CATEGORY

最新号紹介

12,1月号2025.10.31発売

今こそ知りたい!千利休の『茶』と『美』

閉じる

Art

2025.07.24

天才絵師・北斎が人生の最後に描いた絵は何だったのか?│浮世絵師・葛飾北斎を知るAtoZ【Z】

約70年にわたって活躍した浮世絵師・葛飾北斎。ただひたすら絵を描くことに執着し続けた北斎の人生は、波乱万丈にして奇想天外! 破天荒な絵師・北斎の人生をAからZの26の単語でご紹介します。最終回はZ=【絶筆】!

シリーズ一覧はこちら

北斎AtoZ
Z=【絶筆】最後に富士山を描いて90歳の絵師人生の幕を閉じる

生涯最後に書いたもの、描いたものを表す「絶筆(ぜっぴつ)」。
北斎にとって絶筆とされるのが掛幅(かけふく)『富士越龍図(ふじこしりゅうず)』(北斎館)。
北斎の名を世界にとどろかせた富士山と、そこから天に向かって龍が昇るという、大変めでたい画題でした。
落款には嘉永2(1849)年正月辰の日(11日か2日)とあり、同年4月18日病没した北斎の最後の肉筆の大作とされます。

肉筆画に注力した晩年の北斎の名作

『神功皇后図(じんぐうこうごうず)』(部分) 葛飾北斎 1847年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art, Charles Stewart Smith Collection, Gift of Mrs. Charles Stewart Smith, CharlesStewart Smith Jr., and Howard Caswell Smith, in memory of Charles Stewart Smith, 1914

晩年の北斎は肉筆画を描き続け、『黒鐘馗(くろしょうき)』や『扇面散図』なども嘉永2年の作。
いずれも確かな筆致で、とても90歳の老人が描いたものとは思えないほどのものです。

このように、晩年の肉筆画の出来栄えは素晴らしいものなのですが、若いころから老境にいたるまで「もっとうまく描けるようになりたい!」と願いながら筆をとり続けたと伝わる北斎にとって、どれもは依然として満足できるものではなかったのだとか。

直線に少しの乱れもない、没年に描いた肉筆画

最晩年の90歳の作品。光の明暗を意識し、色調を変えて立体的に描いているのは、北斎晩年の特徴。老いても衰えることのなかった絵に対する探究心がうかがえる。『扇面散図(せんめんちらしず)』葛飾北斎 嘉永2(1849)年 東京国立博物館 出典:ColBase (https://colbase.nich.go.jp)

その根拠とされるのが、最後に残した言葉です。
「あと10年、いや、あと5年生きられたら本当の絵師になれるのに」と言いながら、鬼籍(きせき)に入ること悔やんでいたというのですから、恐るべき情熱の持ち主であったことがよくわかります。

北斎が残した辞世の句が、「人魂(ひとだま)で行く気散(きさん)じや夏野原(なつのはら)」。
浅草誓教寺(あさくさせいきょうじ)で行われた葬儀の際にはそのとおりに、人魂となった北斎がさっそく気晴らしに訪れ、弔問(ちょうもん)に訪れた友人・門人たちの姿を熱心にスケッチでもしていたのでは・・・。

北斎の作画への意欲や向上心は終生衰えることはなかった

20~35歳ごろまでの春郎期に北斎は、赤の顔料を用いた鐘馗図(赤鐘馗)をいくつも描いていた。そして亡くなる間際には、黒一色の鐘馗を完成。普通、直線を描くことすら難しい年齢で、この力強さはありえない。『黒鐘馗』(部分) 葛飾北斎 1849年 メトロポリタン美術館 The Metropolitan Museum of Art, Charles Stewart Smith Collection, Gift of Mrs. Charles Stewart Smith, CharlesStewart Smith Jr., and Howard Caswell Smith, in memory of Charles Stewart Smith, 1914
Share

和樂web編集部


構成/山本 毅 ※本記事は雑誌『和樂(2017年10・11月号)』の転載・再編集です。 アルファベットに用いた葛飾北斎の絵は、『戯作者考補遺』(部分) 木村黙老著 国本出版社 1935 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1874790 (参照 2025-06-04)
おすすめの記事

親戚にいそう! 北斎の本名が意外と普通だった!│浮世絵師・葛飾北斎を知るAtoZ【K】

和樂web編集部

水墨画で鶏を描く| 若冲から感じる“気韻生動”の美

鮫島圭代

人の思いを「色」に乗せて。美術家maisが門跡寺院に描き出した色彩

和樂web編集部

老いてますます盛ん!北斎が「画狂老人卍」時代に描いた作品とは?│ 浮世絵師・葛飾北斎を知るAtoZ【G】

和樂web編集部

人気記事ランキング

最新号紹介

12,1月号2025.10.31発売

今こそ知りたい!千利休の『茶』と『美』

※和樂本誌ならびに和樂webに関するお問い合わせはこちら
※小学館が雑誌『和樂』およびWEBサイト『和樂web』にて運営しているInstagramの公式アカウントは「@warakumagazine」のみになります。
和樂webのロゴや名称、公式アカウントの投稿を無断使用しプレゼント企画などを行っている類似アカウントがございますが、弊社とは一切関係ないのでご注意ください。
類似アカウントから不審なDM(プレゼント当選告知)などを受け取った際は、記載されたURLにはアクセスせずDM自体を削除していただくようお願いいたします。
また被害防止のため、同アカウントのブロックをお願いいたします。

関連メディア