2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!

2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!

目次

近年、「若冲展」「国宝展」など、日本美術を特集した大型の展覧会が人気を集めています。絵画・彫刻・書・工芸など、一口に日本美術と言ってもそのジャンルは多岐にわたりますが、中でも人気を集めているジャンルが「仏像」です。

例えば、2017年の秋に東京国立博物館にて開催された運慶展では会期中、約60万人の人出がありましたし、2018年春に開催された仁和寺展でも、葛井寺の国宝・千手観音菩薩坐像が出展された会期後半からはSNSでの人気に火が付いて一気に大混雑。最終的に約32万人の入場者数を集めました。

この流れは2018年秋になっても継続中。この秋もまた、首都圏では「仏像」を大特集した仏教美術展が大当たりです。国宝や重要文化財といった貴重な寺宝を一挙公開する展覧会や、仏師たちが制作した個性的な仏像を集めた展覧会などが出揃いました。

本稿では、2018年秋に東京都心で開催されている美術展の中から、仏像ファンなら絶対見逃せない3つの「仏教美術展」をまとめてご紹介します。

慶派仏師の力強く写実的な作品が見どころ! 快慶・定慶展

2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!

京都・北野にある「大報恩寺」というお寺を知っている方はどれくらいいらっしゃるでしょうか? 清水寺や金閣寺といった観光名所とは違い、観光ガイドでもそれほど大々的に取り上げられることが少ない大報恩寺は、地元では「千本釈迦堂」という通り名で愛されているお寺です。

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確かに知名度という点では他のお寺に一歩譲るかもしれませんが、大報恩寺の由緒や実力は折り紙付き。北野天満宮に近く、地元の住宅街の中に溶け込んだお寺の本堂は、応仁の乱でも焼けずにそのまま残ったことから、現在京都で一番古い木造仏教建築となっているのです。

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そして、この「大報恩寺」の大きな宝物館「霊宝殿」では、鎌倉時代に一世を風靡したスター仏師集団「慶派」の有力な仏師である快慶と肥後定慶の二人が制作した、凄い寺宝が眠っていたのです。

それが、特別展「京都・大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」で大々的にフィーチャーされている快慶「十大弟子立像」、定慶「六観音菩薩像」です。

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順番に簡単に説明すると、「十大弟子立像」とは、釈迦に従った10人のお弟子さん達を、快慶が1体1体ハッキリと違いがわかるよう、個性的かつ写実的に描き出した10体1セットの仏像です。重要文化財に指定されており、快慶の代表作のひとつとされています。2017年、奈良国立博物館で快慶の大規模な回顧展が開催されましたが、本作はその時に出展されなかった作品。恐らく、今回がはじめての対面となる方が非常に多いと思われます。

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続いて、運慶の弟子、肥後定慶が制作した「六観音菩薩」像。こちらは、定慶ならではのふっくらとしてたくましい顔つきが特徴。「十大弟子立像」同様、6体で1セットの作品で、光背部を合わせるとそれぞれ2m以上ある作品は迫力満点。それぞれの仏像がドラマチックに浮き上がるようなライティングが施された広い展示空間で観ることができる贅沢さを、存分に味わってみてください。しかも、6体のうち左端に展示された1体「聖観音菩薩立像」は、白線の内側に入れば自由に写真撮影してSNSにアップすることもできます!

特別展「京都・大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」

会期 開催中〜2018年12月9日
会場 東京国立博物館 平成館3・4室(上野公園)
公式サイト

ユニークで個性的な仏像展! 特別展「仏像の姿」

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続いておすすめしたい展覧会が、三井記念美術館で開催中の特別展「仏像の姿」。こちらは、いわゆる公立博物館・美術館が開催する大型展覧会のように「国宝◯件!」「重要文化財◯件!」といった、出品される展示アイテムのグレード感やレアさを打ち出す展覧会ではありません。そのかわり、仏像の「表情」や「ポーズ」、「動き」に着目し、正統派な仏像から個性的な表情や変わったポーズをした仏像まで、バラエティに富んだ作品群から見えてくる造りて=仏師の「個性」や遊び心をたっぷり味わえる展覧会なのです。

2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!「阿弥陀如来のうち両脇侍像」重要文化財 平安時代 大阪・四天王寺蔵

たとえば、この仏像を見て下さい。2体で1組の仏像作品ですが、共に両足を後ろ側に跳ね上げ、リズミカルに踊っているような姿勢が斬新。強烈なインパクトを残してくれました。

2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!「伽藍神立像」鎌倉時代 奈良国立博物館蔵

こちらは通称「走り大黒」のニックネームで親しまれてきた七福神の一体、大黒天。鎌倉時代に制作された本作品は、頭巾をかぶり袍(ほう)と袴(はかま)を着て、手を大きく振って今にも走り出しそうなコミカルな姿が最大の特徴。私も他の展覧会や所蔵元の「なら仏像館」で何度か見ているのですが、いつ見ても不思議な魅力があって、自然と惹きつけられる仏像です。

