シネマで楽しむ美術鑑賞! アート・美術がテーマのおすすめ映画10選

シネマで楽しむ美術鑑賞! アート・美術がテーマのおすすめ映画10選

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ここ数年、VR技術の発達、ネット配信の普及などにより、映画館や自宅で、映像作品を通してアートを楽しむ機会が増えてきています。特に、アメリカ・ハリウッド以外で制作されたアート関連の良質な伝記映画やドキュメンタリーが、配信やDVD/ブルーレイディスクといった形で手に入りやすくなってきているのは、アートファンには喜ばしいことですね。そこで、本稿では「アート・美術」を題材にした非常に多くの映画の中から、特にオススメしたい良作を厳選して紹介してみたいと思います。今回は、

・AmazonやNetflix等大手メディアでネット配信されている
・または、DVDやブルーレイディスクが絶版になっていない
・おもしろくてわかりやすい

この3つの条件を大前提に、初心者でも面白く観ることができて、同時にアートについての教養も身につく良作を10作品選んで紹介してみました。それではいってみましょう。

オススメ映画1「真珠の耳飾りの少女」(2004)

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フェルメールの名画「真珠の耳飾りの少女」をテーマとして制作されたイギリス映画です。徹底的な時代考証により、映画内で再現された17世紀オランダの美しい街並みや登場人物達の服装、室内での生活風景など、フェルメール作品がそのまま映像に再現されたかのような作り込みは驚異的。実際、こだわり抜いた映像美は発表当時も高く評価され、第76回アカデミー賞で撮影賞・美術賞・衣裳デザイン賞の3部門にノミネートされたほどでした。

キャスト陣も豪華で、フェルメール役には演技力に定評のあるイギリス人俳優コリン・ファースが起用され、ヒロイン役の”真珠の耳飾りの少女“グリート”役では、今やハリウッドを代表する女優へと成長したスカーレット・ヨハンソンのデビュー当時の清新な演技が楽しめます。2019年も東京・大阪で開催される「フェルメール展」の予習・復習にも最適。アート映画の面白さをしっかり楽しめるハイクオリティな作品です。

オススメ映画2「百日紅 ~Miss HOKUSAI~」(2015)

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杉浦日向子が1980年代に発表した原作マンガのストーリーをベースにして、葛飾北斎の娘「お栄」こと葛飾応為を主役としたアニメ映画です。映画では、応為がまだ20代前半の時、渓斎英泉、魚屋北渓らと共に北斎のアシスタントとして下町の長屋に住み込みで働いていた時期を取り上げています。

映画でのお栄は、非常に芯が強く男勝りでありながら、女性らしい優しさや几帳面さも持ち合わせた魅力的なキャラクターとして描かれます。浮世絵職人たちの圧倒的な男社会の中でも一歩も退かない強さを見せる一方で、職人としてはまだ半人前。技量自体は十分ながら、人生経験不足からケレン味のある作品が描けず、父・北斎の長屋での工房で寝泊まりするほど仕事に打ち込みつつ、多忙な画家修業を送っています。

ストーリーは多忙な浮世絵職人稼業と、その合間に挟まれる盲目の妹・お猶との心温まる交流など日常系の人情話が中心となっていますが、アニメならではのファンタジー描写も交えて葛飾応為の画業のルーツにもさりげなく迫っている点も見逃せません。

近年アニメ映画制作では世界的に評価を得ているProduction IGが制作しているだけあって、クオリティも抜群。北斎ら浮世絵職人達の生き様や、江戸時代の町人の生活風景や娯楽風俗を情感豊かにいきいきと表現した傑作です。

オススメ映画3「ゴッホ~最期の手紙~」(2017)

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「ゴッホ 最期の手紙」DVD&Blu-ray発売中
DVD 4,800円 (税抜)/Blu-ray 5,800円 (税抜) 販売元:ハピネット
(C) Loving Vincent Sp. z o.o/ Loving Vincent ltd.

ゴッホをテーマとした伝記映画は過去にいくつも制作されていますが、本作が凄い点は、映画史上世界初となる「油絵による長編アニメーション作品」であること。125名ものプロの画家を起用し、アニメの元となる絵を1枚1枚ゴッホの作風を再現しながらキャンバスに描き、最終的には約62,450枚の油絵で約90分の「動く油絵」にしてしまったのです。もちろん、代表作「星月夜」「夜のカフェテラス」「黄色い家」「夜のカフェ」など、ゴッホが生前描いた人気作品もアニメの中でちゃんと出てきますし、タンギー爺さんや郵便夫ジョセフ・ルーラン、そしてゴッホ自らの自画像も登場するなど、ファン必見のカットが無数に用意されています。

