Gourmet
2020.04.14

埼玉県民はその辺の草でも…食ってるよ!庭に生えてた草でごはん作っちゃった【おうち時間】

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映画「翔んで埼玉」でお馴染みの衝撃的なフレーズ、「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」
――しかし、埼玉在住ン十年の私から、敢えて言いたい。

「そこらへんの草もおいしいよ!」

2020年4月現在、外出やお花見の自粛など、「何もしてないのに消耗する」状態が続いている方も多いと思う。ここはひとつ、気晴らしに草でも食べてみてはいかがだろうか。わざわざ遠出しなくても、「食べられる草」があちこちに生い茂っている埼玉。春らしい旬のレシピで食卓を彩るべく、我が家の小さな庭で採れたツクシとカラスノエンドウ、ヨモギを使って、夕飯のおかずを考えてみた。草を食べることになんら抵抗のない埼玉県民による「草レシピ」を紹介しよう。

そこのお洒落な横浜と舞浜は、憐れみの目でこちら(埼玉)を見るんじゃない。

意外にいける「そこらへんの草レシピ」

さっそくその辺の草で作ったレシピをご紹介!色とりどり…とまではいかないけど、あれ、意外とおいしそうじゃない?

1.ツクシ入り炊き込みご飯~カラスノエンドウを添えて~

ツクシは穂先が閉じているなるべく若いものを選ぶ。穂先が開いていても食べられなくはないが、苦味が強いそう。

1.節々の「袴」を取り除き(wのような形の部分)、水に10分程度さらす
2.沸騰したお湯でサッと茹でる。お湯が緑色になるが、胞子の色であってアクではないので、お湯が透明にならなくても良い
3.再度水にさらす
4.米3合を普通に研ぎ、炊き込みご飯の素を混ぜて下処理したツクシを乗せ、あとは炊飯器に任せる。鶏肉やシメジなどお好みに合わせて追加
5.その間にカラスノエンドウの葉の部分を洗ってサッと茹でておく
6.炊き上がったら器に盛り、カラスノエンドウを添えて出来上がり!

埼玉県民だけど肉も食べたい

さてお味のほうは?

普通に炊き込みご飯の味。決して他の食材でごまかしているわけではない。山菜特有の主張がなく、他の食材によく馴染む。

2.カラスノエンドウの天ぷら~素材の味を楽しんで~

カラスノエンドウはあちこちに大量に生えており、むしってもむしってもなくなる気配がない。たくさん摘んだのはいいがどうしたものか、そんな時は天ぷらに決定。

1.葉の部分をよく洗う
2.天ぷら粉をつけて揚げる
3.塩や天つゆなどお好みで


癖がない(無味無臭とも言う)。揚げたてだからおいしいのか、塩がおいしいのか……。実の部分も食べられるが、今回は葉の部分のみ使用。

3.ヨモギの草もち~スリコギでよくついて~

真の埼玉県民なら食後のデザートも草で決めたい。

1.ヨモギはよく洗い、数分茹でる
2.冷水にさらし、水気を切る
3.すり鉢ですりおろすか、包丁で細かく刻む。この作業が大変な重労働で、なかなかペースト状にならない。無理せずフードプロセッサーなどを使用したほうが良い
4.上新粉200gにお湯160ccを加え、耳たぶくらいの固さにこねる。(子どもが横で、耳たぶくらいってどれくらいだろう?と耳たぶをしきりに触る)
5.10個程度に分けてお団子状に丸め、浮き上がるまで茹でる(結構時間がかかる)。または蒸し器で20分
6.すり鉢などに入れたペースト状のヨモギにお団子を入れ、濡らしたスリコギでつく。これまた重労働で、店頭販売されている草もちのように、なかなか均一にヨモギ色にならない。半ば強引に練り込み、あとは砂糖大さじ1程度を入れたきな粉を豪快にまぶしてごまかす


見た目はともかく甘すぎず、ヨモギの香りも引き立ち、意外と上品な味のおやつが完成。

食後のデザート作りが一番大変だった。全く草を食べるのもひと苦労である。

草を食べるのは埼玉県民だけじゃない

実際、日本人は昔から野草を食してきた。決して埼玉に限った話ではない。季節の変わり目に体調を崩す人も多いが、とはいえ薬を飲むほどではない。そんな時、旬の野草を食して胃腸や肌の調子を整えるという方法を、古来から実践してきているのだ。
今回使用した食材は、春の訪れを告げる薬草や山菜として知られ、いずれも高い栄養価を持つ。特にツクシはビタミンE含有量が他の野菜に比べて突出しており、咳を鎮める効果のある成分(サポニンの一種)も含む。カラスノエンドウは実も草も薬草として食され、胃腸を整えるのに効果があるそうだ。

