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北斎AtoZ
Q=【九州国立博物館】北斎がもっと好きになる、門外不出の墨画
アルファベット26文字中唯一該当するものがなかった「Q」は、「きゅう」の読みから、九州国立博物館を挙げます。
その理由は、重文『日新除魔図(にっしんじょまず)』を収蔵しているからです。
北斎は83歳を迎えた天保13(1842)年から翌年にかけ、滞在していた信州・小布施(おぶせ)で、「日新たに魔を除く」ことを願って、朝起きるとまず獅子や獅子にゆかりのある人物などを描くことをモーニング・ルーティーンにしていました。
北斎80代、毎朝起きると獅子を描いた
約30×20㎝の和紙に、墨で獅子を描き、日付を記したこの作品群が『日新除魔図』と呼ばれ、現存する約250図のうち、219図が九州国立博物館にあるのです。
平均寿命が現在よりはるかに短かった江戸時代において、80歳を過ぎて90歳で亡くなるまで毎日絵筆をとり、傑作を描き続けた北斎。
健康長寿ぶりはもちろんですが、『日新除魔図』を見ると、筆の運びにいささかの乱れもなく、獅子を擬人化した想像力とユーモアにあふれた表現には、舌を巻く思いです。
既知の作品よりはるかに自由自在!
浮世絵版画のような注文に応じて制作した作品とは違って、ただ魔除けを願って描いていた作品は、まさに自由闊達(かったつ)。北斎のプライベートな部分まで垣間見ることができ、北斎という絵師がなおいっそう興味深く感じられるようになります。
ユーモラスな姿に北斎の人柄がしのばれる
『日新除魔図』は有名コレクターから寄贈されたもので、その際に、九州国立博物館以外での展示を禁止する〝門外不出〟という条件が付されていました。
その全図が公開されたのが、2022年に開催された「特別展 北斎」。各地を巡回した特別展でも、『日新除魔図』が展示されたのは九州国立博物館だけとあって、大きな話題になりました。
今も残る展覧会公式サイトでは、ここに掲載した以外の図がみられます。
また、収蔵品ギャラリー『日新除魔図』には展示予定も記されているので、どうぞご参考に!