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Culture

2023.05.29

東洋の雰囲気を感じるファッションが好き。阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」vol.2

歌やダンス、俳優としても活躍中の阿部顕嵐(あべ あらん)さん。20代の阿部さんが、好きな日本文化を自由に語る、この連載。記事の雰囲気に合わせ、阿部さんに私服で来てもらい撮影を行った。今回はファッションについて話を伺う。

尚、聞き手はオフィスの給湯室で抹茶をたてる「給湯流茶道(きゅうとうりゅうさどう)」。「給湯流」と表記させていただく。

前回の記事はこちら
命のやり取りをする刀剣に惹かれる。阿部顕嵐が語る「あらん限りの歴史愛」vol.1

東洋の雰囲気を感じるファッションが好き

給湯流:今日の私服、素敵ですね。※シノワズリーですかね? 

阿部:日本文化を話す、ということでアジアンなテイストにしてみました。黒いアウターとブラウスは、『ヨージ』です。

給湯流:『Yohji Yamamoto』! とてもお似合いです。ブラウスはチャイナ服みたいな形ですね。ブラウスとアウターの間で重ね着されている花柄の服も素敵ですが、こちらは?

阿部:『ハイダー アッカーマン』です。

ここで、同席していた『和樂web』統括・鈴木が「え!」と声を出す。ファッション誌の担当が長かったもので、思わず興奮。鈴木が会話に乱入だ(笑)。

鈴木:『ハイダー』ですか、スーパーモードですよね。よくそんなところまで、行きつきましたね! 

阿部:よく行くセレクトショップのバイヤーさんが教えてくれて。ちょっと調べてみたら、格好良くてハマってしまいました。スタイリストさんなどに「ハイダーが好き」というと、「マニアックだね。」といわれることもあるのですが(笑)。

※シノワズリー:主に18世紀にヨーロッパで流行した中国風の装飾様式

徳川将軍がオランダ商人に渡した着物、ヨーロッパで大流行

『ハイダー アッカーマン』はベルギーのアントワープ王立美術アカデミー出身デザイナー。2023年は『ジャンポール ゴルチエ』のゲストデザイナーを担当している。

ヨーロッパのデザイナーが日本の着物に着想を得たと聞くと、珍しいと思われるかもしれない。しかし実は、ヨーロッパには17世紀から日本の着物が輸入され、人気を博した古い歴史があるのだ。

Buitenlandse schepen in de haven van Nagasaki/アムステルダム国立美術館

みなさんも日本史の授業で習った、江戸時代の長崎・出島。オランダ船が入港していた場所だ。ふだんオランダ商人は出島で働いたが、江戸にいくこともあったそうだ。

オランダ商人は江戸城に入ると献上品を贈呈。ワインやオランダ産の毛織物、ラクダ(!)などを差し出した。そのお礼に徳川綱吉が衣服を渡したという※記録が残っている。もともとは皇室が臣下に季節ごとに衣服を贈るしきたりがあり、江戸幕府もそれにのっとった。

※オランダ商館付医員として江戸に2回訪れたE・ケンペルが書いた『日本誌』などに記録がある。

フェルメールの絵にも登場! オランダ男性のおしゃれ室内着になった「将軍のガウン」

徳川将軍が贈った衣服とは、豪華な刺繍が入り絹の綿が入った着物だったようだ。オランダ商人が持ち帰ると、軽くて暖かく、きれいな模様が入った着物は本国で「将軍のガウン」とも呼ばれ大人気に。特に富裕層のオランダ人男性が、自宅で着る高級な室内着として好んだ。

Japonsche rock(1700年~1750年頃)/アムステルダム国立美術館

日本でもファンが多いオランダの画家、フェルメール。彼が活躍したのは江戸時代・前期だった。そのころのオランダは長崎をはじめ、世界中で貿易を行い栄華を極めた黄金時代。莫大な利益を得たのは富裕層の市民階級だった。王室や貴族が権力をもったほかのヨーロッパ諸国と違い、市民社会がいち早く発達したオランダ。王室が好みそうな歴史画や宗教画よりも、日常の生活風景が描かれた風俗画が裕福な市民に好まれた。

そんな市民のためにフェルメールが描いたのが、普段の生活の中で牛乳をそそぐ女性だったというわけだ。フェルメールといえば「牛乳を注ぐ女」「真珠の耳飾りの少女」が有名。だがしかし、日本の着物を着た男性の絵もあるのだ。

天文学者(フェルメールの模写)/Abraham Delfos(1794年)/アムステルダム国立美術館

フェルメールが1660年代に描いた「天文学者」は、男性が青いガウンのようなものを羽織っている。これは当時オランダで流行った無地の着物だ。日本の着物にある袂(たもと)がついた袖が見える。

日本の着物がヨーロッパで流行った時代から何百年もたった今、『ハイダー』が着物をベースにデザインしたものを阿部さんが着る……感慨深い!

一度きりの人生、なんでも体験してみないと満足できない

鈴木:『ハイダー アッカーマン』といえば数あるモードブランドの中でも、特に尖ったデザイナーですが……。

阿部:『ハイダー』のなかには日本風のデザインがいくつかあって、そういうものが好きです。

鈴木:どのように入手されたのですか?

阿部:日本に今は店舗がないので、一生懸命ネットで探して買いました。日本の着物の生地をつかったデザインのようで、一目見て欲しいと思いまして。シワの風合いも好きです。

鈴木:帽子は? フエルト素材ですね。

阿部:こちらも『ヨージ』です。ツバが長いものが好きですね。ボトムスは『イッセイ ミヤケ』の袴パンツです。

鈴木:今の若者は物欲がないとよく言われますよね。でも、阿部さんはとことん好きなものを探すタイプ。日本で未発売のものを買うのもすごいです。

阿部:ありがとうございます。一度きりの人生だから、なんでも体験してみないと満足できないと常に思っていますね。 

給湯流:素晴らしいです! 次の回では、阿部さんに新たな体験をしていただこうと思います。またよろしくお願いします。

インタビュー・本文/給湯流茶道  写真/篠原宏明  スタイリング/阿部顕嵐(私物) 撮影協力/永青文庫 参考文献/深井晃子 『きものとジャポニスム: 西洋の眼が見た日本の美意識』

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阿部顕嵐

阿部顕嵐 (あべ あらん) https://alanabe.com/ 1997年8月30日生まれ、東京都出身。 俳優としての活動を中心に、映画、ドラマ、舞台と幅広い作品に参加。 主演映画「ツーアウトフルベース」、主演ドラマ「さよならハイスクール」や、舞台作品『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage等の作品に多数出演。 今年4月にはPARCO劇場開場50周年記念シリーズ『ラビット・ホール』へ出演。 また、「7ORDER」のボーカルとしての音楽活動や、自身のオリジナル映像やグッズの企画プロデュースなど、活動は多岐にわたる。
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和樂web編集部

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