしれません。ここでは、京都の近代工芸を紹介。主に明治から昭和の陶芸、漆工(しっこう)、染織といった作品を通して、京都で育まれた美意識が、近代へとどのように受け継がれてきたのかを辿ることができます。清水六兵衞、富本憲吉(とみもとけんきち)、八木一夫(やぎかずお)……京都の工藝の層の厚さと広がりを、足を運ぶたびにあらためて思い知らされます。

京都の近代染織のパイオニアとして知られる山鹿清華(やまがせいか)の手織錦屛風(ておりにしきびょうぶ)『立花(りっか)』。絵筆ではなく、糸で立花をダイナミックに表現したもの。2026年秋に開催される山鹿清華に展示。

工藝の展示情報

国内最古の公立美術館建築内にあるコレクションルームでは、約4400点を誇る収蔵品の中から、季節感を意識したセレクトで、工藝のほか、多分野の作品を紹介(『大礼磁仙果文花瓶』と『青華水指』の展示は未定です)。

コレクションルーム(撮影:来田猛)

●京都市京セラ美術館 DATA
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
電話:075-771-4334
公式サイト:https://kyotocity-kyocera.museum/

河井寛次郎記念館|用の美を生きた陶工・河井寬次郎の生活と造形の原点、ここに在り

左/赤・緑・黒の釉薬を大胆に飛ばした『三色打薬扁壺(さんしきうちぐすりへんこ)』。晩年の寛次郎(かんじろう)を象徴する技法で、太筆に釉薬を含ませ、叩きつけるようにして施している。右/寛次郎は、昭和25(1950)年ごろから真鍮(しんちゅう)製のキセルのデザインを手がけた。テレビのインタビューで「これは民族の伝統的なものですよ。まあ、こんなやつはありませんけどね」と、楽しげに語っていたという。

大正から昭和にかけて活躍した陶芸家・河井寛次郎(かわいかんじろう)が、晩年まで暮らし、制作を続けた住まいと工房を公開する記念館です。
柳宗悦(やなぎむねよし)による民藝運動の中心的存在として、寛次郎は「用の美」を理念に掲げ、鑑賞のための美ではなく、日々の生活で使われるうつわにこそ美の本質がある、と考えました。また陶芸にとどまらず、彫刻や言葉、建築へと表現を拡張。「生きること」そのものを創作ととらえていたのです。
来訪者の多くが口にするのは、「時間を忘れて滞在できる」「心が定まる場所」という実感です。記念館では、迫力ある登窯(のぼりがま)や、轆轤(ろくろ)を回していた仕事場を巡りながら、寛次郎が追い求めた生命感あふれる工藝の美に触れることができます。

左/『流描壺(ながしがきつぼ)』は、イギリスに伝わるスリップウェアの技法を解釈し直した作品。右/館内の窓辺には、さりげなく花が飾られている。

左/居間は吹き抜けの造りで、2階から囲炉裏(いろり)を見下ろすことができる。右/看板猫のえきちゃん。くつろいでくれニャン!

工藝の展示情報

テーマを設けた展覧会ではなく、年に4回の展示替えで、寬次郎の世界を紹介。訪れるたびに新たな作品や展示に出合えるのが魅力。

●河井寬次郎記念館 DATA
住所:京都府京都市東山区五条坂鐘鋳町569
電話:075-561-3585
公式サイト:http://www.kanjiro.jp/

何必館・京都現代美術館|祇園散策時に立ち寄りたい! 魯山人コレクションと上質な現代アート

梶川コレクションの代表作はコレ! 魯山人(ろさんじん)の『つばき鉢』は昭和13(1938)年作。もろくて壊れやすい樂焼による直径40㎝もの大鉢は、魯山人の傑作として名高い。

祇園商店街に面したエントランスのドアが開くと静寂が。この美術館は、22歳のときに村上華岳(むらかみかがく)の一枚の絵と出合い、美の道へ進んだ創設者で館長の梶川芳友(かじかわよしとも)さんが、理想の作品鑑賞の場としてつくりあげたもの。自ら設計し、7年の歳月をかけました。
コレクションには村上華岳、北大路魯山人(きたおおじろさんじん)、山口薫(やまぐちかおる)らの名品が。魯山人作品室は常設展示で、花を入れて展示されている作品もあります。料理を盛るための、花を活けるための…と制作した魯山人のやきものが、あるべき姿で鑑賞できるのです。
現代アートの企画展は年に2回ほど。5月10日までは、梶川さんが四半世紀にわたって活動を見つめてきた写真家、サラ・ムーンの個展が開催されています。

陶芸、漆芸(しつげい)、執筆活動に料亭の経営まで多角的に活動した魯山人。椿が入れられたのは、昭和33(1958)年の作である『備前旅枕花入』。

工藝の展示情報

地階の北大路魯山人作品室は、企画展とともに常時観覧可能。何必館のシンボル的存在であるモミジが植えられた「光庭」は最上階の5階に。

●何必館(かひつかん)・京都現代美術館 DATA
住所:京都府京都市東山区祇園町北側271
電話:075-525-1311
公式サイト:http://www.kahitsukan.or.jp/