また、展覧会の最終コーナーでは、仏像制作や修復においてはノウハウ、技術力に定評のある東京芸術大学とのコラボ展示も興味深いです。仏像の作り方や修復のやり方など、普段観ることのできない仏像制作の「裏側」までじっくり楽しめるのも本展の特長。

どんなジャンルでもそうですが、美術鑑賞において、審美眼を鍛える一番の近道は、とにかく「まずたくさんの作品を観ること」と言われますよね。様々な時代の個性的な仏師達が制作したバラエティに富んだ仏像を、まとめて一気に50体以上楽しめる展覧会はそうそうありません。

楽しいだけでなく、確実にわたしたちの教養や鑑賞眼を深め、「学び」にもつながるまたとない機会でもあるのです。全国各地から大切な寺宝を借りるため、出展交渉や輸送手配など、準備段階では恐らく相当な苦労や手間がかかったであろう本展。仏像に少しでも興味があるなら、絶対見ておいたほうが良い展覧会です。

特別展「仏像の姿~微笑む・飾る・踊る~」

会期 開催中〜2018年11月25日
会場 三井記念美術館
公式サイト

貴重な寺宝の数々が大集合! 醍醐寺展

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最後にオススメしたい展覧会は、「醍醐寺展」。醍醐寺といえば京都において仁和寺・東寺と並び、最も古く歴史のある真言密教の重要なお寺で、建物・書跡・仏画・仏像・工芸とあらゆるジャンルにおいて国宝・重要文化財指定を受けた寺宝を非常に多数所蔵しています。1994年には「世界遺産」にも指定されていますね。

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そんな醍醐寺ですが、「文化財は広く見てもらってこそ」という考えのもと、近年非常に積極的に寺宝を国内外で展観する機会を増やしています。特に2016年には中国の上海・西安で約80万人を集めるなど、海外での大型展覧会も大成功でした。

本展は、まさにその中国での展覧会での展示コンセプトを引き継ぎ、日本向けにアレンジした「凱旋展」的な位置づけの展覧会です。その展示点数は、国宝34件、重要文化財43件を含む約100件。約15万点ある寺宝の中から、醍醐寺を代表する主力の寺宝が特に選りすぐられてて本展に集結しました。

2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!「如意輪観音坐像」重要文化財 平安時代 10世紀

たとえば、展示室を入って最初に展示されている如意輪観音坐像。静謐で思索に満ちた表情の中に、どことなく妖しさや艶めかしさを感じさせます。

2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!「薬師如来および両脇侍像」国宝 平安時代 10世紀

ハイライトとなるのが醍醐寺・上醍醐薬師堂の御本尊である「薬師如来坐像」。左右に日光菩薩・月光菩薩を従え、中央に鎮座する薬師如来像は、座った状態で像高176.1cmと巨大です。東京・六本木ミッドタウンのインテリジェントなオフィスビルの中に、突如異空間が出現したかのような面白い感覚が味わえました。

本展は仏像以外にも、工芸・書跡・仏画など美術造形的にも歴史的にも非常に価値の高い寺宝が惜しげもなく展示されています。本来なら醍醐寺へ赴き、何度か特別公開時期や宝物館の展示替えに合わせて何度も京都に通って少しずつチェックしなければならないところ、本展に行けば、ほぼ全部楽しめてしまうのです。

2018年秋 首都圏で楽しめる、3つのオススメ仏教美術展を一挙紹介!

折しも、先日の台風24号で敷地内の建物など文化財がかなり被害を受けた醍醐寺。私も、一日も早い復興を願って、期間中何度も通って醍醐寺の歴史や美しさに思いを馳せることで、応援したいと思います。

企画展「京都・醍醐寺 真言密教の宇宙」

会期 開催中〜2018年11月11日
会場 サントリー美術館
公式サイト

自分だけのお気に入り仏像を見つけにいきましょう!

いかがでしたでしょうか? これだけ力の入った仏教美術展が、上野・日本橋・六本木と、互いにわずか数キロずつしか離れていない場所で同時に3つも開催される機会はそうそうありません!

これだけの仏像を観れば、数ある仏像の中から必ず自分のお気に入りの仏像が見つかるはずです。効率的にスケジュールを組んで1日で見て回るのも良いですし、東京観光のルートに組み込んで、思い切って遠征してみるのもいいかもしれませんね。私もすでに1回ずつ行きましたが、お気に入りのマイ仏像を見つけに、もう一度じっくりと見に行きたいと思っています!

文・写真/齋藤久嗣

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