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2026.07.15

生きた鮎を骨まで焼き切る!一度食べたら忘れられない瓢亭の「鮎の塩焼き」をはじめ、折々の鮎

京都・南禅寺(なんぜんじ)門前の茶店として始まり、江戸時代後期から料亭として今に至る「瓢亭(ひょうてい)」。品格ある店の佇まい、茶の心に通じる料理ともてなしが400年以上、創業家によって保たれているのは世界の料理店でもここだけです。主人兼料理人として調理場に立ち、生涯現役をうたう髙橋英一さんとそれに続く長男の義弘さん。長い歴史の中で、現役親子が料理、しつらいなど店のあらゆることを語る機会はそうはなく、貴重な肉声をお届けする『和樂』の連載、今回は折々の鮎。

南禅寺畔瓢亭親子がつむぐ日本のこころ 折々の鮎

焼き台を占める、串打ちされた鮎。
朝から焼方(やきかた =焼物担当)が顔を真っ赤にしてうちわをあおぎ、つきっきりで鮎を焼きます。

「7月、8月は本店で朝がゆの提供があるので、そこに必ず鮎の塩焼きが入ります。
朝がゆを年間を通してふるまっている別館でも、この時期は別注文で塩焼きがつけられるんですね。
夜のお客様の焼物も鮎ですし、夏の間は鮎焼きに明け暮れます。
鮎は強火で焼かないといけないし、焼き台の前はめちゃくちゃ暑いんですよ。ただでさえ京都の夏は暑いのに」と苦笑いを浮かべる義弘さん。

「鮎の成長を追いながら季節が巡る。料理人にとって情感のわく魚なんです」 義弘さん

「一度食べたら忘れられない」と評判の瓢亭の鮎の塩焼き。
皮目は香ばしいのに、身はしっとりしてふわふわ。骨まで焼き切っているがゆえに、頭から尻尾まで食べ切れる。
おいしさの秘密はどこに?

「料理人にとってはあたりまえすぎて声高に言わないことですが、まずは生きた鮎を焼くことですね。
内臓の苦みが鮎の味わいを占めますが、味が全然違います。
そして生きたまま焼かないと、こんなきれいな姿になりませんし、ひれもピンと立ってきません。
生きている鮎を焼くおいしさを言い出したのは魯山人(ろさんじん)ですが、その通りだなぁと思います。
京都は川魚を食べてきた文化があるので、生きた鮎は入手しやすいし、天然のもの、養殖とどちらも選ぶことができますが、育ち方にはこだわらないようにしています。
というより、鮎はとても繊細なので雨が降ったら、その日はとれなかったりする。
育ちよりは、どんな鮎でも同じように焼けて、楽しみにしているお客様にお出しできることを大事にしています」

【夏】鮎塩焼き

京都近郊から生きて届く鮎を、炭火の強い熱を操りながら焼き上げる瓢亭の逸品。7月から8月まで提供。別館の「朝がゆ」でも別注文可能。器/八角青磁皿

10月、いよいよ子持ち鮎が登場し、焼物や鮎ごはんを提供するまでの“つなぎ”として、8月末・9月頭ごろから数週間だけ献立に上るのが「鮎田楽(あゆでんがく)」。

これは「そろそろ塩焼きにも飽きてきた」常連客の声に応えたもので、鮎の内臓を味噌と炒めて、腹に戻して焼くという手の込んだ一品で、お酒好きの心をとらえて好評だとか。
シーズンが終わっても鮎とのつきあいは続きます。
鮎の内臓を塩漬けにした自家製の調味料「うるか」は、秋から冬に味に深みを出すために使うなど、鮎は瓢亭にとって大切な食材なのでした。

【晩夏】鮎田楽

鮎を背開きにして干し、内臓を取り出して田楽味噌と合わせ炒め、その味噌を身に挟んで焼く。8月末から9月頭までの短い提供。器/近藤悠三(こんどうゆうぞう)作 染付大皿

「なんといっても、鮎は姿形が美しい。昔の日本画家は鮎の絵を上手に描いていましたよね。
それを見ていると、日本人にとって鮎は特別な魚だったんだな、と思うんです。
日に日に成長していく鮎の命をいただくことは、料理する者にも気持ちが入ります。だからこそきれいに焼きたいし、焼けたときは本当にうれしい。
鮎を食べる文化は日本にしかありません。大事に残したいですよね」と言葉を締める義弘さんです。

【春】小鮎揚げ焼き山菜酢添え

小鮎は焼いて、揚げることで身がしっとり仕上がる。義弘さん考案の「揚げ焼き」は、酢漬けにした春の名残の山菜や花山椒と楽しむ5月ならではの一品。器/松長皿

次に、焼き方の工夫。
「鮎は骨ごと食べるのがおいしい」と考える14代主人・英一さんから続いている、細い炭を高く盛り上げる「鮎専用の炭の組み方」から独自の火入れが始まります。

火加減は“遠目の強火”が基本。
その上で、鮎の身にある脂を尾から頭へ、腹から背へと串を返しながらまんべんなく行き渡るようにします。
そろそろ仕上げとなったら、そこから炭を組み変えて、うちわのあおぎ方も変えて、という細かな調整が入ります。

「揚げ物も最後に温度を上げて水分を飛ばしますよね。それと同じ感覚です」と義弘さん。

鮎は強火でじっくりと焼く。14代主人・髙橋英一さんが編み出した特殊な炭の配置により、カリッと丸ごと食べられる塩焼きに。15代主人・義弘さんもこれを踏襲。

身の表面に脂が浮かんだら、骨の中まで焼き切った合図。
瓢亭の魚はすべて炭火で焼かれますが、およそ15分もかけて丁寧に焼くのは鮎だけとのこと!

最後に、鮎の大きさにも“瓢亭好み”がありました。

「一尾が立派すぎて、鮎だけでお腹がふくれるのも嫌ですし、2丁づけで満足していただくのがいいのかな、と思っています。
うちの鮎がお好きな方は、2丁のところを3丁づけにされますしね(笑)」

鮎の命はわずか1年。稚鮎から小鮎、若鮎から子持ち鮎と姿を変えて、短い一生を終えます。
瓢亭では現在、小鮎、若鮎から子持ち鮎を食材として使い、それぞれに適したレシピを考案。

髙橋英一 1939年生まれ。東京、大阪の料亭での修業を経て28歳で瓢亭14代主人を継承。2013年に料理人として初めて京都府指定無形文化財「京料理・会席料理」保持者に認定。2025年、文化功労者に選定。
髙橋義弘 1974年生まれ。金沢の料亭での修業を経て、2015年より瓢亭15代主人を継承。2018年「瓢亭日比谷店」を開業し、京都と東京を行き来しながら料理に励む。

瓢亭本店 DATA

住所:京都府京都市左京区南禅寺草川町35
電話:075-771-4116
趣の異なる4つの館で茶懐石にのっとった懐石料理を提供。
公式サイト:http://hyotei.co.jp/
※日比谷店で季節に応じた料理発送サービスが始まりました。(https://www.umai-mon.com/)。

※本記事は雑誌『和樂(2026年8・9月号)』の転載です。
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和樂web編集部


撮影/原 祥子 構成/藤田 優、古里典子(和樂)
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