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2019.02.14

春を先取り! 2019年注目。オススメのひな祭り展10選

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毎年2月頃になると全国各地の美術館・博物館で始まるのが、「ひな祭り」を特集展示した展覧会。ご当地の大名家や豪商に伝わった屈指の最高級品を豪華なひな壇で披露してくれる展覧会から、公民館・資料館、旧家の空き部屋などを活用して町おこしの一貫として開催される素朴なお祭りまで様々ですが、どの展示にも共通するのは、見に行けば必ず春を先取りした華やいだ気持ちになれるということ。

雛人形や雛道具には、日本美術のエッセンスが凝縮されているといっても過言ではありません。特に美術館や博物館で展示されるような高級品には、彫刻・漆工・衣装など複数分野における匠の技が惜しみなく投入されています。古いものでは江戸初期の作品から、大正・昭和初期の日本人形全盛時代まで、時代の流行を取り入れつつ、職人や名匠が心血をそそいで作り上げてきた極上のミニアチュールの世界が雛人形や雛道具なのです。

本稿では、2019年も全国各地で多数開催される展覧会やイベントの中から、編集部で厳選した、特に「オススメ」な展覧会・イベント10選をお届けします。

注目のひなまつり展1 「百段雛まつり2019 青森・秋田・山形ひな紀行」(ホテル雅叙園東京)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

ホテル雅叙園東京内の名建築「百段階段」を展示会場としたひなまつり展です。毎年この時期、日本各地の地域をテーマに「ひなまつり展」を開催してきましたが、10年目の今年は特にひな祭りが盛んな青森・秋田・山形の東北三県から、各地で秘蔵される特上の雛人形や雛飾りを展示。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
百段階段を登りながら展示を見ていきます。

昭和初期に建てられ現在は文化財の「百段階段」を一段一段登りながら、階段途中に設けられた各部屋に立ち寄って、特色あふれる東北地方の展示を見ていくと、ちょっとした旅行風情も感じられます。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
青森・七戸/盛田家のお雛さま。弦楽器を演奏する「三弦」の人形たちの精巧な作りは要注目!

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
日本三代つるし飾りの一つ、酒田市の「傘福」。よく見ると傘の色がそれぞれ微妙に違っています。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
明治期に最後の弘前藩主・津軽承昭が誂えた非常に立派な雛道具の一式セット。関東地方初公開となります。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
グッズコーナー。品数はかなり豊富です。

展示を見終わったあとは、ひな祭りに関連する様々なお土産が豊富に用意されたグッズコーナーや、ホテル雅叙園東京の建物内や庭園をゆっくり散策してみるのも良いですね。オススメの展示です。

展覧会名 百段雛まつり2019 青森・秋田・山形ひな紀行
開催場所 ホテル雅叙園東京内「百段階段」
開催期日 開催中~3月10日(日)10時~17時(最終入館16時30分)
公式サイト

注目のひなまつり展2 「岩﨑家のお雛さまと御所人形」(静嘉堂文庫美術館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

人形を愛好した三菱社の4代目・岩﨑小彌太が「世界に一つだけしかない雛人形を作って欲しい」と京都の名工・五代目大木平藏に当時の金額で2万円(※現代価格に換算すると約1~2億円と言われる)ほどを費やしたと言われる伝説の雛人形一式。

これらは第二次大戦後の混乱で岩﨑家を出て散逸してしまいますが、京都のコレクター桐村喜世美氏の尽力により、その大半が奇跡的に再集結。それらは2011年、静嘉堂文庫美術館での企画展に出品され、2018年、桐村氏の厚志により一括して寄贈されました。こうして数十年ぶりに里帰りした岩﨑家のお雛様を中心に、同館の所蔵する屈指の人形の名品も味わうことができる展覧会となっています。

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岩﨑家雛人形のうち内裏雛 五世大木平藏製 昭和時代初期/子供の姿をした内裏雛。目の中には玉眼が施されています。

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雛人形や雛道具には、全て岩﨑家の替紋が入れられています。

それ以外にも、岩﨑家旧蔵品や、2018年に桐村氏から一括寄贈された雛道具や人形たちも多数展示されていました。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
犬筥 江戸時代後期/長さ約40cmにもなる巨大な「犬筥」(いぬばこ)。上流家庭の婚礼道具の一つでした。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
這子人形 五世大木平藏製 昭和時代初期/ハイハイをする赤ちゃんを写実的に表した、五世大木平藏が特別に制作した人形。

展示後半のハイライトは、岩﨑小彌太が還暦を迎えた際、雛人形を特注した大木平藏に依頼して制作した木彫り彩色の御所人形。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
木彫彩色御所人形/昭和14年、岩﨑小彌太の還暦を祝して、夫人孝子が五世大木平藏に特別に誂えさせた全58個のかわいい御所人形たちが、七福神と童子達が練り歩くように見立てて展示されています。1体1体、服装や表情も全て異なり、見応え充分の御所人形です。

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静嘉堂文庫美術館の常連でもある八千草薫さんが、落ち着いた語り口で人形の魅力をしっかり解説してくれます。

ちなみに、本展で音声ガイドを担当するのは大ベテランの女優・八千草薫さん。静嘉堂文庫美術館を訪れるのが大好きだという彼女が、優しく語りかけるようなガイドは聴き応えありますよ!

