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Craft
2019.12.03

KARAFURUの蒔絵ジュエリー。和柄デザインで、贈り物にもぴったりなアクセサリーができるまで。

この記事を書いた人

自分へのごほうびに、大切なひとへの贈りものに、パールに金でお守りを描いたジュエリーはいかが?
しかもこの柄、24kで描かれているんです。なんて贅沢! 使われているのは日本の伝統工芸、蒔絵(まきえ)という技術です。

えっ、蒔絵をこんなに小さなパールに?

蒔絵といえば、お茶のお稽古できれいだなと眺めていた棗(なつめ)。あれがたしか蒔絵だった…、というくらいの知識しかない私。

蒔絵は平安時代から続く日本の伝統的な装飾技術で、漆で下絵を描いてそこに金紛や銀粉を蒔くことで絵をつけるから「蒔絵」というのだそう。
寺院建築のような大きなものから、漆塗りの食器や茶道具などにも幅広く用いられ、貴族や武士、裕福な町人などに愛されてきた伝統工芸なんですって。

なるほど、よく見ると線に手描ききならではのやわらかさがあること、わかるでしょうか。

職人も「こんなに小さなものに描くのははじめて」

この「MAKIEパール」を手掛けているのは、職人の技術が光るジュエリーを販売しているKARAFURU。蒔絵を担当しているのは、京都で漆器なども手掛けている蒔絵師です。
どうやって作っているかというと…。

なんて細かな手仕事!
漆で下絵を描いて乾かし、もう一度重ねて描いて高さを出しているのだそう。二度塗りすることで、蒔絵にぽってりとした質感がうまれます。

下絵ができたら漆が乾くまえにその接着力を利用して金粉を蒔きつけます。最後に磨きをかけることで輝きを調節し、風合いのある仕上がりに。

身につけたときに絵柄がよく見えるように、使われているのは上がやや平らな11.5mmの淡水パール。
ここまで小さなものに蒔絵を描くのは職人もはじめてで、最初は何度も練習を重ねたのだとか。

和柄には意味があるって知っていた?

それにしても、小さなパールにこんなに繊細な文様を描くことができるなんて、蒔絵ってすごい!
伝統的なのにどこか新しい和柄のデザインもまたすてきです。
日常使いがしやすいよう幾何学的な見ためで、かつ身につける人を守ってくれるような柄や、成り立ちにストーリーがある柄を選んだのだそう。

パールのピアス(イアリング)の片方だけに蒔絵を描いたもの。おしゃれでかつふだん使いがしやすいデザイン。 MAKIEパール(和柄シングル) 26,400円(税込)

たとえば日本を代表する花「菊」は生命力が強く、また花の形がお日さまにも通じることから長寿や健康のモチーフでもあります。

丈夫で成長が早い「麻の葉」は子どもがすくすくと成長するよう産着などにも使われていた柄。魔よけの意味もあり、お守りにぴったり。

三角形が連なる「鱗文様」は、女性の厄除けや海難を避けるお守りとしても。昔は厄年の女性は鱗文様の長襦袢を身につけるとよいといわれたそうです。

病気や厄災から身を守るすべが少なかった時代、きっと私たち日本人は身につけるものの絵柄におまじないのような意味を込めていたのでしょう。
ジュエリーそのものにも身を守るものしての歴史がありますが、蒔絵の文様もいっそうのパワーをくれそうですよね。

日本の伝統工芸と、私たちの日常を結ぶものづくりを

MAKIEパールをはじめ、KARAFURUのジュエリーすべてのデザインを担当しているのが代表の黒田 幸さん。でも、黒田さんは「自分のことをデザイナーとは思っていない」と話します。

前職では歌舞伎の興行会社に勤めていたという黒田さん。歌舞伎の衣装や小道具に関する仕事を通して、染織、刺繍、漆器…日本には多種多様な伝統工芸があることを知り、その魅力に心を奪われたといいます。と同時に若手の職人が少ないこと、つまり後継者不足によって貴重な技術が失われつつあることを知ったのです。

