こんな感じのレトロ&ファンシーな手芸品、実家やおばあちゃんの家で見たことありませんか? 和紙のミニタンスや、ちりめん細工の手鏡、ロマンチックすぎる絵柄のパッチワークなどなど。これらの発信元がわかりました。問屋街・浅草橋の「さくらほりきり」です。これは大変だ……と懐かしさに震え、お話を聞いてきました。
ここ東京・浅草橋はハンドメイドの聖地
東京・浅草橋。JR総武本線と都営浅草線が乗り入れるこの街には、ひな人形や五月人形などの日本人形から、輸入ビーズまで、多種多様な卸問屋がズラリ。そう、日本屈指の問屋街なのです。最近では、一般客のために小売りをする店も増え、手芸愛好家が日本中から訪れる聖地になっています。また、和紙や和風雑貨など、お土産として好まれるアイテムが手に入ることから、外国人ツーリストも増加中。
そんな街の一角に、「さくらほりきり」は東京本店を構えています。1階と2階がショップで、地下1階がイベントフロア。手作りの魅力にすっかりハマり、毎日のようにやってくる人もいるんですって。
偶然からはじまった手作りキット販売
魅力的な商品が並ぶ同店で、専務の堀切寛さんにお話を聞きました。
「創業者は、箱を作る職人として仕事に励んでいました。5万個もの箱製作の見積もりを依頼され、試作をしていると、ある日、近所のご婦人が来店。『あら、その小さいタンスかわいいわね。ひとつちょうだい』と言われ、材料一式を差し上げたところ、数日後に『できたわよ!』と、うれしそうにやってきました。内心、『素人の主婦にできるはずない』と思っていたのに見事に裏切られました。これが、さくらほりきりの創業のきっかけです」
創業者は職人としてのプライドを持って物作りをしていましたが、「これからは『作る喜び』を一般の方に提供する会社になろう」と、発想を転換。最初は手芸店に少量を卸すぐらいの小規模でのスタートでしたが、次第に注文が増え、『自社でも売ろう』と、創業2年目に通販会社を作りました。現在、受注・発送を行う販売センターは千葉県市原市にあります。
「今は物も情報も豊富な時代ですが、当時はハンドメイド資材もガイドブックも、それほどありませんでした。手作りといえば、熟練の職人や師匠について習った人しかできないと思われていた時代です。美しい工芸品が自分でも作れると知った人の嬉しそうな顔を見て、気難しい職人も心を動かされたのでしょう」
起業のアイデアやチャンスって、意外なところにあるものですね。
ロングセラー品&ニューアイテム紹介
「さくらほりきり」がすごいのは、雑誌や新聞なども含め広告ほぼなしの、口コミだけで日本全国に広がったこと。九州の僻地で育った私もなじみがありますし、さまざまな地方の出身者に聞いてみても「懐かしい。公民館に飾ってあった」「親が趣味でやっていた」などという反応がありますから。
「創業した40年以上前は、全国に手芸店や手芸教室がありました。手芸の先生のネットワークで、爆発的ヒットをしたアイテムが少なくありません。たとえば、ティッシュケース。1枚ずつシュッと引き出せるタイプのティッシュが普及しはじめたタイミングだったので、タイミングは最高。大当たりして、500万個ぐらい売れましたね」
それから、昭和の時代にはこういうファンシーな置き物が家庭にありました。写真1枚目はデッドストック、2枚目は現行品。
石けんをオーガンジーなどのきれいな布でくるみ、リボンを巻いて、ドライフラワーを飾る置き物「フラワーソープ」です。どうですか、こんな昭和レトロなフラワーソープが現役だなんて奇跡みたいじゃないですか?
「この商品にもストーリーがあります。神戸のお客様から『神戸ではこういうのが流行っているんだよ』と送ってもらったものをヒントに、手作りキットを開発したところ、50万個を売り上げる大ヒット商品に成長。当時、実は会社が経営難だったので、この商品がなかったら倒産していたかもしれません。それぐらいの奇跡的ヒットでした」
商品化にあたり試行錯誤を重ね、発売後も作り方やデザイン、土台となる石けんをどんどん改良。スワン(白鳥)モチーフがブームになったときは、すかさずスワンのソープをリリース。そういえば、レースや羽毛を組み合わせたスワンのソープ、記憶の片隅にあります。それから、和紙を埋め込んだエンゼルフィッシュのキーホルダーも懐かしい。和紙は多様な柄から選べて、和紙だけの販売も行っています。パンダ柄の和紙なんて、ほおずりしたいぐらいのキュートさです。
介護や医療の現場でも手作りは人気
この千代紙の柄も、昔から何ひとつ変わりません。ミニタンスの外に貼る千代紙も、土台の段ボールも、すべて国産品のみを使っています。
「和紙細工や木目込みなど、本来は先生に教わらないとできないものを、説明書を見れば作れるように設計しています。手作りって、やってみてひとつできたら感動してまた作りたい! となるのが楽しいのです。ですが、失敗すると挫折して嫌になっちゃうんです。だから、『誰でもできる』を心がけています」
社内に複数いるデザイナーは「どうやったらわかりやすいか?」を日々考え、パソコン画面や素材とにらめっこする日々です。
社員のアイデアにより、新作が続々と誕生中。和紙のハーバリウムや、薬を朝昼晩に仕分けして入れられる「マルチお薬トレー」など、時代のニーズをキャッチしたアイテムが楽しい。
それから、企業としてすばらしいなと思うのは、徹底したお客様目線を心がけていること。卸売りをせず直販のみのため、数百円からキットが買えること。価格はかなり良心的です。
「現在はネット通販も行いますが、電話やファックス、ハガキといったアナログな方法でも注文を受け付けています。お客様からコメントをいただいたら、社内で情報を共有。お客様相談室には課長職の者がおり、クレームやご意見は課長が直接お聞きし、真摯に対応する体制です。それから、社員が出向き全国の会場で行うワークショップや展示即売会も実施中。お客様と直接お話ができる貴重な機会ととらえています」
「さくらほりきり」で接客を担当しているスタッフに聞いたところ、「老人ホームや介護施設でニーズがある」「親や祖父母のボケ防止によい」などという声が寄せられると教えてくれました。さらに、介護や医療の現場の声で「縫い目がなくチクチクしないバリアフリー対応の袋物」など、お客様からの声を取り入れた新作品が続々と誕生しているそうです。
懐かしいし、優しい人ばかりで、なんだか涙が出そうです。
さくらほりきり本店
東京都台東区柳橋1-25-3
営業時間 10:00~17:30
休み 日・祝日
公式サイト
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