Fashion&きもの

2023.04.28

着る喜びに導かれて。「染織」大髙美由紀さんの工房へ【きものを巡る美しき手仕事】

シリーズ「きものを巡る美しき手仕事」。今回は「染織」大髙美由紀さんをご紹介します。

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染める!織る!女性きもの作家の工房を訪ねて

四季があり、豊かな自然があるこの国では、古来、実にさまざまな染めと織りの技法が育まれ、伝えられてきました。
絣(かすり)、型染(かたぞめ)、染織(せんしょく)――。いつかそでを通してみたくなる、心ときめくきものをつくる注目の女性作家の仕事と作品を拝見しに、工房へ。

彼女たちは、何を思い、どこを見つめて、きものをつくるのか。その手仕事には、それぞれの人柄や人生があらわれていました。

大髙美由紀さん「染織」

左/初めて自分のために染めて織った紬のきものに自作の吉野織の帯を合わせた、大髙美由紀さん。右/日本伝統工芸染織展に出品した紬織絣着物「風そよぐ」。

着る喜びに導かれて足を踏み入れた染織の道

自然が色濃い南足柄(みなみあしがら)、山裾の住宅地にある大正時代に建てられた日本家屋が、染織(せんしょく)作家・大髙美由紀(おおたかみゆき)さんの自宅兼工房です。
「経糸の準備の際に、なるべく長くまっすぐ張れる空間がほしくて、この家を借りました。できるだけ折り返さずに張ることで、糸にかかるテンションのばらつきが緩和されるので、織りやすく、仕上がりもきれいになるのです」。

そんな小さな部分にもこだわる大髙さんの仕事は、まじめに、丁寧に。パッと目をひく派手さではなく、じんわりと伝わってくる美しさがあります。
「成人式も洋服だったくらい、きものには興味がなかった」という大髙さんですが、20代で初めてきものを着たときのふんわりと包まれるような心地よさが心に残り、いつしかきものの道に。

最初は事務の仕事をしながら着付け教室に通い、講師の資格をとり、30代で十日町(とおかまち)の職業訓練校で織を学んだという、ユニークなプロフィールです。

左/常に糸の本数を数える絣織は、おのずと集中力が高まる。右/初めて自分のために染めて織った紬を仕立てた色無地。刈安(かりやす)の黄色に藍を重ねて濃緑(こみどり)を出している。合わせたのは経緯(たてよこ)に浮きを入れた自作の吉野織の帯。

思う色に染まらない。それが、難しさであり、楽しさでもあり

「染も織も趣味ではなく仕事としてやっていくのですから大変です。イメージしたとおりにつくるのは、今でも難しい。糸染(いとぞめ)ひとつとっても、思いどおりの色にはなかなかあがりません。でもそれが、つくる楽しさであるのですけれど」。

今年(2023)、織りを始めて27年、独立して23年。
「10年前ぐらいから、ようやく余計な肩の力が少しずつ抜けてきた気がします。地元でとれた植物をよく使っていますが、天然染料にはこだわりません。化学染料には、色褪(いろあ)せしない、媒染(ばいせん)で糸を傷めないというメリットがありますから」。
着る側の立場に思いを巡らせる、大髙さんならではのきものづくりです。

左/昔ながらの道具を使い緯糸を竹管(たけくだ)に巻きとっていく。中/地元で採取した枇杷(びわ)の葉で染めることも。右/草木染(くさきぞめ)は同じ材料を用いても、まったく同じ色にはならない。

大髙美由紀さんの創作のミナモト

きっかけ/ 20代で初めてきものを着たときの心地よさ。
活動年数/約30年弱。
転機/脱OLで、新潟・十日町の職業訓練校に入学。
好きな色/自分で着るなら緑や紺。
1963年、神奈川県生まれ。多摩美術大学卒業後、着付け教室に通い講師の資格を取得。その後、職業訓練校で学び、神奈川県南足柄の工房で修業の後独立。日本工芸会正会員。

大髙美由紀さんの作品に出合うには

東京・銀座「銀座もとじ 和織」https://www.motoji.co.jp/ で取り扱いあり。

撮影/篠原宏明 構成/氷川まり子 ※本記事は雑誌『和樂(2015年11月号)』の転載です。

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和樂web編集部

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