以前は私たちの暮らしのもっと身近にあった伝統工芸品。職人は歌舞伎の小道具だけでなく、一般の人が使うものも手掛けていました。ところが生活の変化とともに一般の需要が減ったため、若手の職人はアルバイトをしながら伝統工芸の仕事を続けるケースが増えているそうです。

やがて黒田さんは、「日本の伝統工芸を私たちの日常と結ぶものづくりがしたい」という夢を抱いて、会社を辞めて起業する決断をします。

「結ぶ」をモチーフにしたKARAFURUのロゴマーク。女性を守る鱗文様をリボンのようなかたちにアレンジしたもの。

目標から落とし込んでいったデザイン

産業革命や高度経済成長を経て、大量生産・大量消費が当たりまえになった今。私たちが日常で使っているものにくらべると、職人が丁寧につくったものはどうしても価格が高くなってしまいます。
黒田さんは「ある程度の価格でも私たちが使いたいと思うもの、選ばれるもの」を試行錯誤してジュエリーにたどりついたそう。
また、ふだんは黒の漆塗りに描かれることの多い蒔絵ですが「黒とゴールドの組み合わせはふだん使いにはちょっと強い」と純白のパールと蒔絵の組み合わせを思いついたといいます。

なるほど、好きなものを自由にデザインするよりも、目標をしっかり見つめてそこに落とし込んでいったからこそ、研ぎ澄まされたものができあがったということなのかもしれません。

新幹線に飛び乗って、京都の漆屋へ

新しいことに意欲的に挑戦している漆屋をネットで見つけた黒田さんは、思い切って電話をかけたそう。その翌日には新幹線に乗って、商品化の相談をするために京都へ足を運んだといいます。なんという行動力!

そのときの出会いがつながって、スタート当初からずっとMAKIEパールの制作に携わってくれている蒔絵師を紹介してもらったという黒田さん。ただし、「真珠に蒔絵を描くなんてムリ」と何人もの職人から断られる経験もしたそうです。

それでも黒田さんを支え、職人との絆を結んだもの。それはやっぱり「伝統工芸をもう一度、私たちの日常に」という思いだったのではないでしょうか。

手にとるひとの心を晴れやかにするジュエリーを

MAKIEパールを手にとるお客さまは20代から70代くらいまで幅広く、また夫から妻へ、子から母へ、親から娘へ…と、大切なひとへの贈りものとして選ばれることも多いそう。

「伝統工芸の技術や、職人の手で丁寧につくられたものであること、ものづくりのストーリーなどの価値を認めて選んでくださっているのかなと思います。」と黒田さん。

月をモチーフにしたこんなシックなMAKIEパールも。 月の満ち欠けネックレス(バロック) 71,500円(税込)

KARAFURUというブランド名には、日本文化の多彩(カラフル)さと、“ふるいものから“という言葉遊びをかけたそう。「古き良き日本の文化と技を結んで、手にとるひとの心を晴れやかに」というミッションのもと、心のこもったものづくりを続けています。

国内外の名だたるショップにもセレクトされているMAKIEパール。実物を手にとってみたい方はぜひ、東京・代官山にあるKARAFURUのお店へ足を運んでみては。

KARAFURU

住所 東京都渋谷区恵比寿西2-20-14 1F
営業時間 12時~19時
定休日 月・火
公式サイト https://www.karafuru.jp/

書いた人

岩手生まれ、埼玉在住。書店アルバイト、足袋靴下メーカー営業事務、小学校の通知表ソフトのユーザー対応などを経て、Web編集&ライター業へ。趣味は茶の湯と少女マンガ、好きな言葉は「くう ねる あそぶ」。30代は子育てに身も心も捧げたが、40代はもう捧げきれないと自分自身へIターンを計画中。