東京・両国「すみだ北斎美術館」の名作と見どころを徹底解説

東京・両国「すみだ北斎美術館」の名作と見どころを徹底解説

目次

葛飾北斎のスゴさがよくわかる専門美術館!

世界的に有名な浮世絵師・葛飾北斎は宝暦10(1760)年9月23日に本所割下水(現・北斎通り)付近で生を受けました。それから90歳で亡くなるまで、引っ越しをくり返しながらも大半の時間を墨田区内で生活。その生地に近いゆかりの地に、2016年11月22日、「すみだ北斎美術館」がオープンしました。
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建築デザインを手がけたのは、世界的な評価を得ている建築家・妹島和世。シルバーのクールな外壁は鋭角なスリット状に切り取られ、見るからに斬新でモダンな表情。このスリットは館内の空間にもユニークな特性をもたらしています。また、周囲のどこからでもアプローチできるよう、正面を設けていない構造は、地域に開放された美術館というコンセプトにぴったりです。北斎が生涯かけて描いた錦絵や肉筆画の数々を目の当たりにすることができる企画展示室と常設展示室は3階と4階に。展示される所蔵作品の中核をなすのは、欧米における北斎の個人収集としては最高最大とされるピーター・モースのコレクション。収集にも研究にも熱心であった氏の600点に迫る北斎作品の数々は、国内外の注目を集めています。美術ファンにとって興味が尽きない「すみだ北斎美術館」。その魅力をここ〝ならでは〟の見どころとともにご紹介します。

最大の見どころは、百年ぶりに発見された肉筆の大作
『隅田川両岸景色図巻』

開館記念展での公開が話題となった作品が、全長7mにも及ぶ肉筆画『隅田川両岸景色図巻』です。北斎が46歳のころに描いた本作は、肉筆美人画に熱心に取り組む先駆けとなるもの。ですが、海外に流出し、明治35(1902)年にフランスの国立競売場・ドゥロウで売却された記録を最後に長らく所在が不明でした。それが、100年以上もの時を経て、「すみだ北斎美術館」のコレクションに名を連ね、開館をきっかけにようやく日の目を見るようになったのです。北斎の新たな魅力を語りかけてくるような本作は決して見逃せません。

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遊郭の部分で、肉筆美人画の萌芽が見える。

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両国橋付近。

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三囲牛嶋神社付近。

『隅田川両岸景色図巻』(すみだがわりょうがんけしきずかん)
紙本着色 一巻 28.5×716.0㎝
文化2(1805)年 墨田区蔵 巻末の署名から、文化2(1805)年に本所相生町に住んでいた戯作者・烏亭焉馬の依頼によって描かれたことがわかっている。

北斎の名を高めた錦絵の傑作を網羅!

各地から見える富士山を描いて一世を風靡した『冨嶽三十六景』をはじめ、『諸国瀧廻り』や『諸国名橋奇覧』、『百物語』、花鳥画など、北斎の代表的な錦絵のシリーズ作品が一堂に会するのは、「すみだ北斎美術館」ならでは。これらの作品には、大森貝塚を発見したモースの血縁で、北斎の収集家として世界的に知られたピーター・モースが平成5(1993)年に急逝し、そのコレクションを譲り受けたものもあります。貴重な作品を含む約600点ものコレクションは、摺りや色の状態がよく保たれていて、制作当時の美しさを今に伝えてくれるかのようです。

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『冨嶽三十六景 山下白雨』。右下の稲妻は美術館のロゴマークにもなっている。

気鋭の建築家が手がけた感動的デザイン!

淡い鏡面パネルでおおわれた美術館は、今をときめく建築家・妹島和世さんのデザインとあって、建築好きの人たちの間でも話題沸騰中。スリットが入ったような建物は、見た目はもとより、どこからでも入館できるという斬新な構造。「常に新しいチャレンジを試みた北斎の精神を感じることができる」という設計コンセプトが体現されています。北斎の世界を体感するだけでなく、建築でも感動できる「すみだ北斎美術館」。訪れた人の心には、新旧の〝美〟の余韻が残ることでしょう。

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スリット状の部分を下から見ると、合わせ鏡のような面白さ。

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建築デザインの美しさを味わえる、3階と4階をつなぐらせん階段。4階の展望ラウンジ・ホワイエからは、東京スカイツリー®をはじめとした墨田区の景色を眺めることができ、ホッと一息つくのに最適。

北斎の画業と人生を体感できる多彩な展示

1階からエレベーターで4階の常設展示室へ行くと、『北斎漫画』のキャラクターが投影されたエントランスに迎えられます。そこはまた、タッチパネルモニタで北斎と〝すみだ〟とのつながりを知ることができる展示の一部。7つのエリアに分けられた常設展示室の1「すみだと北斎」です。常設展示室内は、2「習作の時代」、3「宗理様式の時代」、4「読本挿絵の時代」、5「絵手本の時代」、6「錦絵の時代」、7「肉筆画の時代」と、年代ごとに6つに分けられていて、それぞれの時代の代表作の実物大高精細レプリカとエピソードとともに、北斎の生涯をたどることができるようになっています。

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84歳のころに墨田区榛馬場に娘の阿栄とともに住んでいた北斎を、門人の露木為一が描いた絵をもとにして再現したアトリエは実にリアル!

ほかにも、タッチパネルモニタで『北斎漫画』などを楽しめる「北斎絵手本大図鑑」、錦絵観賞ができる高精細画面モニタ、錦絵制作の工程を映像とともに紹介するコーナーのほか、北斎のアトリエを再現した模型が展示されていて、見どころ満載。北斎の絵師としての進化と、その生涯を楽しみながら知ることができるのが一番の魅力です。

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絵手本が踊りだしたり、なぞって描いてみたりすることができる「北斎絵手本大図鑑」のタッチパネルモニタ。

あそこにもここにも、北斎キャラ!

常設展示室の壁いっぱいに描かれた最高傑作『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』をよく観ると、秀逸なキャラがいくつも。

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常設展示室に入る前から、古地図で北斎の転居歴や画題の地を示す展示や、絵手本キャラの投影に心は弾むばかり!

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すみだ北斎美術館

【住所】東京都墨田区亀沢2-7-2 地図
【開館時間】9時30分~17時30分(入館は17時まで)
【休館日】月曜(祝・休日の場合は開館し翌平日休館)、年末年始(2016年12月26日~2017年1月1日)
【観覧料】企画展ごとに設定。開館記念展「北斎の帰還-幻の絵巻と名品コレクション-」は1,200円、常設展400円
【アクセス】都営大江戸線「両国」駅A3出口より徒歩5分、JR総武線「両国」駅東口より徒歩9分。

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