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2022.02.01

こまはもっと自由だ!傘やほうきだって回しちゃう「独楽の達人」に聞く、奥深~い魅力

この記事を書いた人

遠くへ出かけないで、家の近くで楽しく遊びたいなぁ。私の周りでは、こうした声をよく聞くようになりました。そんななか、ふと思い出したのが、こま遊び。その存在自体は知っている人も多いと思いますが、実際に回して遊んでいる人は少ないかもしれません。

何だか偉そうに書いていますが、かくいう私自身もそのひとり。よく行く公園でこまを上手に回している人の姿にあこがれて、こまに興味を持ち始めた昨今。ご縁があって、愛知県名古屋市港区にある「日本独楽(こま)博物館」(以下、「博物館」)を何度か訪れるうちに、その奥深さにすっかり魅了されてしまいました。

この記事では、博物館の館長である藤田由仁さん(以下「藤田さん」)へのインタビューをもとに、こま遊びの魅力についてお伝えしたいと思います。記事を読み終わる頃には、こまが回したくなっているかもしれませんよ!

こまの博物館があるなんてびっくり

「こまのおっちゃん」ってどんな人?「日本独楽博物館」はどんな場所?

子どもたちの前でこまを回す藤田さん。こまだけでなく、いろいろな昔の道具も登場する。

今回お話を伺った藤田さんは、愛称「こまのおっちゃん」と呼ばれ、たくさんの子どもたちから親しまれています。インタビューの冒頭から、こまへの熱い想いを語っていただきました。

私ね、生きていることが楽しくて楽しくてしょうがないんですよ。なぜって、前の時代の人たちから伝えてもらったことを次世代に伝えていきたいと思っているから。私が伝えたことのなかから、子どもたちが必要なものを選び取っていけばいい。やりたいことを、やってみる。成果ではなくて、やってみようという気持ちを大切にしてほしいなぁと思って。そう考えながら、こまを回しているんですよ。

こま好きな仲間と一緒に日本独楽博物館を運営しながら、さまざまな場所でこまの魅力を伝えています。特に1月は、幼稚園や保育園、行政などのイベントなどで引っ張りだこ。こまの技だけでなく、生き生きとした語り口にもぐいっと惹きつけられます。

幼稚園のとき、こまを手作りして回して遊んでいたことを思い出しました

日本独楽博物館とは


博物館のなかには、50年近くかけて収集した日本各地のこまや海外60数カ国のこまが計2万点ほど展示されています。こまだけでなく、江戸時代~現代までのおもちゃや子どもの生活用品も計2万点ほど。特に多いのが、昭和初期~昭和40年代のものです。見て楽しむだけでなく、希望があれば伝承遊びを教わることができます(入館料は無料)。
博物館の入り口付近にはこまやけん玉などを練習するスペースもあり、子どもたちと博物館のボランティアスタッフの方々が一緒になって、ワイワイと練習する姿が見られます。こまに興味のある子どもや親子だけでなく、海外からの訪問者も多いのだとか(博物館の連絡先など詳細は、記事の最後を参照してください)。

2万点!こまって日本だけじゃなかったんだ

こまの世界は自由自在!不要になったものも大活躍

こまと聞くと、おもちゃ屋さんに売られているような円盤系や円錐形の本体に軸が付いたものをイメージする人も多いでしょう。博物館に最初に来たときにまず驚いたのは、こまと一口に言ってもいろいろな形状のものがあるということ。博物館の奥のスペースには、藤田さんが40年近くかけて現地へ赴いて収集した国内外のこまが並んでいます。

インドのベーゴマ。インドにもベーゴマがあったなんて驚きですね。
40年かけて集めたこまコレクション…熱量がすごい

「伝承遊びはエコ遊び」牛乳パックや折り紙など身近なものも活用できる

こまは、着地して回るもののこと。藤田さんによれば「これでなくてはだめ」といった決まりは特にないのだとか。私が博物館を訪れたときは、こまのひもを使って傘やほうきなどを回す姿もありました。もし子どもが回していたらすぐに怒ってしまいそうですが(笑)。いろんなものをこまに見立てることで、柔軟な発想力が身に付きそうです。
昔から身近なものや不要になったものを上手に活用するのが、こまなど遊びの原点なのだとか。SNSなどでは牛乳パックや折り紙などを使ってこまを作る人も最近増えているようですが、どこか共通するものを感じます。

