Culture
2020.04.17

もしかして相思相愛?デンマークと日本がこんなに似てるなんて!

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遠く離れた異国の地・デンマーク。シンプルで可愛いデザインや「揺り籠から墓場まで」と称される福祉の充実ぶり、無料で高水準の教育などで知られていますが、まだまだ日本ではマイナーな国です。とはいえ、実は歴史的にも文化的にもデンマークと日本には実はたくさんの共通点があるんです! そんなデンマークと日本の関係について、現地での就学・在住経験をもち、現在デンマーク人パートナーと日本で暮らす私がご紹介します。

デンマークの首都・コペンハーゲンの観光スポット「ニューハウン」

古き良き君主国家

デンマークは日本と同じく古くからの伝統をうけつぐ君主国家で、デンマーク女王は実質的な権力を持たないというのも日本の天皇制と同じです。名目上の国家元首を有する国はいくつかあるのですが、デンマークと日本の共通点はその歴史の長さです。デンマークの王室はヨーロッパ最古でなんと1000年以上の歴史を誇ります。一方、日本の皇室はその歴史を紀元前660年に遡ります。世界に数ある君主国の中でもこの長い歴史は世界最古なのです。

日本人は皇室のニュースをなんとなく聞いていることもあるかもしれませんが、それでもどこかで天皇陛下を慕う気持ちがある方は多いのではないのでしょうか。2019年は天皇がご存命のうちに元号が変わり、祝賀ムードとなりましたね。昔のように天皇に権力があるわけではありませんが、今でも日本人の生活は皇室と切っても切れない関係にあるのです。

デンマークでも、女王のマルグレーテ2世は老若男女から愛されています。「王室が好きだ!」とまでいう方は少ないかもしれませんが、年末には女王のスピーチを見ながら年を越すなど王室及び女王の存在は自然に生活の一部となっています。ちなみに、デンマークの王室及び国家のシンボルであるマーガレットの花はアクセサリーのモチーフとしても人気で、デンマーク人女性のほとんどがマーガレットモチーフのアクセサリーを一つは持っていると言っても過言ではありません。

出る杭は打たれる!「Janteloven(ヤンテ・ロウ)」

日本人は目立つことを嫌い、控えめで大人しい。いい意味でも悪い意味でも国内外からそのような評価をされることが多いようです。「和」の心を大切にする日本では、周囲に溶け込むことが重視されていて異質な行動はあまり好まれません。和の精神は互いに思いやり、平和で安全な社会を築いていく上で大切な要素である一方、それぞれの個性やチャレンジ精神を潰してしまうこともあるのが難点です。

異質な行動が好まれないのは、人間である以上どの国でもある程度共通していることですが、「空気を読む」という暗黙の了解のルールは日本独特のものでしょう。一方、デンマークでも「Janteloven(ヤンテ・ロウ)」という以下のような考え方があります。

1.”Du skal ikke tro, du er noget.(自分を特別だと思うな)”
2.”Du skal ikke tro, at du er lige så meget som os.(自分が私たちと同等だと思うな)”
3.”Du skal ikke tro, at du er klogere end os.(自分が私たちより賢いと思うな)”
4.”Du skal ikke bilde dig ind, at du er bedre end os.(自分が私たちより優れていると思い上がるな)”
5.”Du skal ikke tro, at du ved mere end os.(自分が私たちより多くを知っていると思うな)”
6.”Du skal ikke tro, at du er mere end os.(自分が私たちより重要であると思うな)”
7.”Du skal ikke tro, at du dur til noget.(自分が何かに秀でていると思うな)”
8.”Du skal ikke le ad os.(私たちを笑うな)”
9.”Du skal ikke tro, at nogen bryder sig om dig.(自分が誰かに好かれていると思うな)”
10.”Du skal ikke tro, at du kan lære os noget.(自分が私たちに教えられることがあると思うな)”

ヤンテ・ロウの十カ条は作家のアクセル・サンデモーセ氏が1933年に実話小説「En flygtning krydser sit spor(逃亡者は痕跡を交える)」の中で提唱したものです。ヤンテ・ロウのちょっと卑屈にも聞こえる教えは、今でもデンマーク人の精神に深く根付いています。

お酒の場では盛り上がるデンマーク人ですが、普段は大人しく控えめ。留学生がそんなデンマーク人の二面性を指摘することもしばしば。そんなちょっぴりシャイな国民性は日本人に通じるところがあるのではないでしょうか。また、デンマークが福祉国家であるというのも、人より抜きん出ることたしなめるヤンテ・ロウの精神が関係しているのかもしれません。

そう聞くと、「あれ、欧米って個人主義じゃなかったの?」と思いますよね。実は、個人主義と言われるデンマーク人ですが、集団主義な側面もかなりあるのです。欧米の個人主義と一口に言っても、それぞれの国で状況は違っています。デンマークでの個人主義は、集団主義の中に成り立っているもので、日本でよく話題にのぼる個人の考えを最も重視するアメリカ式の個人主義ではありません。

例えば、デンマークではディスカッションが多く、個人の意見やアイデアが求められる機会はたくさんあります。しかし、デンマークでのディスカッションはあくまで話し合い。アメリカのディベートのようなものではありません。みんなで仲良く話し合って結論を出すというのが本質にあるのです。

