のどかな風景の中に存在する夢のエンターテイメント。そう、それは宝塚大劇場!兵庫県宝塚市は、女性だけで構成された宝塚歌劇団の本拠地として知られています。阪急「宝塚」駅を降り立つと、階段にもレビューのイラストが。ファンの高まる気持ちは、さらにヒートアップ!そんな大劇場周辺のお勧めグルメ店を、地元民が紹介します。
創設者のひらめきから始まった歌劇団
宝塚歌劇団は、大正時代から100年以上の歴史を誇ります。阪急電鉄の発展に貢献し、日本発のターミナルデパート阪急百貨店の開業や、東宝グループの創設に尽力した小林一三が、宝塚歌劇団の生みの親です。止む無く閉鎖となった室内プールを改良して、舞台として使用したのが最初と伝えられています。「清く正しく美しく」は、華やかな夢の舞台を支える歌やダンス、演劇といった芸能の基本と共に、礼儀や女性としての品格を忘れないようにと小林一三が贈った言葉です。時代が移り変わっても、この言葉はモットーとして劇団に息づいています。
宝塚の町に存在する宝塚ルール
初めてこの地を訪れた人は、山々に囲まれた景色に驚かされます。のんびりとした郊外の印象と、華やかな舞台とが一致しないよう。でも次第に、宝塚歌劇と溶け込んだ町の雰囲気が、魅力的に映るようです。また当地では当たり前に宝塚スターと遭遇しますが、地元民は声を掛けたりはしません。それは関心がないわけではなく、地元の文化として自然に受け入れているが故の心配りから。もしも、宝塚を来訪してスターに遭遇したとしても、是非宝塚ルールで華麗にスルーしてくださいね。
1.癖になる老舗の味、絶品サンドイッチ
まずご紹介したいのは、宝塚市在住者で知らない人はいないサンドイッチの名店、「ルマン」。50年以上遡った1964年創業当時は、店も少なくサンドイッチ専門店自体が珍しかったそう。ルマンのサンドイッチは、全て手作り。オープンと同時に地元のお客様や観光客で店内が賑わい、シェフ達は、大忙し。テイクアウトもできるので、おもたせにもよく利用されています。なんとタカラジェンヌへの差し入れとしても有名なんですよ!
観劇で訪れる人にぴったりの「ヅカセット」は、バラエティに富んでいてお勧めです。ルマンの顔であるエッグサンドの他にハムサンド、野菜サンド、エビサンドが味わえ、生ハムの載ったサラダとパンナコッタのデザート、紅茶など飲み物が付いてとってもお得!びっしりと卵が入ったエッグサンドは鉄板の美味しさです。
総括店長の西上卓哉さんに、ルマン創業時から販売しているエッグサンドの美味しさについて、お聞きしました。「マヨネーズは、特製の自家製のものを使っています。エッグサンドは、溶いた卵をほぐすようにして焼くのですが、この焼き加減にコツがありますね」。なるほど、シンプルなエッグサンドの美味しさの秘密は、こうしたこだわりがあるからなのですね。他のサンドイッチも野菜のシャキシャキ感や、エビのプリプリ感など、食べた後に素材の美味しさが印象に残ります。「素材の美味しさを大事にするのは、創業時からの変わらない思いです」
もしもお腹に余裕があれば…フルーツサンドもお勧めです。甘すぎないクリームとフルーツのバランスが絶妙で、ファンも多いんですよ。
サンドイッチ ルマン基本情報
花のみちセルカ店
住所:宝塚市栄町1-6花のみちセルカ2番街2F
営業時間:9時~17時(ラストオーダーは16時半)
定休日:水曜日と歌劇休演日
公式ウェブサイト
※阪急「宝塚南口」駅近くに、テイクアウト専門の「宝塚南口本店」があります。
2.歴代スターが愛したこだわりのお好み焼き
関西といえば、やはり粉モン!宝塚でお好み焼きと言えば、「宝塚いろは」と名前があがる人気店があります。タカラジェンヌから高い支持を得ていて、歴代のスターが食べたというお好み焼きが!その名も「元祖餅チーズ」。新潟産のお餅とたっぷりのチーズ、キャベツの甘みが合わさって、絶妙のハーモニーを醸しだしています。
代表の田口敬治さんは、「最初の一口目と、鉄板の上に少し置いた状態で味が変化します。それも楽しんでほしいですね」。確かに柔らかくなったお餅がとろけて、食感が変わってくるのが面白い。食べる分だけコテでカットしてお皿に入れるのが、最後まで美味しく頂けるコツだとか。
「厳しい練習で疲れると、やはり辛いものが欲しくなるんでしょうね。制服姿の音楽学校の生徒の頃から、このお好み焼きを食べてスターの階段を上がっていくのを見てきました」。歴代のスターと同じお好み焼きと思うと、より美味しく感じますね。
寿司職人の家に生まれた田口さんは、すし飯が日常だった為に、ソース味やチーズ味に憧れがあったそうです。その思いがあってか、創作メニューが豊富で、約70種類もメニューがあります。「自分が安心して食べられる物しか出したくないですね」と、食材には強いこだわりがあり、ホワイトボードにこの日に使った食材の産地を明記。近郊の旬の材料を吟味して仕入れているそうです。ソースも自ら開発した合成保存料、合成甘味料無添加のオリジナルソースを使用しています。