たしかに子どもの頃は、おままごと遊びなどで木の実を野菜に見立てたり、石を包丁に見立てたり、なんでも見立てて遊んでました(笑)

こまの発祥地はどこ?意外と知らないこまの歴史

さて、こまが最初に生まれた場所はどこだか知っていますか。こまの発祥地と聞くと、「(何となく)日本か中国なのでは?」という人もいるでしょう。でも実は、現存する最も古いこまはエジプトで発掘された「たたきごま」なのだそう。たたきごまは形を削って整えてつくるもので、紀元前2000~1400年頃に始まったとされています。
ちょっと思い出してみてください。日本では子どもの頃にどんぐりなどの木の実につまようじを指して「どんぐりこま」を作った経験のある人もいるかもしれません。沖縄などの島では貝やヒトデから、パプアニューギニアなど南の国ではヤシの実からこまを作ることもあります。「自然の産物を利用して回転するものをつくる」という意味でいえば、もっと古くから世界各地で自然発生していたのではないかと藤田さんは考えています。

丸い形状のものを見ると、人類は回したくなるのだろうか…

こまの技はなんと200~300種類!失敗から生まれた回し方も

こまの技はなんと200~300種類もあるのだとか。失敗に感じられるような状態から新しい回し方が生まれることも多くあります。たとえば、こまを回そうとしてコロコロと転がってしまったときの様子を「一輪車だ!」と名付けることも。「失敗した」と決めつけるのではなくて、そこから新しい遊びを見出していく。そうやってどんどん技が増えてきたんですよ、と藤田さんは語ります。

こまの技の名前「どしょうすくい」「綱渡り」って知ってる?


ではここで、こまの技をいくつかご紹介しましょう。定番の技としては、地面で回ったこまを指で跳ね上げて取る「どじょうすくい」や手から手へ、ひもの上を渡らせてこまを移動させる「綱渡り」などがあります。「ふんどしかつぎ」「日本一周」など、興味深い名前の付いた技もあります。技の様子は、博物館サイト内「こままわしの技」にて紹介されています。ぜひチェックしてみてください。

最新デザインのこま「ツバメ」「ハヤブサ」「ヒバリ」

藤田さんは、新しいこまの開発にも取り組んでいます。新世代のこまとして現在販売しているのは、「ツバメ」「ハヤブサ」「ヒバリ」(いずれも日本こままわし協会の認定こま)など。性能が良くて安価で丈夫なツバメは、保育園や幼稚園、児童館、イベント時などに最適です。金属のような硬さと耐性を持つ特殊なプラスチック「ポリアセタール(POM)」という素材を使用しています。

すごい!こんなに技があるんだ!こま=古いイメージがあったけれど、まだまだ進化しているみたい!


ハヤブサの特徴は、重量があるため周回する技がしやすいこと。リングや軸などの部品を組み合わせることで、好みの仕様にアレンもできます。ヒバリは、ハヤブサをベースにしたツバメよりも少し軽量のタイプで、回転すると光るものもあります。いろんな種類のこまを試してみるのも楽しそうですね。詳細は、博物館サイト内「新生代こま販売」をご覧ください。

失敗しても大丈夫。「やってみたい!」という気持ちを大切に

博物館にはこまを回すスペースがあり、私は訪れたときには数組の親子が練習していました。

できないと思っていた技ができるようになった時の子どもの様子はほんとうに嬉しそうで、自信が付くものなんです。こまは少しだけ努力しないとできない遊びだからこそ、達成したときの感動がある。でも、最初からできる人なんていない。だから「やってみよう」「やってみたい!」と思う気持ちを大切にしているんですよ。

保育園や幼稚園、イベントなどでこまを回すときには、どうしたらそんな気持ちになるかをよく考えているだとか。「あの人だからできるんだ」「別の世界の人」と思われないように、細かい部分への配慮を欠かしません。

