
「大阪・関西万博2025」のイタリア パビリオンで文化の真髄を知る!

10月初旬、まず訪れたのは、万博の中で最も人気ともいわれるイタリア パビリオン。今回は特別に列に並ぶことなく、入ることが許されました。最初に案内をしてくださったのは、マリオ・ヴァッターニ政府代表。『ファルネーゼ・アトラス』、『復活のキリスト』(ミケランジェロ)、『キリストの埋葬』(カラヴァッジョ)、『アトランティック・コード』(レオナルド・ダ・ヴィンチ)、『「伊東祐益(すけます)マンショ」の肖像』(ティントレット)といった、ルネサンス期からバロック期にかけて生まれた至宝の迫力に、参加者一同、驚きを隠せません!ブチェラッティもまた、この豊かな芸術が生まれた時代の伝統技術を大切に継承。展示品を眺めていくにつれ、ルネサンス芸術とメゾンの深いつながりも感じずにはいられません。
さらにブチェラッティと親和性の高い展示品も!

『連続性の中の唯一の形態』(ボッチョーニ)は、20世紀初頭に起こったイタリアの前衛芸術運動・未来派の代表作で、20セントユーロのデザインにもなっている彫刻。「過去を忘れずに未来へ進む」というメッセージを込めた理想的な人間を表現しており、それはイタリア パビリオン全体のテーマでもあります。また伝統を重んじながらも革新的なジュエリーを生み出す、ブチェラッティにも通ずるものが。ちなみに軽やかな動きのあるデザインが人気の、ブチェラッティのコレクション『ハワイ』も、未来派の作品を着想源としているのだそうです。

ブチェラッティは、繊細かつ独創的なデザイン性から、長らく「金細工の魔術師」として知られているのですが、そう名づけたのが、詩人であるガブリエーレ・ダンヌンツィオでした。詩人でありながら、さまざまな分野で活躍した、イタリア近代の芸術や文化の重要人物ですが、第一次世界大戦末期の1920年に、ローマから東京への大飛行計画にも携わったひとり。その際、空を飛んだ歴史的な機体『木造プロペラ機(アルサンドSVA-9)』のレプリカが、館内の天井に吊るされています。
このような逸話が多く残るダンヌンツィオと、ブチェラッティがどう出会ったのか。その物語は、記事の後半で……。
屋上庭園のレストランでイタリア伝統の味を楽しむ

興奮冷めやらぬまま見学を終えたあとは、パビリオンの屋上庭園にあるレストラン「イータリー」でブッフェランチへ。イタリア館アンバサダーの近衞忠大(このえ・ただひろ)さんとともに、食事やお酒、おしゃべりを楽しみました。当日はお天気にも恵まれ、清々しい空と庭を眺めながら、イタリアの味を満喫!
阪急うめだ本店では、ブチェラッティのハイジュエリーを間近に!

ランチの後は、ブチェラッティの店舗がある阪急うめだ本店へ移動。ここでは「ブチェラッティの魅力に触れる会」が開かれました。本イベントのための特別なサロンには、メゾンが誇る職人技が光るジュエリーがずらり!普段はなかなか目にできない至極のジュエリーは、ため息ものです。

会の冒頭では、『和樂』編集長の高橋木綿子と、『和樂web』編集長の鈴木 深からあいさつが。

そして、ここで特別ゲストが登場!本国から、ブチェラッティ・ファミリーの一員、ルカ・ブチェラッティさんが来日してくださいました。ルカさんは世界のVIPおよびメゾンのアーカイブを担当し、歴史やクリエイションを熟知されている方です。
メゾン初期のエピソードをお話ししてくださったルカさん。ブチェラッティは、創業時からずっとほかとは違う、唯一無二のジュエリーを生み出すことを大切にしてきたと語ります。メゾン独自の伝統と卓抜した技術は、だからこそ変わらずに、継承されてきたのだそう。

メゾンが誕生したのは1919年。ルカさんの祖父にあたる初代マリオ・ブチェラッティには、独自性のあるもの、ゴールドで彫刻のようなジュエリーをつくりたいという思いがありました。しかしながら当時は資金がなかったため、ジュエリーのドローイングを、お店のショーケースに飾ったといいます。
その店の前を通りかかったのが、先ほども登場した、詩人のガブリエーレ・ダンヌンツィオ。商品のない店に興味を示し、ドローイングにも惹かれたダンヌンツィオに、マリオが「ここでは夢を売っている」と話したことから、ふたりの交流が始まりました。ダンヌンツィオがマリオの夢に共鳴し、たくさんのジュエリーをオーダーしたところからも、ジュエラーとしての道が開いていったのです。
当時のイタリアでは、その高い美意識とカリスマ性で、社会全体に絶大な影響力のあったダンヌンツィオ。ふたりの往復書簡は現在でも数多く残され、ブチェラッティに「金細工の魔術師」という名を冠しました。やがてメゾンは、イタリアの社交界に知られていくようになっていきます。
ブチェラッティの歴史と、先ほど観てきたイタリア パビリオンの展示のつながりに、参加者も興味津々。メゾンの背景に思いを馳せたところで、いよいよジュエリーのタッチ&トライへ。
精緻な技術が施された名品の数々に感激!
ブチェラッティは、ルネサンス期の金細工職人の技術を継承しており、またドローイングからジュエリーの完成まで、すべてを手仕事にて行なっています。今回はアトリエの中でも、限られた職人しかつくることができないというハイジュエリーをはじめ、厳選された名品が、ショーケースから運び出されて目の前へ。実際に身につけたり、近くで眺めたりすることで、その抒情的な意匠と、精緻な技巧に改めて感動。サロンのあちらこちらから、大きなため息がこぼれます。ちなみにジュエリーが飾られていたショーケースも歴史のあるもので、一時期はロゴのデザインにも用いられたメゾンの象徴のひとつとなっています。

ルカさんの明るい人柄に、話も弾んで。イタリアの美と文化、そして芸術のあり方を、存分に堪能できた素敵なイベントは、大団円を迎えました。
「茶炉音・ド・和樂」のご案内
『和樂』と『和樂web』では、今後も読者の方にお楽しみいただける、スペシャルなイベントを計画しています。
このような特別な企画、プレゼントのご案内は「茶炉音(サロン)・ド・和樂」ご登録のみなさまへお届けします。ぜひお気軽にご参加ください!
撮影/伊藤 信
構成/湯口かおり、古里典子

