写真/『佐賀県立九州陶磁文化館』の「柴田夫妻コレクション」より。
今も田園風景に窯元の集落が残る町
有田うつわめぐりの後半は、有田駅の西側へ。『柿右衛門窯』と、もうひとつの三右衛門『源右衛門窯(げんえもんがま)』に寄れば、400年という歴史のなかで継承され高められてきた有田磁器の真髄を見ることができます。瓦屋根の建物の内部にヨーロッパ式改良型の窯を備えた『源右衛門窯』で、ろくろ成形や絵付けなどの制作現場を見学すると、有田磁器への愛着もひとしお。
この西側エリアでは、職人の町・有田で作家として活動を続ける白磁の陶工・百田暁生(ももたあきお)さんのアトリエ『in blue(インブルー)』や、奇石や巨岩がそびえ特異な景観をつくる竜門峡(りゅうもんきょう)へも足を延ばしたいところ。竜門峡を見下ろすカフェ『木もれ陽(こもれび)』の自家焙煎コーヒーで休憩したり、有田磁器を食の面から支える日本料理店『保名(やすな)』での食事も楽しみです。また『深川製磁』の敷地内にある『チャイナ・オン・ザ・パーク』には、アウトレットをはじめ、創始者のコレクションを展示した『忠次館(ちゅうじかん)』、フレンチレストラン『究林登(くりんと)』などが。ここだけでも半日過ごせそうな、心躍るエリアです。
さらに、有田駅からほど近い駅前地区には『佐賀県立九州陶磁文化館』が。江戸時代の有田磁器の一大コレクション「柴田夫妻コレクション」や、輸出された伊万里焼が圧巻の「蒲原(かんばら)コレクション」など、九州の古陶磁から現代の陶芸作品までを有する、世界的にも評価の高い博物館です。旅の初めに、有田駅からまずはここへ寄るのもおすすめ。
2016年の有田焼400年で沸く有田。隣町の武雄(たけお)や嬉野での温泉も楽しみな、1泊2日の有田うつわ旅へぜひ!
源右衛門窯
近年は技術と意匠で古伊万里の復興も
開窯260余年、磁器発祥の地の伝統技術で、うつわと美術工芸品などをつくってきた『源右衛門窯』。ティファニー社とのコラボ制作も。昭和45(1970)年以降は古伊万里の再興にも尽力。ショールームのほか、古伊万里資料館や工房見学などでも有田磁器に触れられる。
佐賀県西松浦郡有田町丸尾丙2726 9時~17時 無休(年末年始は休業) http://www.gen-emon.co.jp/
in blue
シャープでいてあたたかみのある白磁作家・百田暁生さんのアトリエ
職人の町有田に、今年4月アトリエ&ギャラリー『in blue』をもった白磁作家の百田暁生さん。隣町の武雄で20年近く作家活動を行っていたが、故郷に戻り、自然をテーマに独自の感性で作品づくりに挑む。作品は同ギャラリーのほか、有田陶磁の里プラザの『百田陶園』でも購入可能。
佐賀県西松浦郡有田町黒牟田丙3499-6 10時~17時 不定休(来店時には電話を)
木洩れ陽
ダイナミックな景色と自家焙煎豆のコーヒーを
有田町の北、竜門峡(りゅうもんきょう)の深緑を目の前に、自家焙煎のコーヒーと自然酵母パンがいただけるカフェ。黒髪山系(くろかみさんけい)の麓、地下110mから湧く岩清水は名水百選のひとつで、ブラジルの契約農家から仕入れる豆の味わいを引き出す。眼においしい景色、豊かな風味のコーヒーで、有田散歩のブレイクに。
佐賀県西松浦郡有田町広瀬山甲2373-4 10時30分~19時(LO18時30分) 第2木曜・年末年始休 http://www.ryusenso.jp/komorebi/
日本料理 保名
食材と調理、料理とうつわの妙も堪能
写真はお昼に人気の陶箱弁当。壽づくしの文様を染め付けた陶箱の蓋を開けると、玉手箱のような色とりどりの料理とうつわが。『保名』では地元の食材を生かした料理だけでなく、骨董商も営む店主の眼にかなった器と料理の取り合わせも楽しみ。手塩皿やなます皿など、手ごろな古伊万里なども販売。
佐賀県西松浦郡有田町本町丙833-4 11時30分~15時、17時~21時 不定休 陶箱弁当は郷土料理の〝ごどうふ〟とお造り、ちらし寿司、お椀付きで¥2,500
チャイナ・オン・ザ・パーク
深川製磁の歴史に触れるテーマパーク!
『深川製磁』の敷地内に、創始者の作品とその様式美を伝える作品を展示する「忠次館」(カフェもあり)、アウトレットショップ「瓷器倉(じきぐら)」、創作フレンチの「レストラン究林登」などが。パリ万博金牌受賞に輝いた高さ約2mの大花瓶の展示も。
佐賀県西松浦郡有田町原明乙111 9時~17時30分(レストランは11時30分~16時30分、夜は要予約) 火曜・年末年始休 http://www.fukagawa-seiji.co.jp/cotp/
佐賀県立九州陶磁文化館
やきものの町ならではの美術館
九州各地の陶磁器や現代作家の作品を有する、やきもの専門美術館。輸出された有田焼(古伊万里)の蒲原コレクションや、国内向けの有田焼を千点展示する柴田夫妻コレクションは必見。有田散歩の起点としてじっくり見学したい。
佐賀県西松浦郡有田町戸杓乙3100-1 9時~17時 月曜休(休日の場合は開館、年末年始も休館) http://saga-museum.jp/ceramic/
写真/篠原宏明