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永遠のふたり 白洲次郎と正子

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2023.09.01

養殖真珠誕生から130年。日本のハイジュエラー「ミキモト」とパリの物語

ブランドの創始者である御木本幸吉が、世界で初めて真珠養殖に成功してから130周年を迎えた「ミキモト」。それを記念し、真珠を育む「海」へのオマージュともいえる壮麗なハイジュエリーコレクション「Praise to the Sea」が発表されました(2023年10月7日より日本発売予定)。海の世界を卓越したクラフツマンシップでドラマティックに表現した作品の数々を女優の杏さんが纏い、「ミキモト」 と養殖真珠にとって特別な地であるパリからご紹介します。

「ミキモト」とパリ――運命の地で海に捧げられた煌めきを纏って

養殖真珠誕生から130周年を記念して、生命の源である海に捧げられた新作を女優・杏さんが纏います。

「宝飾の聖地」といわれるヴァンドーム広場にて。かつて欧州視察に訪れた御木本幸吉もこの場所に佇(たたず)んだ。杏さんが纏ったネックレスは、海流に乗ってダイナミックに泳ぐシロナガスクジラの親子がモチーフ。そのあとに小魚の群れが続く。グリーンの大きな宝石はトルマリンで、この部分は取り外してブローチとしても着用できる。存在感のあるリングはウニがモチーフ。
ネックレス[トルマリン計44.47ct×サファイア計36.87ct×アクアマリン計7.10ct×ガーネット計5.59ct×ダイヤモンド計48.65ct×WG]¥110,000,000/ピアス[トルマリン計1.54ct×サファイア計2.07ct×アクアマリン計1.06ct×ガーネット計0.68ct×ダイヤモンド計7.00ct×WG]¥14,300,000/リング[アレキサンドライト計1.86ct×トルマリン計0.44ct×サファイア計4.21ct×エメラルド計0. 07ct×ダイヤモンド計3.73ct×PT]¥15,400,000(ミキモト)/ドレス:参考商品(トム フォード ジャパン)

杏(あん)
1986年、東京都生まれ。2001年にモデルデビューし、雑誌や海外のコレクションで活躍。2007年に女優としてデビューしてからはドラマ、映画などで活躍。現在は、TBS「世界遺産」でナレーターを務めている。2022年より国連WFP親善大使に就任。出演映画『私たちの声』が今年9月1日より公開。

1893年、御木本幸吉翁が世界で初めて真珠養殖に成功

驚きに満ちた「ミキモト」の世界進出の物語。創業者が抱き続けた海への深い愛と真珠養殖に捧げた情熱は、時を超えて現代へ。その想いは、最新のハイジュエリーコレクションにも受け継がれています。

真珠養殖の実験に、「ミキモト」の創業者・御木本幸吉が着手した1890年当時、その成功はまさに人類にとっての夢でした。宝飾品として長い歴史をもつ真珠。その起源は紀元前まで遡ります。研磨も加工も必要としない真珠は宝飾技術が発達する以前から、その美しさで人々を魅了してきました。1910年代、ある名門ジュエラーがニューヨークの土地建物と天然真珠のネックレスを交換したという話は、今も宝飾界の伝説に…。貝の中から偶然発見される真珠は、それほどまでに希少なものだったのです。そんな真珠が養殖できれば、多大な利益を生むことは間違いありません。しかし、海産物の商いに携わっていた幸吉が真珠養殖に興味をもったきっかけは私欲のためではなく、乱獲によって絶滅の危機に瀕しているアコヤ貝を救うためでした。アコヤ貝の保護活動が資金面で持続できないことがわかり、幸吉はアイディアを模索。そのうちにアコヤ貝による真珠養殖の可能性について考えるようになったのです。

真珠養殖の方法は理論的には可能とされていましたが、実際に行うのは至難の業でした。その方法は、核(丸く削った貝殻)と炭酸カルシウムを分泌する貝の外套膜(がいとうまく)の一部を母貝に挿入。すると、外套膜が真珠袋をつくり、核のまわりを真珠層で覆います。それが時間をかけて真珠に。核と外套膜の挿入は繊細な作業で、熟練の技を要します。幸吉は歯科医の医療用具に着想を得て、核を挿入するための道具を開発。多くの識者や研究者の協力により、実験を始めて約3年後の1893年、世界で初めて半円真珠の養殖に成功しました。

