国宝 縄文土偶のビーナスとは? 源氏物語絵巻とは?

国宝 縄文土偶のビーナスとは? 源氏物語絵巻とは?

日本美術の最高到達点ともいえる「国宝」。2017年は「国宝」という言葉が誕生してから120年。小学館では、その秘められた美と文化の歴史を再発見する「週刊 ニッポンの国宝100」を発売中。

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各号のダイジェストとして、名宝のプロフィールをご紹介します。

今回は日本美人の原型、「縄文のビーナス」と華麗な王朝文化の頂点、「源氏物語絵巻」です。

日本美人の原型 「縄文のビーナス」

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長野県八ヶ岳山麓一帯は、縄文時代の遺跡が多く発見され、この地域に当時いくつもの大集落が点在していたことがわかっています。そんな集落のひとつ、棚畑遺跡(長野県茅野市)で、1986年9月8日、高さ27cm、重さ2.1kgの人形をした土のやきもの「土偶」が、まるで大切に埋葬されたかのような状態で発見されました。

切れ長の目に団子鼻とおちょぼ口。少女のようなあどけない表情とは対照的に、妊娠した女性の豊満な裸体をもつこの土偶は、「縄文のビーナス」と称され、1995年、国宝に指定されました。

紀元前1万1000年頃から紀元前400年頃まで、1万年以上続いた縄文時代は、草創期から晩期まで6つに分けられます。そして縄文のビーナスが作られたのは、紀元前3000年~紀元前2000年の中期にあたります。縄文時代前期までに製作された土偶は、小型で平面的な「板状土偶」がほとんどでした。しかし中期になると、製作技法の発展によって、土偶は立体的になり、大型化していきます。どっしりとした2本の足で自立する「縄文のビーナス」は、この中期の典型を示す貴重な土偶です。

人間や動物の形をした土製品の「埴輪」は、古墳時代(3世紀後半~7世紀)に副葬品として製作されました。しかし、それに先立つ縄文時代に作られた土偶の多くは、故意に破壊された状態で出土しているため、集落の人々によって祭祀に使われたのではないかと推測されています。しかし、文字による記録がないため、その用途は信仰の対象、魔除け、子どもの玩具などとさまざまな説があり、いまだ謎に包まれています。

そのなかで「縄文のビーナス」は、壊されることなく完全な形で発見されました。「彼女」がほかの土偶と一線を画す、特別な存在であったことは、疑いの余地がありません。

丁寧な製作工程、鉱物である雲母片が混ぜられた光り輝く肌──。製作当時と変わらぬ姿で5000年の眠りから覚めたこの土偶は、生命を宿す女性の神秘性を体現した、まさに「土偶界のビーナス」なのです。

国宝プロフィール

土偶 長野県棚畑遺跡出土(縄文のビーナス)

縄文時代中期(前3000~前2000年) 高27.0cm 茅野市 尖石縄文考古館 長野

八ヶ岳山麓の南斜面、縄文時代の環状集落の広場跡から完全な形をしたまま出土した土偶。そのふくよかで立体的な身体の表現から、「縄文のビーナス」の名で親しまれている。縄文時代の遺物として最初に国宝に指定された。

茅野市尖石縄文考古館

華麗な王朝文化の頂点 「源氏物語絵巻」

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「源氏物語絵巻」は、一条天皇の中宮彰子に仕えた紫式部が執筆した「源氏物語」を絵画化したものです。「源氏物語」は、寛弘年間(1004~12)に成立したといわれ、美貌の光源氏が数々の女性と繰り広げる恋愛遍歴を軸にした全54帖からなる長編物語。「源氏物語絵巻」は、この「源氏物語」の成立からおよそ100年後、12世紀前半の白河院、鳥羽院の時代の宮廷で制作されたと考えられています。しかし、絵の描き手も、仮名文字で記された説明文である「詞書」の書き手も特定されていません。

「源氏物語」の中から印象的な場面を抜き出して絵にした作品は、「源氏絵」と呼ばれ、平安時代から近世に至るまで繰り返し描かれてきました。そのなかで現存最古の本作は、原作が書かれた時代にもっとも近い時期に制作されたため、当時の貴族の暮らしぶりを雄弁に伝える貴重な作品です。

源氏絵は、後世、扇面や色紙、屛風、障子などさまざまな形式で描かれましたが、本作は絵巻の形態をとっています。絵巻は、長く横に継いだ紙を軸に巻いて紐で結んだ巻物で、少しずつ広げて右から左へ展開する物語を複数の人々が同時に鑑賞することができます。

「源氏物語絵巻」は、制作当初は「源氏物語」全帖の中から、1帖につき1~3場面を選んで絵画化されたと推測されています。徳川、五島両美術館は、19場面の絵と詞書、詞書のみの1段を所蔵。現在は、展示・保存のため、額装に仕立てられています。失われた場面が多くあるものの、美しい彩色や登場人物の心理までも表現する卓越した構図、「連綿体」と呼ばれる、仮名文字を流れるように続ける書体で書かれた詞書など、さまざまな魅力にあふれています。

とりわけ優れているのが、その場面選択の巧みさ。末法思想による厭世観が蔓延する院政期の世相を反映したかのように、悲劇的なシーンも見られます。本作に描かれた場面は、原作の単なる絵画化にとどまりません。そこには、制作者の高い教養と豊かな感性によって、物語の行間に込められた叙情性や登場人物の心の綾までもが巧みに描き出されています。

国宝プロフィール

源氏物語絵巻

12世紀前半 紙本着色 43面(徳川美術館 愛知) 13面(五島美術館 東京)

「源氏物語」を、深い理解と共感のもとに、華麗な絵と詞書とで作り上げた絵巻物の最高傑作。登場人物の恋愛や苦悩が、抑制された所作や巧みな構図によって、繊細に描かれる。

徳川美術館五島美術館

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