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2021.04.01

「愛」は、燃え上がるような性愛を意味する言葉だった?直江兼続と愛染国俊の「愛」について考えてみた

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妻夫木聡さん主演の大河ドラマ『天地人』で人気急上昇した戦国武将・直江兼続(なおえ かねつぐ)。その兜には、大きな「愛」の文字があしらわれています。

イケメンで有名な直江兼続!

戦いに明け暮れる戦国武将らしからぬ微笑ましさ、なんて言われることもありますが、もしかしたらそんなにかわいらしい理由ではなかったかもしれないのだとか。え、どういうこと?

え? その意味は「LOVE」じゃないの〜?

また、同じ「愛」の字を持つ、名前はかわいいけれどけっこう武闘派なものがあります。

名刀「愛染国俊(あいぜんくにとし)」。
愛に染まる、なんてロマンチックな名前ですが、いったいどんな由来を持つのでしょうか? 直江兼続の兜との関連は?
ちょっと調べてみました。

愛染国俊とは?

愛染国俊は、鎌倉時代中期の名刀工・来国俊(らい くにとし)によって作られた短刀です。昭和10(1935)年4月30日に旧国宝(文化財保護法制定後は重要文化財)に指定された名刀で、豊臣秀吉・徳川家康・美作守森忠政・徳川家光・加賀前田家といった名家で大切に守られてきました。

秀吉や家康に愛されたとは!

刃長9寸5分弱(28.7センチメートル)、反りは1分弱(0.2センチメートル)、美しく精緻な鉄肌に「五ノ目/互ノ目(ぐのめ)」と呼ばれる上下に波打つ刃文、刀身には柄(つか)を描かない剣「素剣(すけん)」と、その裏には長さの異なる棒状の溝が2筋彫られています。

また、刀の持ち手部分にあたる茎(なかご)に、愛染明王(あいぜんみょうおう)の彫刻が施されているのがとても特徴的です。

あいぜんみょうおう?

名付けの由来

茎の愛染明王の彫刻から付けられたと言われています。

愛染明王とは?

では、名前の由来にもなった愛染明王って、どんな仏様なのでしょうか?

愛染明王は愛染王ともいい、サンスクリット語ではラーガラージャと呼ばれる真言密教の仏様です。
愛欲に迷うあらゆる生き物を悟りの境地に導く明王で、愛欲などの迷いがそのまま悟りにつながる・人間の煩悩も仏の悟りの智慧に等しいと考える「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」の教えの本尊として厚い信仰を受けています。

平安初期に日本に伝わり、健康長寿・招福・縁結び・美人祈願の仏様、江戸時代には恋愛の守護仏として遊女たちに信仰されました。また、音が「藍染」に通じることから染物屋の守り仏としても信仰されています。

縁結びに美人祈願! たいへんありがたや。

全身が赤く、目は3つ、弓矢や蓮華などを持った腕が6本、頭に獅子の冠をつけ、怒った顔をしていますが(別の姿のものもあります)、慈愛をもって人々を導く、強く優しい仏様です。

『滋賀県写真帖』滋賀県、国立国会図書館デジタルコレクションより

伝来した平安時代には調伏や降魔の修法の本尊と考えられており、一般に信仰される仏様ではなかったのだそう。
愛染国俊の愛染明王も、こうした意図で彫られたのかもしれませんね。

じゃあ愛ってなんだ?

でも、愛ってなんでしょう?
といっても、哲学的なことを語ろうというわけではありません。

愛とは......。

愛、というと現代では、かわいがって大切にする・物事を好きだと思って大切にする・いつくしむ、などの意味が思い浮かびますが、愛染明王の「愛(ラーガ)」は「心が真赤に染まるような,激しい性愛(『世界大百科事典』)」のこと。愛欲のほうの意味だったのですね。

情熱的〜。

直江兼続の兜の解釈にはいろいろな説があるのですが、愛染国俊と同じ、人の煩悩を示す愛染明王の「愛」だとしたら、あまりロマンティックな意味はなかったのかもしれませんね。

なるほど。兼続の「愛」も、激しく燃える感情を意味していたのかも?

ちなみに、「愛」がキリスト教的な意味を持ち始めたのは明治以降のことで、それまでは多分にエロティックな意味も含んだ言葉だったのだとか。

同じ刀工の有名作

来国俊の作品の特徴については、以下をご覧ください。
名刀・蛍丸とは?蛍が刃こぼれを直した、国宝の来国俊作・大太刀

愛染国俊と同じ作者の有名作には、以下などがあります。
蛍丸
・鳥飼国俊
・結城来国俊 ※国俊と来国俊とで別人とする説もあります。

▼おすすめ書籍『名刀大全』名刀の魅力と歴史がわかる決定版大型作品集

アイキャッチ画像:水谷弓彦『絵入浄瑠璃史. 中』水谷文庫、国立国会図書館デジタルコレクションより

参考文献:
・『小学館 全文全訳古語辞典』小学館
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
・『世界大百科事典』平凡社
・『デジタル大辞泉』小学館
・『日本国語大辞典』小学館
・『例文 仏教語大辞典』小学館
・『刀剣甲冑手帳 増補改訂版』刀剣春秋
・国指定文化財等データベースhttps://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/201/6109

書いた人

人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。

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我の名は、ミステリアス鳩仮面である。1988年4月生まれ、埼玉出身。叔父は鳩界で一世を風靡したピジョン・ザ・グレート。憧れの存在はイトーヨーカドーの鳩。