CATEGORY

最新号紹介

10,11月号2024.08.30発売

大人だけが知っている!「静寂の京都」

閉じる
Culture
2021.09.20

ああっ、そんな奥まで見せちゃうの…?縄文の女神3Dデータ化ものがたり【vol.1 データ取得編】

この記事を書いた人

埼玉県北本市、ここに一人のヴィーナスがいる。名前は「きたもっちゃん(仮)」。縄文時代からの長い長い眠りを経て、宮岡氷川神社前遺跡の発掘調査により再び日の光を浴びた土偶だ。眠りから目覚めた際は「姫、お待ち申しておりましたよ」そんな言葉とともにキスをされたとかされなかったとか。ともかく、さながら『眠れる森の美女』のように時を超え人々を魅了するきたもっちゃん(仮)の3Dデータ化計画が始まった。

宮岡氷川神社前遺跡から出土した土偶の「きたもっちゃん(仮)」 北本市教育委員会『きたもとの縄文世界』より

きたもっちゃん(仮)って何だよ? という方はまずはこちらを読もう!!

「あなたを3Dデータ化したい」全ては編集長の愛のささやきから始まった

「君のこと、もっとよく知りたいんだよね」

初めて会った人にそんなこと言われたら、ドキッとする。でも、きたもっちゃん(仮)は縄文の女神。そんなありふれた言葉、聞き飽きちゃったのよ。でも、この日出会った男、セバスチャン・高木(和樂web編集長)は違った。

「君のこともっとよく知りたいんだ。だから、3Dデータ化してもいい?」

初デートはサイ〇リヤ

3Dデータ……? 縄文生まれのきたもっちゃんは、そんな言葉聞いたこともなかった。でも、彼の真剣な眼差しはノーとは言わせない力をもっていた。

「別に、いいけど……」

こうしてきたもっちゃんはセバスチャン・高木と手をとり、3Dデータ化へ歩み出すのであった。

ドキドキ!初めての3Dプリンター

「なかなか予約の取れないお店があるんだけど、行こうか」

デートに誘われたのは、真夏の暑い日。縄文の女神・きたもっちゃん(仮)は、和樂webスタッフ・サッチー&北本とまこ、二人の従者に誘(いざな)われ、ある場所に向かっていた。

「大切な縄文の女神様を3Dデータ化してくれる企業、なかなか見つからなかったんですよ。苦労しました」 サッチーが言う。

左:とまこ 右:サッチー

何よ、お店ってレストランじゃないんじゃない。食事もなしにいきなり3Dデータ化なんて、セバスチャンのせっかち……。そんなことを考えながら到着したのは、埼玉県戸田市美女木にある三協ダイカスト(株)。きたもっちゃん(仮)を出迎えた男は、セバスチャンではなかった。

いきなりベッドに

中に入ると、男がきたもっちゃん(仮)を抱きかかえた。

「そーっと、大切に、大切に……」

なんてこと! いきなりベッドに寝かされてしまった。突然のことに、声も出ない。ただ、ずっと土に埋まっていたきたもっちゃん(仮)にとって、ふわふわでひんやり冷たい発泡スチロール(多分)の感触は心地良くもあった。

もう、このまま身を委ねるしかないのね——。きたもっちゃん(仮)はそっと目を閉じた。

3Dデータで丸裸に

きたもっちゃん(仮)は、くるくる回るベッドで回るがままになっていた。男とサッチー、そしてとまこは、じっとパソコンの画面を見る。3Dデータが映し出されたのだ。

「すごく、乳首がピンとしていますね」
サッチーが言う。

「ちょっと乳首だけ拡大してもらえます?」


なめらかな肌に、釘付けになる。

「あら、彼女、中に空洞があるわ」

体の奥の方までじっくり観察すると、内部にところどころ空洞ができていることがわかる

表面だけでなく内部のつくりまで明らかにできる最新技術に、サッチー&とまこは感激していた。縄文時代にタイムスリップし、仲間と一緒にヴィーナスを作っているかのような気持ちになる。

そんな体の深部まで丸裸にされてしまったきたもっちゃん(仮)。長時間くるくる回ったせいで頭がクラクラしている。サッチーととまこが、男に礼を言って帰っていった。

「ねぇ、セバスチャンはどこにいるの……?」

きたもっちゃん(仮)の全てを知りたいとささやき、埼玉県戸田市まで誘い出したセバスチャンは、腰痛のため自宅で寝ていたことを彼女は知らない。

~つづく~

解説~なぜ縄文土偶を3Dデータ化するのか~

意味の分からない記事を書いてしまいました。この話の背景を簡単に説明させてください。

埼玉県北本市で発掘されたきたもっちゃん(仮)は、縄文時代の土偶です。あまりにチャーミングなこの土偶、ただ保存しているだけなんてもったいない! ということで北本市と和樂webで話し合った結果、3Dデータ化することになりました。

なぜ3Dデータ化するかって? その驚きの理由は今後少しずつ明らかになっていきます。乞うご期待!!

協力:三協ダイカスト株式会社

書いた人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。