アコヤ貝と半円養殖真珠。1893年、世界で初めて完成した養殖真珠は、こんな形状をしていた。©MIKIMOTO

伝説の〝パリ真珠裁判〟を経て、日本のハイジュエラー「ミキモト」の名は一躍世界へ

それから12年の歳月を経た1905年、幸吉はついに真円真珠の養殖にも成功します。そして1919年、真円養殖真珠を「ミキモト・パール」と名付け、ヨーロッパの宝飾取引の中心地であるロンドンで売り出しました。

ロンドンで発売された「ミキモト・パール」は評判を呼びますが、一部の宝石商たちが養殖真珠を模造品と断定したために市場から排除されてしまう事態に。しかし、ロンドンでは『タイムズ』などの有力紙が「養殖真珠は天然真珠と科学的に異なるものではない」という記事を掲載。養殖真珠の信用はむしろ高まる結果になりました。ただ、パリに広まった噂はなかなか払拭されず、養殖真珠はフランスで輸入規制の対象になってしまいます。そうした状況を打開するため、幸吉はパリで訴訟を起こし、真偽は3年にもわたり法廷で争われました。その間、多くの学者が養殖真珠の正当性を主張。なかでもフランス・ボルドー大学のブータン教授の論文が決め手となり、1924年、「ミキモト」はついに勝訴します。のちに〝パリ真珠裁判〟と呼ばれるこの出来事によって、「ミキモト」と「ミキモト・パール」の名は一躍世界へと広まっていきました。

右/1913年、ヨーロッパ初進出の都市となったロンドンの支店。左/真珠裁判の「ミキモト勝訴」を伝える、1924年5月25日発行の新聞『L’Humanite』の記事(部分)。©MIKIMOTO

「ミキモト」を勝訴に導いた、ボルドー大学のブータン教授による養殖真珠に関する論文。添えられた写真は、当時のパリの法廷(©PPS通信社)。こうした場所で養殖真珠の正当性が3年にわたり争われた。中央のブローチは、ハイジュエリーコレクション「Praise to the Sea」の作品。ホネガイをモチーフにしており、魚の骨に似た棘(とげ)にはダイヤモンドが煌めく。海の泡を思わせる大小の真珠が、水中にいる姿を演出している。ブローチ[アコヤ真珠3.2~7.7㎜×アクアマリン5.39ct×ダイヤモンド計6.98ct×WG]¥11,000,000(ミキモト)

生命の源である海と海洋生物をユニークな視点で唯一無二の輝きに

養殖真珠の誕生から130周年を迎えた今年、「ミキモト」は多様な生命の源であり、真珠を育む〝海〟を讃(たた)えたハイジュエリーコレクション「Praise to the Sea」を発表。シロナガスクジラやイルカ、ホタルイカ、ヤドカリなどの多彩な海洋生物がユニークな視点で意匠化され、卓越した職人技によってドラマティックなハイジュエリーに。その躍動感に満ちた姿は、「ミキモト」のデザインが生物の外見だけでなく、動きや生態系までも理解したうえで制作されていることを示しています。本コレクションの作品すべてに注がれた、海と海洋生物への慈しみ深い眼差し。それは海を愛し、真珠養殖に情熱を傾けた創業者の想いが、今に受け継がれていることの証ともいえるでしょう。

1951年ごろ、三重県志摩の「真寿閣(しんじゅかく)」で真珠を計量する幸吉。そこはかつて幸吉の住まいだった。©MIKIMOTO

問い合わせ先

ミキモト カスタマーズ・サービスセンター
電話:0120・868254
公式サイト:www.mikimoto.com

※本記事は『和樂』2023年10.11月号の転載です
撮影/武田正彦(人物)、戸田嘉昭(静物) ヘア/YUSUKE TANIGUCHI メーク/GO MIYUKI ネイル/AKANE スタイリスト/押田比呂美 コーディネート/今津京子

※文中のPTはプラチナ、WG はホワイトゴールド、YG はイエローゴールド、ct はカラットを表します。
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福田 詞子(英国宝石学協会 FGA)

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