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2025.07.11

高井鴻山とは? 晩年の北斎を支えた小布施のキーマン│浮世絵師・葛飾北斎を知るAtoZ【T】

約70年にわたって活躍した浮世絵師・葛飾北斎。ただひたすら絵を描くことに執着し続けた北斎の人生は、波乱万丈にして奇想天外! 破天荒な絵師・北斎の人生をAからZの26の単語でご紹介します。今回はT=【高井鴻山】。いったい誰? 北斎とどんな関係があったの?

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北斎AtoZ
T=【高井鴻山】晩年の北斎が長期滞在目した小布施のキーマン

高井鴻山(たかいこうざん)とはあまりなじみのない名前かもしれませんが、80歳を超えた晩年の北斎にとっての大恩人が、鴻山でした。

『冨嶽三十六景』にはじまる風景画ブームも落ち着き、80代を迎えた北斎はひとところに留まることがなく、あちこちを旅しながら、独自の肉筆画を追求するようになっていました。

やがて天保の改革によって贅沢が禁止され、浮世絵制作にも支障をきたし始めたことから、北斎は信州・小布施(おぶせ)を目ざします。そこで頼りにしたのが、地元の豪商・高井鴻山でした。

高井鴻山にもてなされ、小布施で作画に専心

左/北斎とのゆかりの深さを知ることができる「高井鴻山記念館」。右/記念館の敷地内には北斎のために用意した屋敷が残り、小布施での暮らしぶりを追体験できる。

絵のたしなみがあった鴻山にとって、北斎の来訪はこの上なくありがたく嬉しいことで、自らの屋敷内に北斎専用のアトリエを建てるなどして歓待しました。

鴻山のおかげで小布施に落ち着き、作画に専心することができた北斎は83歳から89歳になるまでの間に、4回も小布施で長逗留をしています。

滞在中のモーニング・ルーティーンとして、ほぼ毎朝描いた獅子の図で重要文化財の『日新除魔図(にっしんじょまず)』(九州国立博物館)も小布施で描かれたものです。

▼『日新除魔図』について詳しくはこちら
江戸時代に90歳の長寿! 北斎の「モーニング・ルーティーン」がスゴかった

決して見逃せないのが岩松院の天井画!

左/記念館に置かれた、高井鴻山の銅像。右/北斎が描いた最後の大作の天井画がある岩松院。

小布施における最後の大仕事として北斎が取り組んだのが、「岩松院(がんしょういん)」の『八方睨み鳳凰図(はっぽうにらみほうおうず)』。

鴻山にすすめられて描くことを決めた、2畳もの大きさの天井画です。(画像は「岩松院」公式サイトで見られます)

実際の作画においては、娘の応為(おうい)などの助けを借りていたとされますが、そもそも健康長寿すら難しい高齢で、これほどの制作意欲をもっていたこと自体、驚異的ですらあります。

小布施での北斎の画業を目の当たりにする!

秋は名物の栗を求める人でにぎわう小布施の街の中心地にある「北斎館」。入り口付近には有名な自画像のレリーフがある。館内では「上町祭屋台」のほか、北斎の名画が観賞できる。

北斎にとって江戸に次いでゆかりの深い信州・小布施では現在、前述の岩松院の天井画を拝観することができます。
また、肉筆画を中心にした北斎の作品を収蔵する「北斎館」では、「男浪(おなみ)」「女浪(めなみ)」の図が有名な『上町祭屋台天井絵 濤図(かみまちつりやたいてんじょうえ なみず』が常設展示されていて、老境にありながら底知れぬ迫力を保ち続けた北斎の気迫を知ることができます。

さらに街中を歩くと、暖簾や土産物の包装紙にあしらわれた北斎の作品が目を楽しませてくれます。

高井鴻山によって結ばれた小布施の地は、北斎ファンにとっての〝聖地巡礼〟と言っても過言ではありません。

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和樂web編集部


撮影/篠原宏明 構成/山本 毅 ※本記事は雑誌『和樂(2017年10・11月号)』の転載・再編集です。 アルファベットに用いた葛飾北斎の絵は、『戯作者考補遺』(部分) 木村黙老著 国本出版社 1935 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1874790 (参照 2
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