魔法のような技巧を駆使したハイジュエリーという躍動する芸術「ショーメアンセンヌ」

音楽、ダンスなどの人々を魅了するステージパフォーマンスを卓越した宝飾技巧を駆使して芸術的に表現した新作ハイジュエリーコレクション「ショーメアンセンヌ」。モダンな美を極めたクリエイションが、自然主義のハイジュエラーの新たな一面を見せてくれます。

文・福田詞子（英国宝石学協会ＦＧＡ）

時代の様式を取り入れたモダンデザインの到達点

1780年、マリー・アントワネットのジュエラーで修業を積んだ宝飾職人、マリ＝エティエンヌ・ニトが創設した店から「ショーメ」の歴史は始まりました。その後、フランス皇帝ナポレオン1世とその皇后ジョゼフィーヌの御用達ジュエラーとなったニトは、皇后が愛した植物モチーフの傑作を数多く生み出し、自然主義のジュエラーとして名を馳せるようになります。

その後、ロマン主義やベルエポック、アールデコの時代を経て、自らのスタイルを洗練させてきた「ショーメ」。最新のハイジュエリーコレクション「ショーメアンセンヌ」では、アシメトリーの幾何学的構図や錯視効果における〝動き〟を追求し、躍動感に満ちたクリエイションを生み出しました。

本コレクションの具体的なインスピレーション源となったのは、音楽やダンス、マジックといった、いつの時代も人々を熱狂させてきた芸術やパフォーマンスです。また、作品に新鮮な驚きと独創性をもたらしたのは、アールデコ様式を現代的かつ独自の視点で再解釈したデザインと、今回のために職人たちが進化させた超絶技巧の数々にほかなりません。優雅でいて、実は斬新なクリエイションが、メゾンの歴史に新たな足跡を印します。

スウィングダンスの躍動感と〝動き〟を視覚効果で表現

スウィングダンスに興じる人々の躍動感あふれる動き、女性たちの回転するスカートを思わせるデザイン。ブラック＆ホワイトのコントラストと斜めに走るラインが、視覚効果によって〝動き〟を演出。アールデコ様式を想起させるモダンな意匠に、パープルサファイアがノーブルな華やぎを添える。「スウィング」ブレスレット[パープルサファイア5.86ct×ピンクサファイア計6.77ct×ダイヤモンド計20.34ct×オニキス計6.90ct×WG]参考価格￥90,750,000（ショーメ）

非対称の構造から生まれた芸術的なモダンデザイン

自然主義とともに発展を遂げてきたアシメトリーなジュエリーデザイン。それを幾何学的に表現するには、卓越した技術とセンスが必要に。楽譜に着想を得たネックレスは、その成功例のひとつ。複雑に重なり合うライン、あえて中心線をずらした非対称の意匠が、優雅なだけに終わらない旋律を生み出すスコアのよう。「スコア」ネックレス[エメラルド計25.46ct（センター8.63ct）×サファイア計7.40ct×ダイヤモンド計39.27ct×PT×WG]参考価格￥425,700,000（ショーメ）

〝ツイスト〟技巧が生み出したイリュージョンの遊び

ダイヤモンドの曲線が途切れて見える、「ヴォルティージュ（空中曲芸）」と名付けられたティアラ。イリュージョンのようなデザインは、卓越した〝ツイスト〟の技巧によって実現した。職人はこの制作のために伝統の技術を進化させて、より完璧なものに…。ツイストの位置を寸分の狂いもなく放射状に配置し、〝魔法のティアラ〟をつくりあげた。「ヴォルティージュ」ティアラ［ダイヤモンド計27.77ct（センター3.21ct）×WG]参考価格￥141,900,000（ショーメ）

類いまれな宝石を形づくる天然真珠とダイヤモンド

「トロンプルイユ（だまし絵）」と呼ばれる伝統のセッティング技術を駆使して生み出されたネックレス。優美なアシメトリーのデザインは、1913年にインドのマハラジャ（藩王）のために制作された作品の再解釈。その先端にはふたつのペアシェイプのダイヤモンドが輝いていたが、その代わりとなるモチーフが希少な天然真珠とダイヤモンドで形づくられた。ニュアンスカラーが美しい天然真珠はコルテス海（カリフォルニア湾）産。「トロンプルイユ」ネックレス[ダイヤモンド計31.37ct×パール×WG]参考価格￥1,551,000,000（ショーメ）