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Culture

2023.07.24

8/5開催! 雅楽界のレジェンド・芝祐靖氏の音楽を日本有数の能舞台で堪能【横浜能楽堂】

築150年を超える能舞台を持つ横浜能楽堂では、2023年8月5日、「開館28年謝恩 横浜能楽堂『中締め』特別公演」第1回として、「芝祐靖の遺産」と題した公演を行います。

雅楽界のレジェンド・芝祐靖氏

芝祐靖(しばすけやす)氏は、日本の伝統音楽である「雅楽」の演奏家。800年余り続く「伶人(れいじん)」の家系に生まれた氏は、1984年まで宮内庁楽師を務め、宮中はもとより海外でも古典雅楽の演奏を多く行う一方、現代雅楽や現代邦楽の作曲・演奏も精力的に行い、2011年に文化功労者、17年に文化勲章を受章しました。

(雅楽について詳しくはこちらをどうぞ世界最古のオーケストラは日本にあった!ONE TEAMで奏でる「雅楽」の魅力

2019年に83歳で亡くなるまで、雅楽の伝承・普及に第一線で尽くし続けた芝氏は、雅楽界に巨大な功績を残しました。その功績は推挙にいとまがありませんが、中でも、すでに廃絶してしまった楽曲の復興・復曲を多く手がけたことが挙げられます。

今回横浜能楽堂では、芝氏の代表作から2曲を上演。さらに、世界的に活躍するダンサー・振付家の中村恩恵氏の振付により、古代の復元楽器とコンテンポラリーダンスとの「初コラボ」も行われます。
演奏は、芝氏が生前立ち上げた雅楽演奏団体「伶楽舎(れいがくしゃ)」によるもの。民間の雅楽演奏団体として指折りの演奏技術を有するメンバーから成る演奏は、雅楽界の「レジェンド」とも言える氏の技術や哲学を継承するものとして、人気を博しています。

正倉院御物がかつて奏でていた音色を

今回演奏される2曲のうちの一つ、「敦煌(とんこう)琵琶譜による音楽」は、中国の唐代末~五代頃(10世紀頃)のものとされる「琵琶譜」が元となっています。約100年前に中国・敦煌で発見され、当時は解読不可能といわれていましたが、現代の雅楽の伝承を手掛かりに、芝祐靖氏が1986年~1996年にかけて復曲しました。

この作品は、パンパイプの形状をした「排簫(はいしょう)」や、竪型のハープの「箜篌(くご)」など、現代では伝承されていない古代の楽器のアンサンブルで演奏されます。これらはすべて、正倉院御物をもとにして復元されたもの。十数種類の珍しい楽器が揃う舞台は壮観ながらも、どこか懐かしく柔らかい音色が魅力です。

▼古代の復元楽器について解説する芝祐靖氏

琵琶について詳しくはこちらをどうぞ→琵琶法師とはどんな人?平家物語・耳なし芳一との関係は?3分で解説

コンテンポラリーダンスとの初共演

今回の公演の魅力は、珍しい楽器の出演だけではありません。コンテンポラリーダンスとの初のコラボレーションにも、注目が集まっています。

振り付けは、世界的に活躍するダンサー・振付家の中村恩恵氏によるもの。中村氏が「敦煌琵琶譜による音楽」に初めて振付し、気鋭の振付家・ダンサーの宝満直也とともに、復元正倉院楽器が並ぶ能舞台の空間に登場します。古代の息吹に、コンテンポラリーな感性が交わる、一期一会の舞台は必見です。

横浜能楽堂でのダンスリハーサルの様子(左:中村恩恵氏 右:宝満直也氏)

こちらもどうぞ→歌舞伎と能と文楽の違いは?歴史・演目・舞台装置で解説

日本最高峰の雅楽演奏とともに

今回の公演で演奏予定のもう1曲は、雅楽組曲「呼韓邪單于(こかんやぜんう)」。前漢の時代の中国、匈奴の王・呼韓邪單于に嫁いだ美女・王昭君の悲話をもとに、歌曲付きの古典雅楽様式で作曲された作品で、伶楽舎の委嘱で1999年に芝氏が作曲しました。

「古典雅楽が失ってしまった詩情、色彩感、エネルギーなどの表現を取り戻す」(CD「呼韓邪單于」ブックレットより)試みとして作曲された意欲作であり、氏の代表作の一つ。歌い手には、芝氏が初演時に指名した、山田流箏曲の下野戸亜弓氏を迎えます。

古典雅楽だけでなく、武満徹の雅楽曲「秋庭歌一具」など現代作品の演奏などでも評価の高い伶楽舎による、みずみずしい雅楽の調べが堪能できるでしょう。

歌い手として迎える山田流箏曲の下野戸亜弓氏

上演されるのは、築150年余の歴史ある能舞台

会場となる横浜能楽堂の本舞台は、築150年余となる能舞台を移築・復原したもの。関東地方現存最古の能舞台で、横浜市の有形文化財にも指定されています。関東大震災や戦災をくぐり抜けて残った数少ない能舞台のひとつで、数々の名人が舞った舞台には、独特のたたずまいと存在感があります。

能舞台は、能・狂言を専用に演じるために長い年月をかけて洗練され、様式化された舞台であり、能・狂言以外の芸能に使われることはあまりありません。そうした意味でも、今回限りのコラボレーションや組み合わせをじっくり鑑賞できる今公演は見逃せません。

今回の公演は、横浜能楽堂が大規模改修のため長期休館に入る前のシリーズ企画の第1弾。全5回にわたって、能楽だけでなく、琉球芸能、日本舞踊、声明など、様々な古典芸能の魅力が堪能できる、他ではなかなか観られない企画が目白押し。長期休館に入る前に、ぜひ一度足をお運びください。

公演詳細

[公演名] 開館28年謝恩 横浜能楽堂「中締め」特別公演 第1回「芝祐靖の遺産」
[会 場] 横浜能楽堂 本舞台
[開催日] 令和5年8月5日(土)午後2時開演(午後1時開場)
[演 目]
古典雅楽様式による雅楽組曲「呼韓邪單于」-王昭君悲話-
演奏:伶楽舎 歌:下野戸亜弓
復元正倉院楽器のための「敦煌琵琶譜による音楽」
演奏:伶楽舎 ダンス:中村恩恵・宝満直也  
[入場料] S席5,000円 A席4,000円 B席3,000円 
[問合せ] 横浜能楽堂 電話 045-263-3055
*公演詳細はこちら https://yokohama-nohgakudou.org/schedule/?p=5164
主催:横浜能楽堂(公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団)

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和樂web編集部

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