明かりを背にして障子の前に座り、手や腕を組み合わせてできた鳥や動物の形の影を障子に浮かび上がらせる影絵遊び。多くの人が親しんできたこの遊びは、江戸の庶民の間でも楽しまれていました。そのアイディアを浮世絵に持ち込んだのが、お江戸の人気絵師・歌川国芳です。
仕掛けがすごい!歌川国芳のユーモア溢れる作品
武者絵や化物絵など、ダイナミックで豪快な絵を描かせたら右に出るものがないと称される国芳は、自身も粋でいなせな江戸っ子でした。絵師としても優れた才能を発揮し、人を喜ばせたり驚かせたりすることを何よりも好むというサービス精神に富んでいた国芳は、思わず笑みがこぼれてしまうような遊び心たっぷりの絵も数多く創作しています。
中でも、猫を描いた作品は枚挙にいとまがないほど。国芳は無類の猫好きで、常に傍らには猫がいて、ときには子猫を懐に入れて絵を描いていたとか。本作のように遊び心に満ちた作品は、おそらく、猫とじゃれ合いながら、その表情や動きを観察した賜物。そんなユニークな素顔も、国芳人気を支えている要因なのです。
歌川国芳「絵鏡台合かゞ身 猫しゝ・みゝづく・はんにやあめん」団扇絵2枚組 天保13(1842)年ごろ ギャラリー紅屋蔵
「はんにやあめん」は今でいうおやじギャグ!?ネコだらけ!
この影から想像すると、「はんにやあめん」とは般若面のことでしょうか。この平仮名書きにも、国芳お得意のユーモアがつまっているのです。もうお気づきの方も多いかもしれませんが、実は猫の鳴き声をもじったダジャレ。しかし、こんなポーズで般若面の形をつくる遊び心には感服します。
「みみずく」と書いてあるから鳥の影かと思いきや…
手を組み合わせるとこんな形など簡単につくれそうですが、ただ猫が座っていただけだったとは…。首に巻いた紐を立ててみみずくの耳を表しているところを見ると、国芳の愛猫に同じことをさせていたのでしょうか?
シルエットは獅子だけど…。まさかこんなポーズだったとは!!
障子に映ったシルエットは、恐ろしげだけど愛嬌のある獅子頭。こんな形をつくるために、3匹の猫がこれほどまでアクロバチックなポーズをとっていたとは驚きです。猫で獅子をつくるなんて猫好きの国芳にしか考えつかないでしょう。首につけた鈴が目を表しているのも、猫を飼っていた国芳ならでは。
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