ヨモギはハーブとして知られ、食用のほか、お灸のもぐさや塗り薬にも使われるなど、用途は多岐に渡る。

ただ、どんな食べ物にでも言えることだが、大量摂取は逆効果となったり、体質によっては食さないほうが良い場合があるので、ご注意願いたい。
映画「翔んで埼玉」で二階堂ふみは、体調不良を訴える埼玉県民に対して、「(薬の代わりに)草でも食わせおけ」と言っている。いくらそこらの草と言っても、摘む場所にはある程度の注意が必要だ。排気ガスまみれのような場所は避けよう。例え埼玉県民でもお腹を壊しては元も子もない。

「ダサい・何もない」……自虐の根底にあるもの

映画が話題になるずっと前から、ダサいたまと言われることには慣れている埼玉。しかし何を基準としてダサいと称されているのかは、長年の疑問である。語呂がいいから言ってるだけではないのだろうか。

ファッションがダサいのか?

服装とか見た目のセンスのことを指すのだとしたら、あいにくこちらとしては、他人の服装をジロジロ眺めてジャッジするような感性は持ち合わせていない。確かに、流行の発信地とは言い難い。しかし、流行を追い求めるだけというのも、ハタから見れば結構痛々しいのではないか。ちょっともっさりしてるくらいが親しみが持てるような気がする。別に負け惜しみを言いたいわけではない。他県に思うところがないでもないが、他県のことはディスらないのが埼玉県民の矜持である。

本当に何もないのか?

「ダサい」と並んでよく言われる「(海も山も文化も)何もない」。我が子にまで「どうして埼玉って何もないの?」と問われて回答に窮している日々だが、何もないと思えばないし、あると思えばある。

今でこそ羽田や成田は国際派を気取っている(?)が、日本の航空発祥の地は埼玉の所沢だ。1911年、徳川好敏大尉(清水徳川家第8代当主)の操縦する「アンリー・ファルマン機」が公式飛行場での飛行に成功したが、その舞台こそ、所沢飛行場(現在の所沢航空記念公園)だった。2019年8月より、普段は入間基地の修武台記念館に保管されている実機が、里帰り展示されている。ただ、現在の自粛状況下の中、当面の間休館しているので、再開した暁にはぜひ訪れて実物をご覧いただきたい。アンリー・ファルマン機

ほかにも、関東屈指のパワースポット三峯神社や、行政と市民で作り上げた日本一の桜回廊など、風光明媚な場所だって何気(なにげ)にちゃんとある。

安・近・短が埼玉の魅力

ゴージャスさとはちょっと違う、会いにいけるアイドルならぬ、近くにある観光地、安・近・短が埼玉の魅力だ。
ところで「何気に」という言い回しは、埼玉発祥の方言と言われている(※諸説あり)。表現を少し和らげたい時などに使用すると、何気に便利。

埼玉は確かに時代の最先端を行くような都市ではない(それは断言する)。だが刺激より落ち着きを求める人にオススメできる理由がある。
そのひとつとして取り上げたいのが、自主防犯活動グループの団体数。その数は5,841にのぼり(2019年12月末現在)、なんと日本一である。普段は個々のパーソナルスペースを侵すことなく、困った時は助け合う、その絶妙な距離感こそが埼玉の良さ、ひいては住みやすさではないだろうか。よく「東京に近い」からベッドタウンで人気と称されることもあるが、「乗り換えなしで一本で行ける」は「近い」と同義ではない。都会に出るには結構な時間がかかるものだ。

埼玉はいつでもあなたを待っている

転居者も多く、もはや埼玉ネイディブ(?)と移住者の区別などつかない状態の埼玉。「住民基本台帳に基づく2019年の人口移動報告(外国人を除く)」によると、埼玉県の転入超過数は前年より5.4%多い1万7963人。東京都特別区、大阪市に次いで全国3位となっている。それだけなら「転勤とかでやむを得ずでは?」と思わなくもないが、sumoによる「住みたい街ランキング2020関東版」では、さいたま市内から大宮と浦和が10位以内にランクイン。しかも両者とも3年連続10位以内という実績だ。1位を除いて東京都がほぼ独占する中、同じさいたま市内から2つの地域がランクインすること自体が驚きの結果だが、実はみなさん埼玉に憧れているのではないだろうか。ちなみに19位のさいたま新都心もさいたま市である(燦然と1位に輝く横浜には今回は言及しない)。

そんなに埼玉が好きなら素直にそう言ってくれればいいのに。許容範囲が広く、どれだけいじられても寛容な埼玉県民は、いつでもあなたを待っている。