Culture

2026.10.05

【伊勢神宮の歴史】二千年の祈りに触れる旅へ

ふたつの正宮、125の宮社からなる聖域

三重県伊勢市の緑深い森に鎮座する伊勢神宮は、皇室の御祖神(みおやがみ)である天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀り、日本の神社のなかでも特別な存在とされます。正式には地名を冠さず、ただ「神宮」とだけ呼ばれます。天照大御神を祀る「皇大神宮(内宮)」と、衣食住や産業を守る豊受大御神(とようけのおおみかみ)を祀る「豊受大神宮(外宮)」、ふたつの正宮を中心に、周辺の別宮・摂社・末社などをあわせた125の宮社からなる、壮大な神々の聖域です。

内宮と外宮——倭姫命が見出した五十鈴川のほとり

創建は約2000年前、第11代・垂仁天皇の御代にさかのぼるといいます。『日本書紀』によれば、皇女・倭姫命は天照大御神を祀るにふさわしい地を求め、大和から近江、美濃へと諸国を巡り歩いた末、ついに五十鈴川のほとりに広がる伊勢の地へとたどり着きました。清らかな水と豊かな山野に抱かれたこの地こそ、神が永く鎮まるべき場所だったのでしょう。

こうした成り立ちを持つ内宮に対し、外宮は、天照大御神の御饌都神(みけつかみ)である豊受大御神を祀り、雄略天皇の御代に丹波国から伊勢へ迎えられたと伝わります。神宮の祭典では内宮に先立って祭祀が行われます。

1300年受け継がれる「式年遷宮」と常若の思想

伊勢神宮の物語を語るうえで欠かせないのが、「式年遷宮(しきねんせんぐう)」という営みです。20年に一度、内宮・外宮の正殿をはじめとする社殿などを造り替え、御装束神宝とともに御神体を遷す──この一大儀式は、飛鳥時代の天武天皇が構想し、持統天皇4年(690年)に第1回が斎行されて以来、戦乱による中断を乗り越えながら1300年以上にわたり受け継がれてきました。木造建築でありながら、常に瑞々しい姿を保ち続けるこの仕組みは、日本人が古来育んできた「常若(とこわか)」──絶えず生まれ変わることで永遠性を獲得するという独自の美意識──を今に伝えています。

直近の第62回式年遷宮は2013年に執り行われ、次回は2033年に予定されています。今この瞬間も、遷宮に向けた御用材の調達や職人の技の継承が静かに進められているのです。

庶民を熱狂させた「お伊勢参り」

歴史を通じて、伊勢神宮は朝廷や武家から篤く崇敬されてきましたが、江戸時代に入ると、その信仰は庶民の間へと大きく広がっていきます。「一生に一度はお伊勢参り」という言葉のとおり、全国から人々が街道を徒歩でひたすら伊勢を目指しました。なかでも数百万人規模の民衆が示し合わせたように一斉に伊勢へ押し寄せた「おかげ参り」は、日本史上まれに見る、自発的な民衆巡礼のうねりとして知られています。

二千年の祈りに触れる旅へ

現在も伊勢神宮には年間700万人以上が訪れ、多くの人々を惹きつけ続けています。内宮の宇治橋を渡り、五十鈴川のせせらぎに耳を澄ませながら、杉の巨木が並ぶ参道を進むひととき──それは、二千年の歳月をかけて受け継がれてきた自然崇拝と再生の精神に、静かに触れる時間です。海外から訪れる旅人にとっても、特別な体験となることでしょう。

伊勢神宮 概要

所在地

内宮:三重県伊勢市宇治館町1番地
外宮:三重県伊勢市豊川町279番地

参拝時間:日の出・日没にあわせて月ごとに変動(目安:早朝5時台〜夕方18時前後)
拝観料:無料
問い合わせ:神宮司庁 0596-24-1111

アクセス

外宮へ
JR参宮線・近鉄山田線「伊勢市駅」下車、徒歩約5分。改札を出れば、老舗の和菓子屋や料亭が軒を連ねる外宮参道がまっすぐに神域へと誘ってくれます。近鉄「宇治山田駅」からも徒歩圏内です。

内宮へ
伊勢市駅・宇治山田駅から三重交通バスで約15分、「内宮前」下車すぐ。外宮と内宮の間には巡回バスも運行しており、両宮を無理なく巡ることができます。車の場合は伊勢自動車道・伊勢西ICから約5分。

参考:伊勢神宮公式サイト(https://www.isejingu.or.jp/about/)
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和樂web編集部


画像出典:和樂web編集部、Unsplash
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