イベントなどでこまを回していると時々失敗することもあるけど、そういう部分を見せると子ども達もほっとするんですよ。あの人も失敗するんだなぁって。私は技を見せるための「パフォーマー」ではない、という視点はいつも意識しています。

パフォーマーではない、藤田さんの言葉が突き刺さりました

子どもに教えてもらいながら、やり方を模索してきた

この場所に博物館を構えてから約17年になるのだとか。こまを伝える活動の始まりは藤田さんの出身である関西・芦屋であり、場所を4回変えてこちらにたどり着きました。珍しいこまを収集したり、新しい技を習得したりするなかで、そういった目新しさを優先的にアピールしていた時期もあったのだとか。いろんな葛藤を経て、現在のやり方に落ち着いたのだと語ってくれました。

自分が伝えたいことは何なのか。そう考えると、私が伝えたいのはこまの技そのものではなくて、その先にある、子どものやってみようという気持ちだなぁって。子どもたちに教えてもらいながらいろいろと模索して、ここまでやってきました。

伝えたいと思う気持ちがすごく伝わりました。わたしもこれから回してきます!

こま遊びが楽しくなってきたら「こままわし挑戦状」にトライ!

「こまにもっと親しんでもらいたい」という想いから、30年ほど前に始めたのが「こままわし挑戦状」。ひねりごまやもみごま、糸びきこまなどの11の技が全部できるようになると、免許皆伝書というものがもらえて、博物館に名前が飾られるというものです。たとえば、最初の「ひねりごまがまわせる」というのは、さかだちごまを回しひっくり返した状態で5秒以上キープすること。こんな技ができたら、とてもカッコイイですよね。まずはこの挑戦状を参考にしながら、こまを回してみるのもいいかもしれません。

博物館の壁面にはこままわし挑戦状とともに、免許皆伝書をもらった人の名前が連なっていた。

さらに極めたい人は「日本こままわし協会」や「こま技検定」もチェック

こまをさらに追及したくなったら、「日本こままわし協会(※1)」もチェックしてみましょう。この協会は、こままわしを全国に普及するために2002年9月に発足しており、藤田さんが会長を務めています。また「こま技検定(※2)」では、10級~1級と初段~6段が設定されており、それぞれの段階に合わせて検定を受けることができます。
※1 日本こままわし協会:http://yantya.yokochou.com/
※2 こま技検定:http://komamawashi.net/%e3%81%93%e3%81%be%e6%8a%80%e6%a4%9c%e5%ae%9a/

こまには到着点がないから面白い

最後に、和樂web読者に向けてメッセージをいただきました。

私はゲームをしたことがないからよくわからないけれど、ゲームにはおそらく到着点がある。でも、こまには到着点がない。失敗したところから新しい技が生まれるからね。そこが面白いと感じているし、子どもたちに伝えたいと思っている。失敗を恐れずに何でもやってみようという気持ちは、きっとどこかで役に立つんじゃないかなぁって。特に、未就学の子どもにはぜひ体験してもらいたい。親子で遊ぶのにもぴったりですよ。


こまという、知っているようで知らない奥深い世界。インタビューを終えると、ちょっと忘れていた大切なことを思い出したような気分になりました。こまを回してみようかな。そう思ったら、ぜひ始めてみませんか。

日本独楽博物館情報

公式サイト:http://www.wa.commufa.jp/~koma/
住所:愛知県名古屋市港区中之島通4-7-2
電話:052-661-3671
メール:komako*yk.commufa.jp (*を@に変えてお送りください)
※休館日は決まっていません。電話かメールで必ず確認してからご来館ください。

書いた人

バックパッカー時代に世界35カ国を旅したことがきっかけで、日本文化に関心を持つ。大学卒業後、まちづくりの仕事に10年以上関わるなかで食の大切さを再確認し、「養生キッチンふうど」を立ち上げる。現在は、風土食をのこす・つくる・伝える活動をしている。好奇心が旺盛だが、おっちょこちょい。主な資格は、国際薬膳師と登録ランドスケープアーキテクト(RLA)。https://www.kitchenfudo.com/