戦神として名高い毘沙門天が、モッフモフの大虎にもたれてくつろぐイケメン仏画に
以前「酒呑童子」の記事でご紹介した、国上寺「イケメン偉人空想絵巻」(2019年)を手掛けてから早7年。 2020年よりコロナ禍で延期されていた新潟県燕市の国上寺にて、ご本尊である秘仏「上品上生(じょうぼんじょうしょう)阿弥陀如来像」のご開帳がついに18年ぶりに開催されます。それに伴い、「イケメン絵巻・第二弾」を発表いたします。

第一弾の「イケメン偉人空想絵巻」は、本堂の外壁をぐるりと彩ったもの。北側に「露天風呂図」という男性登場人物のお風呂シーンを描き、当時大炎上したのですが(汗)、今回は「方丈講堂」という歴史ある建物の、室内の襖・障壁画を手掛けました。方丈講堂は元文2年(1737年)建立。ご本尊・千手観世音菩薩像は、戦国武将・上杉謙信公が深く信仰した霊尊と伝えられています。
さて今回のイケメン絵巻は……まずは「仏画」です! 木村了子渾身の、令和のイケメン仏画が降臨いたします。
千手観音菩薩像の両脇を固める襖に、毘沙門天像と、不動明王像を描きました。千手観音の脇侍としては一般的な組み合わせではありませんが、国上寺は真言宗のお寺であり、かつ謙信公の祈願寺という歴史を紐解けば、私は、この二尊以外は考えられませんでした。

向かって左に「毘沙門天と虎」、右に「不動明王と龍」を配し、本尊を中心にいわゆる「龍虎図」の体裁をとっています。地を踏みしめる虎と、天を翔ける龍。この対比を通して、現世と霊性、外界と内面といった異なる次元を往還するような構造を意識しました。その中心で、千手観音の救済が多層的に広がっていくイメージです。
謙信公が信仰し、自らをその化身と称した毘沙門天は、北方の守護神。戦神として名高い仏ですが、ここ国上寺ではモッフモフの大虎にもたれてくつろぎ、虎は愛おしそうにその顔をなめようとしています。戦神の休息のように、現世の争いにも平和と安らぎが訪れますように……。
マッチョな青ボディ、サイド三つ編みヘアにキュン!不動明王
国上寺は修験道のお寺として不動明王とも縁が深い場所です。大日如来の化身であり、一切の災厄を焼き尽くす最強の明王・不動明王。マッチョな青ボディに、キュートなサイド三つ編みヘアというお姿にキュンとします。 御手に持つ「羂索(けんさく)」という投げ縄は、迷える人々を無理やりにでも縛り上げ、救い出す慈悲の象徴だそうです。

毘沙門天と不動明王、現代を生きる私たちの不安を、力強く、そして美しく包み込む、国上寺守護仏の降臨です。
弁慶と義経が仲良く背中を合わせてストレッチ!?ほのぼの“主従ペア”
不動明王の襖をスッと開けると、世界は一変。モノトーンの「水墨パノラマ」が広がっています。 部屋を埋め尽くすのは、国上寺を取り巻く豊かな自然と、お馴染みのキャラクター上杉謙信、良寛、義経、弁慶、酒呑童子たち。そして「役行者」、「万元上人」といった新キャラも登場し、思い思いに過ごしています。

大河津(おおごおつ)分水を望み、向かって左に上杉謙信公が大きく弓を天に引いています。これは「法弓(ほうきゅう)」と呼ばれる密教の儀礼のひとつで、空を射抜くことで魔を払い、場を清めるためのもの。

右側には、修験道の祖・役行者が酒呑童子に「法螺貝」を吹く手ほどきをしています。朝、国上寺にいるとよく法螺貝の音が聞こえて来て癒されるんですよ。 役行者は前鬼・後鬼という鬼の夫婦を眷属にしていますが、絶世の美鬼・酒呑童子をも従えようと目論んでいるのでしょうか、それとも……?

そして、国上寺のパワースポットである銀杏の木の下におわすのは、義経・弁慶の主従ペア。本堂の絵巻ではあえて描かなかったこの二人の絡み、ついに満を持しての登場です。義経に「カナディアンバックブリーカー」をかます弁慶……ではなく、仲良く「背中合わせストレッチ」をして、弁慶の大きな背中で義経が気持ちよく背筋を伸ばしています。ラストにようやく描けたヨシベンペア! よかったね、弁慶。

中国の伝説的な詩僧、寒山と拾得は“ブロマンスの祖”?インスパイア系イケメン絵巻に挑戦
良寛さんの肩に手を添え、そっと見守っているのは「万元上人」。国上寺の本堂建立に尽力した臨済宗の僧で、良寛さんの住処として有名な「五合庵」の元庵主です。 歴史を超えて出会ったふたりは、中国の伝説的な詩僧「寒山拾得(かんざんじっとく)」になぞらえて描きました。

ところで「寒山拾得」って、水墨画におけるブロマンスの祖ではないかと(個人の感想)……とにかく、ふたりの距離が近い(笑)。

狩野派・日本美術への愛とオマージュを120%詰め込んだ「イケメン絵巻・第二弾」
床の間の瀧は、国上寺の裏手、野積(のづみ)海岸近くにある「野積の滝」をイメージしました。 実はこの全体の構成、伝統的な画題「竹林七賢図」への、私なりの挑戦でもあります。俗世を離れ清談にふけった賢者のように、この部屋の住人たちもまた自由に時をも超え、水墨の世界で超俗的な空気を纏っているのではないかと……。

2020年から描き始めたこれらの作品。襖絵は自宅にて制作していましたが、それらを運び入れ、最初に室内障壁画制作のために国上寺を訪れたのは2021年の12月。雪こそまだでしたが、新潟の底冷えは本当に寒かったのを覚えています。

当時1週間程度の滞在制作でしたが、襖以外は真っ白の空間。ストーブを抱えながらも寒さでなかなか身体が動かず、ある程度描いたところでタイムリミット。コロナ禍による延期を経て、5年ぶりに続投したのが先月2026年3月末。 すっかり5年前のことを忘れ、改めて360度の空間に潰されそうになりながら、つい先日なんとか描き上げました。

私の狩野派・日本美術への愛とオマージュを120%詰め込んだ「イケメン絵巻・第二弾」!ようやく皆様にお披露目できることを嬉しく思います。
ぜひ連休中の旅行に、国上寺へ足を運んでみてください。今の時代を生きる「美しき守護神」たちが、皆様をお待ちしております。
木村了子 お知らせ
2026年 国上寺 ご開帳
開催期間:2026/4/10〜2026/5/11
会場:国上寺(〒959-0136 新潟県燕市国上1407)
拝観・観覧方法:1,500円(記念品付)

ご開帳期間は、
・秘仏・上品上生阿弥陀如来(本堂)
・イケメン絵巻第一弾(本堂)
・イケメン絵巻第二弾(方丈講堂)
・第一弾イケメン御朱印の再販
・秘仏10体の仏像公開
・三千仏掛け軸(3枚)公開
など、同時にご覧いただける絶好の機会になっております。
問い合わせ
国上寺広報担当
TEL:0256-97-3758
MAIL:info@kokujouji.com
https://kokujouji.com/
「日本画家・木村了子のイケメン考察」シリーズ一覧はこちら。