京都伝統産業ミュージアム|京都の工藝すべてが集結! 好奇心を満たしたあとはお買い物も

ミュージアムには、国内最大規模の壁面展示と、職人による実演が毎日行われる制作活動の紹介エリアが。写真は毛筆で書かれた最高峰の小倉百人一首である佳鳳(かほう)かるた。

京都の工藝――それだけで上質な特別感が漂います。この町の歴史は、茶道や能といった日本独自の文化を育み、それらに用いるさまざまな道具や調度、衣装などを高度な技術でつくりあげる伝統産業を継承してきました。
平安神宮や京都国立近代美術館にほど近い、京都市勧業館みやこめっせ内には京都伝統産業ミュージアムが。京都の伝統産業74品目を展示。制作の工程や、素材・道具なども紹介されています。
地階とはいえ外光も入るこのミュージアムでは、併設されたショップも楽しみのひとつ。旅の記念として、伝統工芸から何かを連れて帰りたくなるかもしれません。

左/京扇子の中骨を用いた、ルームフレグランスかざプチ各6,600円。薄く加工された竹に施された透かし彫りが見事。右/全国で生産地が90にものぼるという土人形のなかで、最も古い歴史をもつ伏見(ふしみ)人形。午年の縁起物として、また端午の節句飾りにも。飾馬(中)6,050円。いずれもミュージアムショップで。

工藝の展示情報

常時、京都の伝統工芸が鑑賞できるミュージアム。多種多様な品々に驚かされる。企画展示では、現代の新たな工芸品も展示。

●京都伝統産業ミュージアム DATA
住所:京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 京都市勧業館みやこめっせB1
電話:075-762-2670
公式サイト:https://kmtc.jp/

千總ギャラリー|室町時代創業の老舗コレクションに見る手描き友禅や染織、刺繡の粋

2026年3月10日まで開催されていた「モチーフの方程式」展より。左/江戸後期の小袖(こそで たもと部分)。吉祥文様の紗綾形(さやがた)に植物文を散らした綸子(りんず)地に、可憐な梅花の刺繡が見事。松竹梅は伝統工芸によく使われるモチーフ。右/「モチーフの方程式」展では、松竹梅や雪月花などを意匠にしたきものや帯、それらを表現した絵画を展示。

室町時代の弘治(こうじ)元(1555)年、法衣(ほうい)装束商として創業した「千總(ちそう)」。明治期には友禅染(ゆうぜんぞめ)に商いの主軸を移し、下絵を日本画家に依頼してデザインを一新するなど、京友禅の新時代を築いて現在に至ります。
いっぽうで、パトロンとして京都画壇を支えてきた一面も。この千總ギャラリーは、貴重な古い時代の染織の品から日本美術まで、多彩な所蔵品を公開するため、平成元(1989)年に開設。令和4(2022)年には現代作家の作品を扱う展示スペースを新たに加え、所蔵品と現代アートによる同一コンセプトの企画展などを開催しています。
きものをはじめとする染織工芸や近世・近代の絵画、そして現代アート。ゆったりと時間が流れる、気持ちのいい空間です。

「モチーフの方程式」展より。左/鶯(うぐいす)が宿る梅という意味の「鶯宿梅(おうしゅくばい)」を図案化した、型友禅の裂地(きれじ)。手描き友禅と型友禅の表現の違いも見て取れる。右/鶴、海、桃のモチーフを用いた友禅染の丸帯。朝鮮の伝統的な10種の長寿モチーフからのこの組み合わせは、「海鶴蟠桃(かいかくばんとう)」と呼ばれるもの。

工藝の展示情報

三条烏丸(さんじょうからすま)の千總本店の2階にギャラリーが。下の写真は所蔵品を展示するギャラリー1、ほかに現代アートを展示するギャラリー2も(日本画のみの展示の場合あり)。

●千總ギャラリー DATA
住所:京都府京都市中京区三条通烏丸西入ル御倉町80 千總本店2F
電話:075-253-1555
公式サイト:https://www.chiso.co.jp/gallery/

※本記事は雑誌『和樂(2026年4・5月号)』の転載です。※各美術館、展覧会の詳細は公式サイトでご確認ください。
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和樂web編集部


撮影/篠原宏明、伊藤 信、大道雪代 構成/小竹智子、植田伊津子、後藤淳美(和樂)
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※『和樂』2026年4・5月号 美術展カレンダーに誤りがありました。P.224で紹介しました、福岡県・久留米市美術館で開催中の「美の新地平ー石橋財団アーティゾン美術館のいま」の入館料は、正しくは一般1,500円となります。お詫びして訂正いたします。
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