最近、このお店に子どもの頃から通ってくれていたお客さんが、めでたく宝塚歌劇団に入団したそうです。「初舞台を見に行きましたが、感慨深かったですね。もう、親のような気持ちですね」観劇の後に、地元愛に溢れる田口さん渾身のお好み焼きをご賞味下さい。
宝塚いろは基本情報
住所:宝塚市川面5-4-2 宝塚山手商店街内
営業時間:12時~14時(ラストオーダー13時半) 17時~21時半(ラストオーダー21時)
定休日:月曜日
公式ウェブサイト
3.親子でつなぐ懐かしくてやさしい味
宝塚観劇のお供や、お土産として長年愛され続けてきたお餅があります。小ぶりの「焼き餅」は、焼き色が付いた素朴なお餅です。一時、販売が中断されていた時期がありましたが、2017年の夏に再オープン。この復活を多くの人が喜びました。パン工房ふぇるへんと併設して営業再開となった焼き餅について、お話を聞きました。
代表取締役の河本茂雄さんは「私が三代目になりますが、菓子職人の修行の後にパン職人の修行も行って、その後パンのお店を近くで開いていました。父が突然に病で倒れてしまったので、止む無く和菓子店は閉店となってしまったんです」。その後、二代目でお父様の河本宏さんの体調が奇跡的に回復し、パン工房と焼き餅のお店を併設してのオープンとなったようです。
焼き餅は、皮のもちっと感と中のこしあんとがマッチしていて、小ぶりなこともあって、1個食べると、ついもう1個とどんどん食べたくなります。2018年に宝塚市商工会議所が主催したワンコインスタンプラリーで2パックセットで販売したところ、約3000セットも売れる大人気に。商品や接客のお客様アンケートの集計でもグランプリを獲得しました。
「この店は昭和9年創業ですが、包み紙のデザインは先代からのものです。通院しながらですが、九死に一生を得て、またこの仕事に戻ってこられて嬉しいです。歌舞伎役者が舞台の上で死ねたら本望って言うでしょ、同じようにここで倒れても本望ですよ」と明るく話す宏さん。
パン工房ふぇるへんでは、よもぎの入った皮にあんを包んだパンが2種類あります。ごまがトッピングされた方にはこしあん、そしてきなこがトッピングされた方には粒あんが入っています。和菓子とパンと両方の修行経験のある茂雄さんならではのこだわりで、生地とあんこは自家製造。たっぷりのあんこが味わえる2品は、それぞれ風味が違うので食べ比べるのもいいですね。
河本本舗・パン工房ふぇるへん基本情報
住所:宝塚市栄町2-1-1ソリオ1・GF
営業時間:9時~19時
定休日:第1・第3水曜日
電話番号:0797-86-4600
4.宝塚歌劇と牛への愛が半端ない社長が作るヨーグルト
「たからづか牛乳」は宝塚、西谷の山口牧場と市内の小林工場で作られたメイドイン宝塚の製品です。安心で安全な牛乳をと地域の主婦団体の思いから誕生しました。先代の社長が亡くなった後を引き継いだのは、元々はパート従業員だった山本陽子さん。高品質のローカル牛乳を地元ファンに届ける為に、多忙な日々を送っています。
良い水とえさを与えられ、モーツァルトを聞きながらゆったりと暮らす牛達の牛乳は、評判を呼び、主婦を中心に高い人気です。コクやカルシウムなど栄養を損なわない低温殺菌牛乳で、脂肪分を均一化しない「ノンホモジナイズ」タイプなので、クリーミーなのが特徴。牛乳の評判もさることながら、ヨーグルトが濃厚で美味しいと人気が集まっています。
私が頂いたのは、ざらめヨーグルト。たっぷりとした容器に入っているので、完食できるかなと一抹の不安を覚えましたが…。そんな心配は無用で、あっという間にたいらげてしまいました。表面をひとさじすくうと、濃厚なクリーム状のヨーグルト。プレーンな味わいです。食べ進めると、シロップ状のざらめが出てくるので、混ぜ合わせるとやさしい甘みに変わります。濃厚なのですが、カスピ海ヨーグルトのようなさらっとした味わいです。
「水曜日と土曜日には黒糖ときび砂糖入りも入荷するんですよ」とスタッフの津田仁美さん。牛に負担をかけないために、大量生産を行わなわず、ネット販売も受け付けていないそうです。
店内の一角は、宝塚ファンの山本社長がレイアウトした宝塚スターの写真が一杯。組やスターごとに分けられたファイルや書籍のコーナーもあり、宝塚歌劇への深い愛を感じます。公演が変わるごとにレイアウトも変えるこだわり。これは、ファンにはたまらないですね!
たからづか牛乳基本情報
住所:宝塚市南口2-12-14
営業時間:9時~19時
定休日:なし
公式ウェブサイト
※阪急「宝塚」駅近くにテイクアウト中心の「ソリオ宝塚店」もあります。