お花大好き

デンマーク人はお花が大好きです。機会があればお花をプレゼント、広いお庭でガーデニング、そして部屋にも花を一輪。そうやってお花に囲まれた生活を送っています。冬が長く、曇りや雨の多い、天候に恵まれないデンマークだからこそ、人々は暖かい春を彩る花々に惹かれるのかもしれません。

一方で、日本人はどうでしょう?広い庭のあるお家が少ない日本では「お花を楽しむと言っても卒業式のブーケどまりだ」と思う方も多いかもしれません。しかし、日本では毎年のように春になると桜の開花予測が大々的に報道され、老若男女がお花見を楽しみ、秋になると美しい紅葉を求めて全国の名所に人が集まります。

日本の伝統文化にも華道や盆栽がありますし、茶道でも茶室に季節のお花を飾ります。俳句や和歌にも四季の花々は欠かせません。ひな祭りには桃の花、梅雨には紫陽花、お彼岸には彼岸花、など日本の一年もお花と一緒に流れています。また、自宅に仏壇がある方は、生花を供える方も多いのではないでしょうか?

ちなみに、日本の皇室のシンボルといえば菊花ですが、皇室の方々はそれぞれの持ち物に目印として「お印」を用いていて、その多くが樹木や花をモチーフにしたものです。

ミニマルリズム×わびさび

日本で北欧ブームと言われるようになったのは、デザインの影響が大きいのではないでしょうか。無駄を削ぎ落としたシンプルで機能性の高いデンマークのデザインは、日本でも高い評価を受けています。日本でデンマークのデザインが人気を得たのは決して偶然ではありません。

実は、明治維新の直後からデンマークは日本のアートの影響をかなり受けているのです。明治維新以前からデンマークは遠い異国であった日本に興味を持っていたものの、鎖国時代の日本とは交流ができずオランダ商人から日本の芸術品を手に入れていました。やっと国交が成立した1867年からは、日本のアートをデンマーク流に消化し発展させていったのです。

デンマークを代表するデザイナーの中には、日本の工芸品や建築などに影響を受けた方もたくさんいます。日本でデンマークのデザインが評価されるのと同様に、デンマークでもまた日本の職人技術が生み出した洗練されたデザインは昔から評価され続けているのです。

日本のデザインとデンマークのデザインには、「素材を大切にしたシンプルなデザイン」という共通点があります。華美に飾るのではなく控えめでナチュラルな色。また、「長く使える」という点も共通しています。日本では、昔から金継ぎなどの修復技術が発達していて、長持ちするものに価値を見出しています。一方、デンマークでも、シンプルで長く使えるデザインが好まれていて、デンマークでトレンドを生み出すのは難しいとも言われるほどです。

無駄を省くデンマークのミニマリズム精神と華美を好まない日本のわびさび精神は、似た者同士でお互いに惹かれあう相思相愛の関係です。最近では、日本と北欧のデザインを掛け合わせた「ジャパンディ」といったスタイルも生み出されています。これからも日本とデンマークのデザイン産業の発展に期待です!

でもやっぱりちょっぴり違う?

デンマーク人と日本人が似ている。そうはいっても、異なる文化で生まれたからには違いもたくさんあるものです。集団も大切にするデンマーク人ですが、やはり日本に比べると「個」の主張は強いです。

親と同居していると学生時代にもらえる給付金の額が下がるという理由で、早くから一人暮らしをはじめます。そのためか、自分は自分、親は親という考えが強く、親の老後も面倒を見るという感覚は日本に比べると良くも悪くも希薄です。また、離婚率も高く、旦那と元妻、子供、そして旦那の今の彼女が一緒にご飯を食べるなんて日本人から見ると複雑な光景も当たり前のようによく見られます。

デザインの面でも、日本では職人文化が今でも根強く継承されていますが、デンマークでは残念ながらあまり残っていないのが現状です。また、向上心を大切にする日本人に対して、現状に満足し幸福を見出すのがデンマーク人。家庭や自分の時間が一番大切なデンマーク人には「身を粉にして働く」なんて考えはありません。

福祉が充実しているといっても、税金は高額で普通のサラリーマンでも所得の半分が徴収されているデンマークでは、頑張ってお金を稼ぐという概念があまり浸透していないのかもしれません。一方、日本人は働きすぎとも言われるほど頑張り屋さん気質ですよね。職人文化が今でも存続しているのは、そんな頑張り屋さんな方々のおかげとも言えます。


似ているところも違うところもあるけれど、明治維新後長い国交の歴史を仲良く築いてきたデンマークと日本。謙虚で大人しい両国は、お互いのいいところを認め合い、学び合える最高のパートナーなのかもしれません。

書いた人

生粋の神戸っ子。デンマークの「ヒュッゲ」に惚れ込み、オーフス大学で修士号取得。海外生活を通して、英語・デンマーク語を操るトリリンガルになるも、回り回って日本の魅力を再発見。多数の媒体で訪日観光ガイドとして奮闘する中、個人でも「Nippondering」を開設。若者ながら若者の「洋」への憧れ「和」離れを勝手に危惧。最近は、歳時記に沿った生活を密かに楽しむ。   Born and raised in Kobe. Fell in love with Danish “hygge (coziness)” and took a master’s degree at Aarhus University. Enjoyed the time abroad, juggling with Danish and English. But ended up rediscovering the fascination of Japan. While struggling as a tour guide for several agencies, personally opened “Nippondering” that offers personalized tours with a concept of “When in Rome, do as the Romans do”.