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2019.03.19

浮世絵の富士山・女性・子どもに的を絞った、楽しくて深い展覧会3選【2019年】

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北斎はなぜ富士山をたくさん描いたのか?

2020年3月から導入される新しいパスポートのデザインに葛飾北斎の『富嶽三十六景』が採用されることはご存じでしょうか。出入国のスタンプを押す査証欄に、なんと『富嶽三十六景』でも人気の高い24点が印刷されるのです!

2018年10月に発表された、ビザなし渡航が可能な国・地域の数で比較する「パスポートランキング」で、日本は190か国で初の単独1位となりました。
それで、世界一のパスポートと称されるようになったのですが、これまでの日本のパスポート自体は無味乾燥な印象しかなかったというのが正直なところ。

そこに、江戸のリアルタイムに浮世絵師としてトップの地位を得て、没後は世界に「HOKUSAI」の名をとどろかせるもととなった『富嶽三十六景』の名画が描かれるのですから、新パスポートは名実ともに世界最強となることは間違いありません。

パスポートの変更を翌年に控えた今年は、北斎が亡くなって170年という節目にあたります。それを記念して、東京・原宿にある太田記念美術館では、「没後170年記念 北斎―富士への道」(4月4日~5月26日)が開催されます。

査証欄に採用される『富嶽三十六景』の24点は前後期に分けて展示され、ほかにも200点をこす展示作品のうち100点は富士山の絵。
70年の長きにわたる北斎の絵師人生のなかで、独自の美意識でさまざまに描いた富士山の姿は、北斎がいかに傑出した絵師であったかをというまで教えてくれます。

浮世絵の「富士山」「女性」「子ども」に的を絞った、楽しくて深~い展覧会3選

没後170年記念「北斎 富士への道」
太田記念美術館

会期:4月4日(木)~5月26日(日)
   前期4月4日~4月29日(月・祝) 後期5月3日(金・祝)~5月26日
   ※前後期で全点展示替え
会場:太田記念美術館 公式サイト
東京都渋谷区神宮前1-10-10
開館時間:10:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日:月曜(4月29日、5月6日は開館)、4月30日~5月2日、5月7日(火)
入館料:一般1,000円

浮世絵といえばやっぱり美人画、ですが・・・

平安美人の引目鉤鼻を受け継いだ浮世絵の美人画は、平面的な描写でありながら顔の表情やきもの、小道具など、端々に女性らしいニュアンスが感じられて、江戸時代から人気の高い浮世絵のジャンルのひとつでした。

そこに描かれたきものの様子や着こなし、周囲の調度や背景などを見ると、モデルとなった女性の美しさだけでなく、人生や生活などまで見て取ることができました。

そんなところに注目した展覧会が、東京・渋谷の松濤美術館で開催される特別展「女・おんな・オンナ ~浮世絵にみる女のくらし」(4月6日~5月26日)です。

公家や武家、農民、町人、商人、遊女など、さまざまな階層の女性たちの身なりや仕事ぶり、学び事や楽しみなど10のテーマに分けて紹介される展示は、江戸時代の女性たちのリアルな姿を教えてくれます。

浮世絵の「富士山」「女性」「子ども」に的を絞った、楽しくて深~い展覧会3選

特別展「女・おんな・オンナ ~浮世絵にみる女のくらし」
渋谷区立松涛美術館

会期:4月6日(土)~5月26日(日)
会場:渋谷区立松濤美術館 公式サイト
開館時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで 入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(4月29日、5月6日は開館)、4月23日(火)、5月2日(木・休)・7日(火)
入館料:一般1,000円

生き生きとした子どもたちの姿が微笑ましい

江戸庶民の生活を描いた浮世絵には、歌舞伎や相撲、吉原などのいわゆる“悪所”ばかりでなく、子どもたちの日常の様子や自然の中で無邪気に遊ぶ姿、母の情愛を受けて健やかに成長する姿が数多く描かれています。

そのような浮世絵の収集と研究を行っているのが、公文式学習法で知られる公文教育研究会です。子ども文化の研究のために集められたのは、浮世絵を中心とした約 3,200点におよぶ歴史資料。そこから、江戸の子どもの姿を紹介する展覧会が、東京・練馬区立美術館でのくもんの子ども浮世絵コレクション「遊べる浮世絵展」です。

展示されるのは、子どもの遊びをテーマとした選りすぐりの浮世絵や絵巻、屏風、玩具、絵本など約 170 点。今と変わらぬ江戸時代の子どもたちの姿が、そこから見て取れます。

浮世絵の「富士山」「女性」「子ども」に的を絞った、楽しくて深~い展覧会3選

くもんの子ども浮世絵コレクション「遊べる浮世絵展」
練馬区立美術館

会期:4月28日(日)~6月9日(日)
会場:練馬区立美術館 公式サイト
開館時間:10:00~18:00 (入館は17:30まで)
休館日:月曜(4月29 日、5月 6日は開館)、5月 7日(火)
観覧料:一般 1,000 円