読んだらお米が食べたくなる。バーミキュラが挑んだ究極の炊飯器、開発ストーリー!

読んだらお米が食べたくなる。バーミキュラが挑んだ究極の炊飯器、開発ストーリー!

「最後の晩餐」。あなたなら何を食べますか。

私は、真っ白い炊き立てのふっくらごはんとお漬物。究極の「日本のごはん」です。

しかし、世の中は、どんどんお米離れが加速しています。農林水産省の調査では、平成27年の一人当たりの米の消費量は54.6kgと、最も多かった昭和37年(118.3kg)の半分となり、たった50年で半減してしまいました。平成23年には、1世帯当たりのパンの購入金額が、米の購入金額を初めて上回ったことが総務省の調査で分かりました。若い世代にいたっては、主食はパン、ラーメン、パスタ、ピザ、うどん…と、お米より小麦の摂取量の方が多いのでは?と思えるほどです。

では、なぜ、ごはん離れが加速してしまったのでしょう。一つには、ごはんを少量で炊くのが面倒というのがあります。核家族や独り暮らしが増え、余ったごはんの保存が手間だったり、さらには、時間が経ったごはんがおいしくないという意見もあります。

誰にでもおいしいご飯が炊け、冷めてもおいしい炊飯鍋

そんな中、密閉性の高い鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」を生み出し、「素材の味がおいしい」「簡単に美味しい調理ができる」と世間を轟かせた愛知ドビー株式会社が、2016年にこの技術を駆使して、新たに炊飯器を発売しました。「最高の調理器は最高の炊飯器でなければならない」とのコンセプトを元に、誰でも簡単においしいご飯が炊け、さらには冷めてもおいしいご飯となる炊飯鍋を開発したのです。その名も「バーミキュラ ライスポット」。発売と共に日本だけでなく、海外でも話題となっているこの商品の開発にかけた思いを、愛知ドビー株式会社の副社長である土方智晴さんに伺ってきました。

「ライスポット」の開発を担当した愛知ドビー株式会社副社長の土方智晴さん

火加減調節のいらない鍋は究極の炊飯器

-「バーミキュラ」の開発に苦労され、長い歳月をかけて、ようやく最高の鋳物ホーロー鍋と支持されるようになった時点で、また新たに開発を手掛けようと思われたのはどうしてですか?

土方:小さな町工場から「世界最高の鍋を作ろう!」と思って「バーミキュラ」を造り、日本ではかなりのシェアで受け入れられるようになりました。それで今度はいよいよ世界だ!と、パリとサンフランシスコでマーケティング調査を行ったんです。かなり多くの方が「今までのホーロー鍋と違う」と言ってくださったんですが、火加減がうまく調節できない方からは、「今までのホーロー鍋と何も変わらない」と言われてしまいました。1/100ミリの密閉性を追及し、無水調理をするために、3年もの歳月をかけて開発したんですが、他のホーロー鍋と変わらないと言われてしまうと、世界最高水準だと思って造っている職人たちにとっても、残念な結果となってしまう。それなら最高の火加減も一緒に提供できれば、他の鍋とは違うということがわかってもらえるんじゃないかと、また開発への思いが膨らんだんです。

愛知ドビーが「世界最高の鍋」という思いで、売り出した鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」。一時は最長15ケ月待ちになるほどの爆発的なヒットとなった

「世界最高の鍋」に続き「世界最高の炊飯器」として発売された「バーミキュラ ライスポット」

-それが炊飯器「ライスポット」へと繋がったのはどうしてですか。

土方:日本では「バーミキュラ」で火加減もうまくできて、おいしく作ってもらえていたので、日本でさらに受け入れられる調理器具は何か考えたんです。そんな時、「バーミキュラ」の鍋は野菜の味をおいしくしようと思って設計しているんですが、SNSで「ごはんがどんな高級炊飯器よりおいしく炊ける」という投稿が増えだしていて。ただ、ごはんをおいしく炊くには火加減調節が大切。昔から「はじめちょろちょろ、なかパッパ」という歌でごはんの炊き方を伝えていたけれど、それって人によって違うし、難しいじゃないですか。誰でも火加減調節なく、おいしいごはんが炊けるようになれば、もっと喜ばれるんじゃないかと思ったんです。