展覧会名 ~桐村喜世美氏所蔵品受贈記念~岩﨑家のお雛さまと御所人形
開催場所 静嘉堂文庫美術館
開催期日 開催中~3月24日(日)
公式サイト

注目のひなまつり展3 「三井家のおひなさま」(三井記念美術館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

日本橋に開館以来、ほぼ毎年のように早春に開催される「三井家のおひなさま」展。今年も三井家の夫人や娘が大切にしてきたひな人形や雛道具が公開されます。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
「内裏雛」四世大木平藏製 明治33年(1900)三井記念美術館蔵

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「次郎左衛門雛」二代永徳齋製 明治〜大正時代・20世紀 三井記念美術館蔵

今年度の注目は、京都の丸平大木人形店・五世大木平藏が三井家のために精魂込めて特別に製作した、幅3メートル、高さ5段の豪華なひな段飾り。同時期に静嘉堂文庫美術館で開催されている「岩﨑家のお雛さまと御所人形」と五世大木平藏作品を見比べてみるのも面白いかもしれません。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
「丸平好み 市松人形 上巳」平田郷陽作 昭和時代初期・20世紀 丸平文庫蔵

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
「丸平好み 市松人形 雪月花の謡」平田郷陽作 昭和時代初期・20世紀 丸平文庫蔵

展示を進んで後半の展示室6・7では、1955年、人形の分野で初の人間国宝に指定された平田郷陽(1903-1981)が油の乗り切った時期に製作した新町三井家所蔵の「市松人形 銘つぼみ」はしっかり見ておきたいところ。京都・丸平文庫の所蔵品も加わり、約30体が集結したゴージャスで可愛らしい市松人形の世界を堪能できそう。

展覧会名 三井家のおひなさま 特別展示 人間国宝・平田郷陽の市松人形
開催場所 三井記念美術館
開催期日 2019年2月9日(土)~4月7日(日)
公式サイト

注目のひなまつり展4 「春を楽しむ うつわと雛まつり展」(瀬戸市新世紀工芸館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

全国各地の雛まつり展の中で、ひときわ個性的な展覧会なのが、陶磁器のメッカである瀬戸市にある、瀬戸市新世紀工芸館で開催される本展「春を楽しむ うつわと雛まつり展」。展示されるのは、木彫や紙で制作された一般的な雛人形ではなく、陶磁器やガラスで制作された個性豊かなお雛さまなのです。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
お手頃な値段で買えてしまいます。

また、雛まつりや春をモチーフにした食器類(飯椀、鉢、皿、カップ&ソーサー、グラス、酒器、茶器、箸置きなど)や花器をも同時に展示販売されるのです。展示を見て気に入った作品があれば、気軽にプロの制作した作品を購入して帰れるのも嬉しいですよね。

今回は瀬戸市を中心に、県内外から23名の陶芸作家と9名のガラス工芸作家が作品を出品し、合わせて32名による約190点もの作品が集結。瀬戸物の街、瀬戸市ならではのユニークなひなまつり展、オススメです。

展覧会名 春を楽しむ うつわと雛まつり展
開催場所 瀬戸市新世紀工芸館 交流棟2階ギャラリー
開催期日 開催中~3月10日(日)
公式サイト

注目のひなまつり展5 「春季特別企画展 お雛さま展」(博物館さがの人形の家)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

京都・嵯峨野にある、日本で唯一古人形を専門とする「博物館さがの人形の家」の春季特別企画展はズバリ「お雛さま展」。江戸時代から現代までに登場したあらゆるタイプの雛人形を、特集展示。宮廷の雛「室町雛・寛永雛」、公家雛「稚児輪雛・狩衣雛」、町雛「享保雛・古今雛」、雅楽雛・立雛など、総力特集。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

また、約20万点の館蔵品から、常時8,000点を選りすぐって展示した圧倒的な物量の常設展も見どころの一つ。嵯峨人形・御所人形・賀茂人形・からくり人形・衣裳人形・竹田人形・ミニチュア人形・全国の郷土人形等を展示しています。

特に仕掛けを動かして実演展示されるからくり人形や、実際にさわって楽しめる動く玩具なども用意されています。京都観光と合わせて、ぜひ楽しんでみて下さい!

