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Craftsmanship

2026.04.28

「GORA KADAN FUJI」のギャラリーショップにて 『富士をいろどる陶芸家たち展 吉田直嗣 渡辺愛子 内田鋼一』が開催中

箱根「強羅花壇」の精神を引き継ぎ、昨年7月に開業した「GORA KADAN FUJI」。そのギャラリーショップにて開催されているのが、3人の陶芸家による展覧会『富士をいろどる陶芸家たち展 吉田直嗣 渡辺愛子 内田鋼一』です。そこには和の文化を高めていきたいという真摯な思いが込められていました。開催の経緯から陶芸家の個性まで、たっぷりとお伝えします。

現代アーティストの作品が並ぶ、富士山麓の名旅館


「GORA KADAN FUJI」は、由緒ある箱根の名旅館「強羅花壇」による国内2軒目の施設です。歴史と品格を受け継ぎながら、日本文化をより広く深く伝えていく舞台でありたいという理念を掲げています。そのため館内には、価値ある古美術に加えて、現代に活躍するアーティストたちの作品も並んでいるのが印象的。さらにそれらの多くは「GORA KADAN FUJI」のために制作されたオリジナル作品なのだそう。

特にこだわりを感じられるのが「床の間」です。日本の伝統建築に欠かせないものであり、「生け花」「掛軸」「置物」で客人をもてなす究極のしつらえの場でもあります。そこで「GORA KADAN FUJI」が、縁のある作家3人に「床の間」を飾る〝生花の花器〟の制作をオファー。その経緯を経て、今回の展覧会が実現したのです。

日本文化を世界へ発信するギャラリー兼ラボラトリー

そんな貴重な作品を愛でることができるのは、エントランスフロアにあるギャラリーショップ。決して広くはない空間だからこそ、濃密な時間を過ごすことができます。興味深いのは、ギャラリーでありながら「日本文化を世界に発信していくラボラトリー」という機能も果たしているということ。なぜギャラリーが「ラボラトリー(研究所)」なのか。「GORA KADAN FUJI」開業時にアドバイザーを務めたアートコンサルタント・片山有佳子さんは、こう話してくれました。

「当初からアート性のある焼き物を展示し、日本文化を愛する人々に響くギャラリーにしたいという思いはありました。ならば宿泊施設であり、国内はもちろん世界中からゲストが訪れる場だからこそ、日本文化の何が人の心をつかむのか、人はどんな物を手元に置いておきたいと思うのか、それらを研究、検証していく場にできるのではないか。そんなふうに考えたのです」

現代作家3人による、美しき焼きものと出合う

そのうえで開催されているのが、今回の『富士をいろどる陶芸家たち展 吉田直嗣 渡辺愛子 内田鋼一』。作家一人ひとりの個性について、片山さんはこう語ります。

■吉田直嗣さん

「吉田直嗣さんは海外でも活躍されていますが、富士山麓に工房を構える生粋のローカルアーティストです。私は『GORA KADAN FUJI』を訪れるたび、『ああ、空気が美味しい!』と笑顔になるのですが、吉田さんの作品はその澄んだ空気感をはらんでいるように感じます。展覧会のために作陶してくださったオブジェは雲のようであり、雪のようでもあり…見ていて飽きることがありません。今回は大人気のカップ&ソーサーも販売しますよ」

吉田直嗣「オブジェ」
1976年静岡県沼津市生まれ。
東京造形大学卒業後、陶芸家黒田泰蔵に師事。’03 年富士山麓に築窯、現在では海外にも活躍の場を広げており、潔い黒と白の器が中心で、日常づかいや茶道具などデザインが人気を博している。

■渡辺愛子さん

「女性が生まれながらに備えているであろう〝強さ〟を表現しているのが、渡辺愛子さんです。古代から伝わる『穴窯』で一昼夜、火と対峙して焼き上げる作品は、大地の炎が景色として映り込んでいる様が本当に美しい。ダイナミックでありながらどこかチャーミングな作風で、名だたる寿司店、日本料理店から指名されているのもうなずけます」

渡辺愛子「Mountain」
1971年大阪府堺市生まれ。
嵯峨美術短大絵画科卒業後、信楽焼に惹かれて焼きものを始める。’01 年三重県伊賀市に穴窯を構え、壺から茶器、造形作品などすべて薪で焼く。力強さと繊細さの共存するものを目指している。「アリアナミュージアム(スイス・ジュネーヴ)」収蔵。

■内田鋼一さん

「アジア、アフリカ、ヨーロッパまで20代から世界を巡り、言葉が通じなくても現地のアーティストと共に作陶してきた内田鋼一さん。大らかで肝が据わっていて、それでいて繊細な、彼の人間味がそのまま作品となっているのが見ていて楽しいのです。花器だけでなく、抹茶椀も制作していただいたので、ぜひ手にとってみてください」

内田鋼一「金彩茶盌」
1969 年愛知県名古屋市生まれ。
愛知県立瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科修了後、東南アジアや欧米、アフリカ、南米など世界各国の窯場やアトリエに住み込み、現地で作業をしながら技術を身につけたあと、1992 年、三重県四日市市にアトリエと窯場を構え独立。国内外の美術館やギャラリーにて個展を中心に活動。

ふと、和の誇りが湧き上がる時間に

日本の手仕事を愛し、国内外へその魅力を発信していく場所だからこそ、片山さんがセレクトに関わった、職人による名品も並んでいます。扱っているのは、無形文化財の鎚起銅器「玉川堂」、酒と酒椀を扱う「天酒堂」、寄木細工の「太田木工」、足袋と靴下製造の老舗「玉井商店」、京都で和菓子創作を行う「御菓子丸」など。

世界に誇る陶芸家3人の作品を通して、誇り高き日本文化を愛でることのできる今回の展覧会。感性を刺激するのにうってつけの時間になりそうです。

展覧会情報

展覧会名:「富士をいろどる陶芸家たち展 吉田直嗣 渡辺愛子 内田鋼一」
会期:〜6月30日(火)
会場:GORA KADAN FUJI ギャラリーショップ(静岡県駿東郡小山町須走110番地1)
時間:8:00~20:00
※宿泊客以外でも観覧・購入可能

タイトル画像
渡辺愛子「伊賀徳利と伊賀ぐい呑」(左)、内田鋼一「硝子釉三彩線刻文茶盌」(右上)、吉田直嗣「カップアンドソーサー」(右下)

構成・文/本庄真穂

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和樂web編集部

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※『和樂』2026年4・5月号 美術展カレンダーに誤りがありました。P.224で紹介しました、福岡県・久留米市美術館で開催中の「美の新地平ー石橋財団アーティゾン美術館のいま」の入館料は、正しくは一般1,500円となります。お詫びして訂正いたします。
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