ごはん離れはおいしいごはんを知れば、変わります

―ごはん離れが進んでいますが、簡単においしいごはんが炊ければ、需要は広がると思われたんですね。

土方:実を言うと、僕自身もそんなにごはんが好きではなかったんです。炊飯器で炊いたご飯って、べちゃとしていておいしいと感じなかった。でも開発をスタートするにあたり、改めて世の中を見てみると、高級炊飯器が売れていて、中には15万円以上するものもある。ニーズはあるんだなと思い、あらゆる大手メーカーさんの炊飯器を購入して、試してみたんです。ガスで炊いた「バーミキュラ」の鍋のごはんと高級炊飯器のごはんの味がどう違うのか。社内でブラインドテストしてみたんですが、10対0で「バーミキュラ」で炊いたごはんがおいしいとなった。やはり日本で売り出すなら、最適な火加減がボタン一つでできる調理器具でなくてはならないと、炊飯器の開発がスタートしました。

―「バーミキュラ」の鍋で炊いたごはんがなぜおいしかったのでしょうか。

土方:まずは、炊きあがったときの香り。炊飯器はゴムパッキンや金属があるので、どうしてもごはんの香りに機械の臭いがついてしまう。それに対して、「バーミキュラ」の鍋は、ホーローにしか接しないので、ごはん本来の香りをダイレクトに感じられる。これを「ライスポット」で取り入れたらうまくいくんじゃないかと思ったんです。

―実際「ライスポット」を発売してからの評判はどうですか。

土方:まずは、社内のスタッフたちから感動の声があがりました。炊きあがった時のふっくらつやつや、お米の粒が本当に立ってる!と。購入してくれたお客様からも「今まで鍋で、柔らかく炊こうとするとべちゃべちゃしてしまうし、固く炊こうとすると芯が残ってしまう」などの悩みが「ライスポット」で解消されたと。バーミキュラでもそうなんですが、食べた瞬間が美味しいだけでなく、食べた後に余韻が残るような甘味を感じてもらいたかったんです。素材本来が持つ味わい。ワインなどもそうですが、余韻が続くような甘味があるのがライスポットの特徴です。海外の有名シェフが使ってくれたことで、人気に火がついて、海外でも「ライスポット」の需要が広がっています。

「鍋の下にリブをつけたり、対流がうまくいくように鍋自体に丸みを持たせたり、つまみをなくしたり。調理した後も臭いが残らないように、衛生的にも丸洗いできるようしました」と土方さん

―「ライスポット」は、鋳物ホーロー鍋と熱源がセットされたもの。炊飯器というより、かまどのイメージです。原理としては、簡単ですが、それを電気でスイッチ一つで炊けるようにするには、長きにわたる開発となったとか。一番苦労されたのはどんなことでしたか?

土方:なぜ自分が炊飯器のごはんが好きじゃないかを考えた時に、炊飯器の主要な機能がおいしく炊くことから、生活スタイルの変化で保温重視になっていることに気づいたんです。今の炊飯器は、何時間美味しく保温ができるかが注力されていている。鍋で炊くと、なぜおいしいかというと、直接火のあたる温度の高いところと蓋の部分の温度の低いところがあって、温度差が生まれることで鍋の中でスムーズな対流を生んで、ふっくらおいしいごはんになるんです。炊飯ジャーは、保温カバーがついているため、対流調節が難しいのだということがわかりました。

土方:そこからは、加熱構造をどうするかになるんですが、熱源を何にするか考えた時に、ガスの栓は少なくなっているので、やはりIHだろう。では、IHとガスで炊くとどちらがおいしいかといえば、やはりガスなんです。IHって磁力の力で、お鍋の底自体を加熱するので、周りの空気が温まらない。ガスは周りの空気も温めながら、全体が加熱できます。この差によって、対流がスムーズに起きるか起きないかが決まる。この直火の熱源を再現するところに到達するまでに時間がかかりました。結果、僕たちみたいな小さい会社ができるのは、お鍋を限定して、それに合う熱源を考え出すということ。どんな鍋でも美味しく炊けるというところでは勝負はできないが、逆にそれが評価してもらえたんです。

「密閉性」と「蒸気を逃がす」矛盾点をクリアしたことが開発の要に

―さらに特許を取るような開発技術があったと伺いました。それはどんな部分ですか?