展覧会名 春季特別企画展 お雛さま展
開催場所 博物館さがの人形の家
開催期日 2019年2月20日(水)~3月31日(日)
公式サイト

注目のひなまつり展6 「鶴岡雛物語」(致道博物館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

庄内雛街道の中心地・鶴岡市。市内各所でも雛まつりの関連展示や各種イベント、スタンプラリーなど様々な催しが開催され、街全体が華やかな雰囲気で盛り上がる中、致道博物館では今年も25回目となる恒例の企画展「鶴岡雛物語」を開催。

今年度も、同館の「御隠殿(藩士の隠居用に建てられた屋敷。現存するのはその一部)」には所蔵の各大名家由来の雛人形・雛道具がズラリ勢揃い。旧庄内藩主酒井家伝来の雛人形、田安徳川家や熊本藩細川家から輿入れした姫君持参の雛道具など、ゴージャスな雛飾りを楽しんでみて下さい。また、東北地方では初公開となる日本屈指の雛人形・郷土玩具コレクター、赤池正明氏の所蔵品を展示。雛人形の歴史を一望できる好展示になりそう。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
有職雛(酒井家蔵)江戸時代後期、京製

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
田安徳川家葵紋入雛道具(酒井家蔵)江戸後期、江戸池の端七沢屋製

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
貝合わせ 庄内藩酒井家酢漿草紋・熊本藩細川家九曜紋入雛道具より(致道博物館蔵)江戸中期 ※この雛道具一式は、2017年に山形県指定有形文化財となりました。雛人形や雛道具関連で「文化財指定」を受けた作品は非常に少ないので、如何に貴重な作品かわかりますね。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
芥子雛(酒井家蔵)江戸時代後期、江戸製

展覧会名 鶴岡雛物語
開催場所 致道博物館(旧庄内藩主御隠殿)
開催期日 2019年3月1日(金)~4月3日(水)
公式サイト

注目のひなまつり展7 「特別展 尾張徳川家の雛まつり」&「企画展ひなを楽しむ-旧家のひな飾り-」(徳川美術館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

徳川美術館で開催される2019年の雛まつり展は、豪華2本立てです! その内容は非常に対照的。まず最初に見たいのは、「特別展 尾張徳川家の雛まつり」。展覧会では、名古屋の旧家・中村家に伝来する尾張徳川家の雛人形。五摂家筆頭の近衛家より、尾張徳川家に嫁いだ福君が嫁入り道具として持参した、江戸時代屈指の名品なのです。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
中村家の雛飾り 明和7(1770)年 徳川美術館蔵

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
尾張徳川家 三世代の雛段飾り 明治-昭和時代19-20 世紀 個人蔵/男雛の装束の生地は、12 代将軍家慶が東照宮参拝用に誂えた裂(きれ)と同じ裂が使われています。

雛人形は姫君の分身でもあり、姫君自身の婚礼調度と同じように細部まで精巧に作り込まれた雛道具は、江戸時代の超絶技巧工芸ファン必見。小さな鏡台に添えられた指の先ほどの化粧道具など、当時最高のミニアチュールが、徳川美術館には日本一の規模で残されているのです。

続いて、「企画展ひなを楽しむ-旧家のひな飾り-」を見てみましょう。こちらは、特別展で披露されたゴージャスなセットとは対照的に、江戸から昭和の町なかを飾った、素朴で親しみやすいお雛様がずらりと並びます。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
次郎左衛門雛 個人蔵/地元・尾張に伝わる郷土玩具の「土雛」や、可愛らしいまん丸な顔が特徴の「次郎左衛門雛」などが公開されています。

徳川美術館秘蔵の、バラエティ豊かな雛人形・雛道具のコレクションを心ゆくまで楽しんでみてくださいね。

展覧会名 「特別展 尾張徳川家の雛まつり」&「企画展ひなを楽しむ-旧家のひな飾り-」特別展 尾張徳川家の雛まつり
開催場所 徳川美術館
開催期日 2019年2月9日(土)~4月7日(日)
公式サイト

注目のひなまつり展8 「特集展示 雛まつりと人形」(京都国立博物館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

京都国立博物館で2月上旬~3月中旬頃まで開催される恒例の特集展示「雛まつりと人形」。今年は、御殿飾り雛を中心に、江戸時代に流行した各種の雛人形を揃え、その変遷をたどります。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
御殿飾り雛(京都国立博物館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
からくり人形 大黒春駒(京都国立博物館)

江戸時代には、雛人形だけでなく様々なタイプの人形が誕生しましたが、多くは京都が発祥の地と言われています。極彩色で彩られた木彫の嵯峨人形・胡粉が塗り重ねられて白く美しい御所人形・柳や黄楊の質感を生かしつつ、縮緬(ちりめん)や金襴が美しい賀茂人形など、京都の地名が付けられた伝統的な京人形を見比べて楽しむこともできます。

なお、京都国立博物館のHPには、2015年に制作された鑑賞ガイドがダウンロードできるようになっています。
ダウンロードする
なお、今年度のリーフレットは2月13日から以下展覧会HPにて公開中。展示と合わせてリーフレットを見ておくと、鑑賞の満足度が高まりそう!

