日本の和傘はこんなにカッコいい!岐阜県内初の和傘専門店「和傘CASA」に聞く魅力

日本の和傘はこんなにカッコいい!岐阜県内初の和傘専門店「和傘CASA」に聞く魅力

雨の日が憂鬱になったのはいつの頃からでしょうか。子どもの頃に歌った「あめあめ ふれふれ かあさんが じゃのめで おむかい うれしいな~」の童謡「あめふり」のように、子どもの頃は傘をさして、雨水をピチャピチャさせながら歩く雨の日が楽しみでもあったはず。和傘から透ける光を見て、そんな遠い記憶を思い出しました。

日本は今、大量のビニール傘の廃棄が問題になったり、鉄道機関における傘の忘れ物が年間30万本を超えたり、年間消費量が約1億2000本となるなど、まさに傘の使い捨て大国となっています。ですが、ほんの50~60年前まで、私たちの生活の中には、木と和紙などの自然素材だけで作られた和傘を大切に使い切る精神があったのです。

和傘CASAは、岐阜県内初の和傘専門店。岐阜で作られている番傘、蛇の目、小蛇の目、日傘などがここで購入できる

町中に傘の花が! 全国屈指の生産を誇る岐阜和傘

岐阜県岐阜市にある加納地区は古くから和傘の産地として名を馳せたた町。鵜飼で有名な長良川の水運を利用し、飛騨などの山間北部からエゴマ油や真竹、木材、そして美濃和紙を運び、この加納地区で和傘が生まれていったのです。江戸時代には、加納藩主永井尚陳が和傘産業を奨励したことから、加納といえば岐阜和傘と言われるほど町は栄えていました。全盛時の昭和20年代には傘屋が600軒もあり、年間1200万本を超える生産量を誇っていたといいます。

かつては、天日干しされた和傘がまるで花が咲き乱れるかのように、美しくこの加納町を彩りました。

昭和30年代以降、洋傘が普及し、全国的に和傘生産が大幅に減少しましたが、岐阜和傘は原材料が地元で揃うこと、職人の技術が高いことなどもあって、現在でも国内生産の約7割を担う一大産地となっています。

和傘作りは大きく分けて18の工程があり、さらにその中で細分化された作業があり、出来上がるまでには100近い工程になります。傘の骨となる竹を削る竹屋、骨を染める骨染屋、和紙を染める染め屋、油と漆を塗る仕上げ屋など、をそれぞれの工程を17~8人の職人が手作業で行っていきます。これらは、昔から家内工業で分業され、その家の主や家族がその技を受け継ぎながら、代々続いてきました。

和紙の部分、骨の部分、柄の部とそれぞれに細かな分業となっている。家内工業で専門性を高めたことが優れた伝統技術を生み出した

しかし、今やどの工程の職人も後継者不足に直面しており、中でも傘の開閉部分を担う「ロクロ」と呼ばれる部品を作れるのが、全国でもここ岐阜の職人、ただ一人となってしまったのです。

傘の中心部分を支える二つのロクロ。頭ロクロと手元ロクロで傘の開閉ができるようになっている

もはや待ったなし…ロクロ職人は長屋一男さんただひとり

傘の大きさに合わせてロクロの大きさも様々。大きなロクロは野点傘用

「私が担当しているのは、傘の中心部となるロクロです。このロクロを全国に出荷できるのが、今ではこの岐阜だけになり、15年前には、ロクロを作る職人が私一人になりました。材料となるエゴノキは、すでに切り出す業者がいなくなり、ボランティアの方たちに協力をいただいて、1年間分のエゴノキを確保している状況です。400年以上にわたって続いてきた和傘の伝統産業ですが、本当にぎりぎりのところで作られているのです」と長屋さん。

岐阜県で採れるエゴノキは目が詰まっていて、傘の芯であるロクロに適している

生産量自体も激減し、厳しい状況が続いてますが、一度技術を失ってしまえば、二度とロクロを作ることができなくなってしまいます。それは、すなわち和傘を作ることができなくなるということ。その重みを長屋さんたち岐阜和傘の職人が必死で支えている現実に衝撃を受けました。

職人の技術はまずは機械の刃物の使い方から。エゴノキを削ってロクロを形成します

別の機械で芯の部分に穴を開け、1mm以下のスリット状に削っていきます。小さな部品に繊細な作業工程が続きます

和傘の場合、素材の竹を仕入れ、節をけずって、繰り込みを入れていきます。最後にカシューナッツから採れるカシュ―漆で仕上げるまでが長屋さんの作業

和傘は洋傘が骨8本なのに対し、30本以上の骨を使います。和紙を竹骨によって折りたたむようにするからです。濡れた傘の表面が外側になる洋傘とは逆に、内側に折り込まれるのが和傘の特徴です。人込みでも濡れた傘が、人にあたって迷惑になることがない。その心遣いも日本人ならではという気がします。一つひとつの工程に根付く作業の細やかさ、日本文化の奥深さを感じずにはいられません。。