土方:ご飯を炊くには、蒸気が抜ける吹き出し口が必要です。「ライスポット」で難しかったのは、「密閉性が高いと吹きこぼれる」「密閉性が高いから美味しくなる」という二つの矛盾する点を解決することでした。3年間、この開発をしている間は、蓋の試作を何度も繰り返しました。それを解決するために作ったのが、「フローティングリッド」という機能です。最初加熱したときには、しっかり密閉されるんですが、中の蒸気が高まってきて吹きこぼれそうになると、軽くした部分の蓋が少し浮いて余分な蒸気がスムーズに鍋の外に出るように設計しています。これで吹きこぼれと密閉性を両立させました。この「フローティングリッド」を新たに開発できたことが「ライスポット」が成功した決め手となり、特許も取りました。

最適な溝の深さを作るのに何十パターンも造ったそうです。それは0.01ミリの世界です。精密加工技術を得意とする愛知ドビー株式会社が力を発揮できた部分と言えます

―町工場として「鋳造」と「精密加工」を得意としてきた実家の稼業の生き残りが厳しくなってきた時、まずは総合商社にいたお兄さんの邦裕さんが稼業を継ぐことになったそうです。さらに大手自動車メーカーで経理を担当していた弟の智晴さんも転職します。そこにはどんな思いがあったのでしょうか。

土方:僕が子どもの頃、工場にも活気があり、職人さんたちに遊んでもらっていました。その頃はドビー機という繊維機械などを作っていたんですが、「このドビー機はすごいの?」と聞くと、「世界一だよ」と職人さんたちが笑顔で答えていた。それが大人になって、繊維産業が下火になり、下請け部品工場となって、職人さん自身が誇りを持てなくなっていた。鋳造メーカーだった時代の職人さんたちのイキイキとした笑顔を取り戻すにはどうしたらいいんだろうと考えた時に、自分たちで世界に発信できるモノづくりを始めないといけないんじゃないかと思ったんです。僕が入った時点で、社員は15人しかいなくて。全員が65歳以上で、技術を引き継ぐにはギリギリでした。兄が鋳造の職人になって、それから僕が精密加工の職人になったんです。まずは一番の職人にならなければ会社は動かせない。それが28歳の時です。

―町工場での再生は、日本にとっても大きな課題ですが、そこはどう乗り越えていけばよいと思われますか。

土方:僕たちはすべてを手作業ですることを良しとしているわけではないんです。伝統工芸品ではなく、工業製品を作っているので。ただ、本当につきつめた最高水準のものを作ろうとすると、職人の経験と勘は絶対に必要になる。ですから、これからは手仕事とテクノロジーを組み合わせることで、現代にマッチした工業製品ができていくと思っています。基本の部分は手作業になりますが、それを生かしながら、IoTも取り入れていく。精密加工にしても開発時は僕が全部手動の機械で削っていたんですけど、手加減とか伝わってくる振動とかを感じながら、その動きをプログラミングしていく。一番難しいところは、人間の手で造り、人の目で見なきゃいけないところは職人がしっかりチェックしていく。機械に変われるところは、機械に任せる。そうすることでより幅広い工業製品ができあがっていくと思っています。

最後に、土方さんおすすめの「ライスポット」で炊いたごはんの食べ方を伺ったところ、「究極の卵かけごはん」だそうです。「ライスポット」の低温調理機能を使って醤油麹を作り、炊き立てのごはんに卵の卵黄と醤油麹をかけて食べるのだとか。

この話を聞いた後、私の最後の晩餐が「卵かけごはん」に大きく傾いてしまったのは言うまでもありません。

バーミキュラ ビレッジの基本情報

店舗名:バーミキュラ フラッグシップショップ
住所:愛知県名古屋市中川区舟戸町2 運河沿い
営業時間:平日 10:00~19:00
     土日祝 9:00~19:00
電話番号:052-746-3330
定休日:水曜日
店舗名:バーミキュラ レストラン ザ ファウンダリー
住所:愛知県名古屋市中川区舟戸町4 運河沿い
営業時間:モーニング 8:30~10:30(L.O.10:00)、ランチ11:00~14:30(L.O.14:00)、
ディナー17:30~22:00(L.0.FOOD 21:00/DRINKS 21:30)
※日・月・火は21:00クローズ(L.O.FOOD 20:00/DRINKS 20:30)
電話番号:052-355-6800
定休日:水曜日

店舗名:バーミキュラ ポットメイドベーカリー
住所:愛知県名古屋市中川区舟戸町4 運河沿い
営業時間:10:00~18:00
電話番号:052-355-6801
定休日:水曜日
 
「最高のバーミキュラ体験」をテーマに、実際に料理体験ができたり、使い方を試せるスタジオエリアとバーミキュラで作る料理やパンを味わうことができるダインエリアからなる。中川運河沿いの雰囲気のある景観と共にメイド・イン・ジャパンが追求する本物志向のライフスタイルを提案してくれています。

バーミキュラ公式ホームページ

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