展覧会名 特集展示 雛まつりと人形
開催場所 京都国立博物館
開催期日 2019年2月13日(水)~3月17日(日)
公式サイト

注目のひなまつり展9 「子どもたちの成長を祝う 本間美術館のひな祭り」(本間美術館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

江戸初期に商人・河村瑞賢によって開かれた海上輸送の「西廻り航路」の重要拠点として名高い酒田。街中には今も旧家の史跡をみることができ、かつて豪商たちが買い求めた京都製の雛人形も多数残されています。そのため、江戸時代より酒田では雛飾り文化が発達。柳川の「さげもん」、稲取の「つるし雛」とともに、「日本三大つるし飾り」と名高い「傘福」が有名です。

酒田市では、毎年この時期になると街を挙げて「酒田雛街道」という雛まつりイベントを開催しており、その中心地となるのが日本一の大地主といわれた本間家の旧別荘を活用して開かれた「本間美術館」。同館では、昭和23年より雛祭り展示を継続実施中。北前船によってもたらされた京雛と、御所人形や衣装人形などの古典人形が多数展示されています。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
享保雛 江戸時代後期(本間美術館藏)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
御所人形 三番叟 延享年間(本間美術館藏)

「酒田雛街道」に来たら、ぜひ本間美術館の雛祭り展示をどうぞ!

展覧会名 子どもたちの成長を祝う 本間美術館のひな祭り
開催場所 本間美術館
開催期日 2019年2月23日(土)~4月8日(月)
公式サイト

注目のひなまつり展10 「名工・永徳齋の人形-旧安田楠雄家の節句飾りと紙鳶洞コレクション」(佐野美術館)

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

明治~昭和にかけて皇室や旧公家・大名家、財閥向けの最高級品を制作し続けた名工・永徳齋。本展では、三代永徳齋の手による雛飾りと五月飾りおよび、旧安田楠雄家の凧絵や日本人形のコレクターとして名を知られる林直輝氏が蒐集した日本の伝統的な人形や玩具に関する数万点にのぼる資料群「紙鳶洞(しえんどう)コレクション」より武者人形を中心とした永徳齋各代の名品を紹介。佐野美術館で所蔵する雛人形、雛飾りなども併せて展示されています。

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
旧安田楠雄家節句飾り 雛飾り<内裏雛> 三代永徳齋作 1933年 公益財団法人日本ナショナルトラスト蔵 撮影/高村規 資料提供/高村達

本展で特に注目してみたいのが、永徳齋が手がけた武者人形。竿立ちした馬上で甲冑姿に身を包んだ楠木正行公が勇ましい「馬乗小楠公」をはじめ、永徳齋ならではの緊張感の漂う「漢」を感じさせる人形群は必見!

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
日本武尊 三代永徳齋作 紙鳶洞コレクション

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選
馬乗小楠公 三代永徳齋作 紙鳶洞コレクション/戦場にあって、今にも駆け出しそうな「動き」のある人形です。

展覧会名 名工・永徳齋の人形-旧安田楠雄家の節句飾りと紙鳶洞コレクション
開催場所 佐野美術館
開催期日 2019年3月2日(土)~4月7日(日)
公式サイト

各地で工夫を凝らしたひなまつり展が開催! 旅行とセットで楽しんでみよう

春を先取り! 2019年に注目したい、オススメのひな祭り展10選

いかがでしたでしょうか?本稿では、全国各地のひな祭り展から、屈指の好展示を厳選して紹介させて頂きました。こうして見返してみると東京や大阪といった大都市圏の展覧会よりも、地方で開催される優れた展覧会が多いことに気付かされます。特に「酒田雛街道」「鶴岡雛物語」など、街全体でご当地の特色を上手に打ち出しながらひな祭りを盛大にお祝いする地域も多く、日本におけるひな祭り文化の多様性や豊かさを実感することができました。

せっかくなので、こうした地方ならではの特色あるひな祭り展を、観光を兼ねて楽しんで見るのも良いと思います。ご当地の歴史を感じながら、春を先取りできる「ひな祭り展」、ぜひ自分なりの楽しみ方で観て回ってみてくださいね。

文・写真/齋藤 久嗣

書いた人

サラリーマン生活に疲れ、40歳で突如会社を退職。日々の始末書提出で鍛えた長文作成能力を活かし、ブログ一本で生活をしてみようと思い立って3年。主夫業をこなす傍ら、美術館・博物館の面白さにハマり、子供と共に全国の展覧会に出没しては10000字オーバーの長文まとめ記事を嬉々として書き散らしている。