右から傘の柄の部分、竹を細く割って作る子骨、親骨、柄に子骨と親骨を繰込んだ傘の本体

「持って歩くだけで絵になるのが和傘です。そして雨が降ったときの音。バラバラバラという雨音が傘の中に響く音の心地よさがあります。またさした時に内側から光を通して見る和紙の美しさと、いろいろな楽しみを味わえるのが和傘の魅力でもあるんです」と長屋さんも熱く語ってくれます。

和傘が作れなくなるということは、伊勢神宮ご遷宮の祭典傘を使った神事や歌舞伎や舞踊、野点の茶会といった日本の伝統文化にも大きな影響を与えます。便利さを追求し、自分たちにとって都合の良い生活は、気づけば、長年培ってきた伝統の灯を消すことにもつながっていたのです。この危機をどれだけの人が共有しているでしょうか。

新しい感性がバトンをつなぐ!

岐阜の和傘問屋の家系に生まれた河合幹子さん。蛇の目、番傘、日傘のほかに大傘の制作にも取り組んでいる

そんな中、ここ岐阜に新たな可能性を感じさせてくれる光が生まれました。子どもの頃から地元で和傘づくりを見ていた若い世代や和紙好きが高じて和傘職人に弟子入りした女性など、現在、3人の女性職人がそれぞれの個性を生かした和傘づくりに励んでいます。

もともと、家内工業で作られていた和傘は、内職の女性たちも含め、女性の作り手もたくさんいたのだそうです。その中の一人、自身で「仐日和」というブランドを立ちあげ、デザインや和紙の張り、仕上げを行っている河合幹子さんにお話しを伺いました。

「もともと私の母方の実家が和傘問屋で、祖母が和傘を作っていたんです。それをずっと身近で見ていたので、自分にとっては特別なものではなく、日常の生活の中に和傘が普通にありました。和傘職人さんも子どもの頃にはたくさんいらしたので、よくある職業の一つという感じだったんです。社会人になって、和傘問屋を経営する叔父から人手が足りないからちょっと手伝ってくれないかと誘われたことがきっかけとなり、この仕事を始めることになりました」

入って半年ぐらいで、張りの作業を教えてもらった河合さん。小さいころから見ていた工程だったので、すんなりと入っていくことができたのだとか。

タピオカでんぷん糊を骨に塗っていく。糊が乾かないように手際の良さが求められる

「和紙は平面で見るのと、実際に和傘に仕上げていくのとでは雰囲気が違うんです。その辺のギャップは、仕上げてみないとわからない。そこが難しく、緊張感があるけれど、やりがいだったり、面白さだったりにもつながっています。和紙の魅力や和傘の美しさを知っているからこそ、それをアレンジしながら、幅広い世代に興味を持ってもらえる和傘を作れたらと思っています」

やり直しがきかないため、一気に和紙を張っていく。緊張感の漂う作業だ

手とヘラで和紙を骨に密着させていく。一見華やかに見える和傘だが、一つひとつの作業は根気のいる作業の繰り返しだ

河合さんのデザインで人気の高い「月奴」。月の大きさや和紙の色柄で全く違った雰囲気になる

「イベントやライブに使用する特注の和傘の注文も入るのですが、特別な和傘づくりだけでなく、昔のように町の産業として残していけるようにしたい。保護しなければいけない伝統工芸ではなく、普通の産業であり、生業として、次世代が担っていけたら」と河合さんは語ってくれます。

クラウドファンディングで人を巻き込み、後継者育成を目指す

この危機的状況をなんとかしたいと、和傘問屋や職人がメンバーとなっている岐阜市和傘振興会や地元を活性化するNPO法人が協力して、クラウドファンディングで「ロクロと傘骨の技術後継者支援」の募集を開始。次世代育成に向けて、大きく動き出しました。

「和傘は確かに危機的な状況ではありますが、若手職人が作り出すデザイン性のある和傘などが注目を集め、『伝統に裏打ちされた本物が欲しい』と和傘の魅力が見直され始めています。一人ひとりが自分の価値観でモノを選ぶ時代。まだまだ和傘のニーズはあると思っています」とNPO法人「ORGAN」のプロデューサー蒲勇介さん。伝統に触れる体験イベントを主催したり、傘づくりのワークショップを開くなど、本物を手に取る、自分の目で見る機会を全国の人へ発信しています。

長良川流域にある伝統産業を次世代へ受け継いでいこうするNPO法人「ORGAN」のプロデューサーの蒲勇介さん

音に癒され、目で潤い、自然を肌で感じることのできる和傘は、小さな空間の中で、五感を刺激してくれる日本ならではの工芸品といえます。雨の多い日本だからこそ、季節を慈しみながら、和傘を大切にする心を育てる。岐阜和傘の取り組みは、忘れかけていた日本人の美的感性を取り戻させてくれるように思います。

岐阜和傘の職人たちが取り組んでいるクラウドファンディング
コチラをクリック


和傘CASA
営業時間:11:00~18:00
定休日: 火・水曜定休
電話:090-8335-9759
公式ホームページ

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