うちの猫も化けるかしら? 日本の妖怪「猫又」その正体を解説

うちの猫も化けるかしら? 日本の妖怪「猫又」その正体を解説

目次

化け猫や猫又、古くから日本に伝わる猫(ねこ)の妖怪について、代表的な伝承や猫又の描かれた作品と共に解説します。

猫又(ねこまた)とは何か?

日本各地にある伝承や民話、怪談に登場する猫の妖怪です。猫又の物語は、大きく2つに分類されます。1つ目が、ペットとして暮らしていた猫が化けたもの。2つ目が山に住む猫の化けたもの。描かれる姿は地域や書物ごとに異なりますが、尻尾が2つに分かれている姿が特に多く見られます。長生きした猫がやがて猫又に化けると伝えられていますが、これは日本だけでなく、中国でも言い伝えとして多く残っています。

化け猫との違いは?

化け猫の定義は、猫が化けたもので、猫又との明確な区別はなく、その差は非常にあいまいです。化け猫の1種が猫又であるという解釈もあります。


歌川国芳 「見立東海道五拾三次岡部 猫石の由来」 大判錦絵三枚続 Museum of Fine Arts, Boston

なぜ猫は化けるのか?

犬の妖怪に比べて、猫の妖怪のほうが数多く存在するのはなぜか? 理由はいくつかありますが、夜行性で目が光ることや瞳(虹彩)のかたちが変わること、爪の鋭さなど身体的な特徴や習性にミステリアスな部分が多いことから、妖怪のモチーフとして多く扱われてきたと考えられています。


中国には「白い猫のほうが化けやすい」という言い伝えも。うちの猫もいつか化けるのだろうか…?

各地に伝わる猫又と化け猫の伝説

猫又伝説「黒部峡谷の猫又山」

越中国(富山県)の黒部峡谷に出現したと伝えられている猫又は、もともと富士山に住む老いた猫でした。老猫は狩で他の獣とともに駆り出されたとき、軍兵を食い殺して逃げ回った末、富士山から追放されてしまいます。その後、老猫は猫又となり、黒部に移り住み盛んに人を殺しては村人を怖がらせていました。やがて大勢の狩人によって猫又は発見されますが、その恐ろしい形相に狩人たちは立ちすくみ誰一人として捕らえられず、そのまま猫又は山から立ち去ってしまいました。それから村は平穏になり、猫又のいた山を「猫又山」と呼ぶようになりました。


標高2,378m。富山県魚津市と黒部市の間にある山岳群の1つである「猫又山」

ちなみに、谷川健一さんの著書「続日本の地名」によると、この伝承は単なる伝承ではなく、実在の巨大な猫がいて人をしばしばおそうことがあったと書かれています。

化け猫伝説「鍋島騒動」

江戸時代の御家騒動の一つに化け猫伝説が残っています。肥前国佐賀藩の2代目藩主である鍋島光茂の碁の相手を務めていた家臣が、光茂の機嫌を損ねたために斬殺されてしましました。家臣の母も飼っていた猫に、その悲しみを語って自害。母の血をなめた猫が化け猫となり、城内に入り込んでは毎晩のように光茂を苦しめます。最後は、光茂の忠臣が化け猫を退治し、鍋島家を救うという伝説です。この伝説は、後に歌舞伎狂言で「花嵯峨猫魔稗史(はなのさがねこまたぞうし)」として描かれたほか実録本や講談でも描かれています。

猫又・化け猫の仲間? そのほかの猫の妖怪

猫の妖怪に関する伝承は、猫又のみならず様々な逸話が残っています。

猫憑(ねこつき)

伊予国(愛媛県)に弥八という男がいて、飼っていた猫を殺してしまいました。弥八はその後、精神に異常があらわれ財産も何もかも人に奪われてしまいます。
「猫が取り憑いた」と言いながらふらふらさまよい歩くようになってから、この付近の人々は「猫を殺すと弥八さんのようになる」と教訓のようになったんだそう。
同じように山口県では死んだ猫の傍を通ると猫神が取り憑くと言われ、佐賀県では猫の魂は死人に乗り移るという言い伝えがあります。

山猫(やまねこ)

ある男が石州(島根県)へ向かう峠の途中、夜になる前に急いで山を抜けようと歩いていると、一匹の狼が現れて衣の裾をくわえられて動けなくなってしまいました。しかたなく立ち止まっていると、前方が妙に明るくなってきます。松明の光だろうか?と目を凝らして見てみると、それは山猫の行列でした。幽霊のような、なんとも異様な行列にゾッとして立ちすくむ男。狼がひきとめていなければ、あの山猫の大軍に襲われていただろうと男はほっとしました。狼は、おそらく山の守り神だったのでしょう。

浮世絵や絵巻に描かれた猫の妖怪たち

歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書」

江戸時代のポップアーティスト・歌川国芳。その作品「荷宝蔵壁のむだ書」の真ん中に描かれているのは、ひょうきんな姿の猫又。
歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書」 部分 (黄腰壁)弘化5(1848)年ごろ 大判錦絵 ボストン美術館

河鍋暁斎「鳥獣戯画 鼠曳く瓜に乗る猫」

DMA-TBM000715「鳥獣戯画 鼠曳く瓜に乗る猫」一面 紙本着色 37.7×52.5㎝ 明治12(1879)年ごろ 大英博物館(アンダソン旧蔵)©The Trustees of the British Museum c/o DNPartcom

参考:水木しげる「図説 日本妖怪大鑑」、小学館「日本大百科全書(ニッポニカ)」

※この記事中に掲載した画像の一部は「和樂」の過去記事より再編集しています。

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