肝心のストーリーも出来栄えがよく、37歳にしてオーベルニュの畑で拳銃自殺を図って亡くなったとされるゴッホの謎多き「死」に対して、なぜ彼が若くして死ななければならなかったのか、他殺説なども含めて掘り下げていくサスペンスタッチの推理ドキュメンタリーとなっています。2018年日本公開作品ながら、すでにDVD・ブルーレイディスクも発売され、レンタル・配信も始まっています。圧倒的にゴッホ愛に満ちた驚異の1作。アートファンなら観て損なしの凄まじい作品です。

オススメ映画4「バスキア」(1997)

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近年、テーマや切り口を工夫したバスキアのドキュメンタリー映画公開が続いていますが、本作「バスキア」はそんなバスキア映画の草分け的存在。亡くなって約9年後に制作されたインディペンデント映画ですが、ブレイクする直前からドラッグの過剰摂取で亡くなるまで、バスキアの後半生を包括的に描いた伝記映画として非常によくまとまっています。アンディ・ウォーホール役にデヴィッド・ボウイが起用されていたり、若き日のゲイリー・オールドマン、ベニチオ・デル・トロ、現在世界的に活躍する俳優たちもキャスト陣に名前を連ね、制作されてから20年経過した現在でも非常に新鮮な気持ちで観ることができます。

ちょうど2019年2月現在、ブレイク前である10代の3年間(1988年~91年)に特化して当時の友人や関係者たちのインタビュー等で若き日のバスキア像を振り返るユニークなドキュメンタリー映画「バスキア、10代最後のとき」が上映中。これと一緒に見てから、2019年秋の「バスキア展」(森アーツセンターギャラリー)に臨むと、よい予習になりそうです。

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オススメ映画5「ルノワール 陽だまりの裸婦」(2013)

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モネ、マネ、セザンヌなど印象派の巨匠たちはこれまでに伝記映画が多数制作されています。中でも屈指の出来だと言えるのが、ルノワール晩年の南仏での生活風景を作品化した本作。本作では、ルノワール自身だけでなく、戦前を代表する映画監督として大成した二男、ジャン・ルノワールと晩年のルノワールのヌードモデルを努め、ジャンの映画で俳優として活躍したカトリーヌ・エスラン(愛称:デデ)の3人が主役として描かれます。

物語は1915年、長男・二男を第一次世界大戦に駆り出され、自身は重度のリューマチで車椅子生活となって失意の日々を送る中、ルノワール好みの若いヌードモデル・デデとの出会いからスタートします。南仏・コートダジュールの光あふれる風景美、老齢になってもなおマイペースに戸外で創作を続けるルノワールの心のうちに秘めた制作意欲や、戦地から戻ってきたジャンとデデが次第に惹かれていく描写など、繊細かつ美しく表現された映像美が見どころ。直接の性交渉を描くシーンはないものの、どこか非日常性を帯びた画家一家の生活風景の中に表現されたフランス映画らしいエロティシズムも秀逸でした。

オススメ映画6「ミケランジェロの暗号」(2011)

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フィクション/ノンフィクションを問わず、「黄金のアデーレ 名画の帰還」「ミケランジェロ・プロジェクト」など、第二次世界大戦中のナチスドイツと関連して戦時下における名画の盗難、贋作、略奪などをテーマとした佳作はこれまでにも数多く発表されてきています。中でも、筆者が推したい作品は本作です。

物語では、オーストリアで画廊を営むユダヤ人画商の息子が家宝として守り継いできたミケランジェロの素描がナチスに目をつけられまずが、主人公は自らの安全と家宝を守るため、虚々実々の命がけの駆け引きでナチスと渡り合います。歴史的な考証に即したフィクション作品ですが、必要以上に重苦しくならず、あくまで痛快なアクション・サスペンスとしてコメディタッチを含ませて軽快に仕上げた点が素晴らしいのです。第二次大戦中におけるナチスドイツと美術品の意外な関係を学べる上に、しっかり楽しめる娯楽作品です。

オススメ映画7「ビッグ・アイズ」(2015)

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実話伝記作品は、広くストーリーが知られている巨匠モノだけでなく、無名の知る人ぞ知る市井のアーティストを取り上げた秀作も数多くリリースされています。「本当にこれ実話なの?」と思わず疑いたくなるような奇想天外なストーリーや、心温まる感動秘話まで数多くありますが、ストーリーの「意外性」ではこの「ビッグ・アイズ」が一番。

DVに耐えかねて娘を連れて家を出たマーガレット・キーンが、新天地で生活費を稼ぐため露天で似顔絵描きをしていたところ、画家のウォルターと出会い、再婚しますが、再婚後、マーガレットの個性的な「大きな目」の人物画はウォルターの営業活動の結果大ブレイク。しかしウォルターはマーガレットの作品を自らが描いた喧伝して表舞台に立ち、名誉を独り占め。自宅に半幽閉され、夫の下請けとして描くだけの鬱屈した日々に耐えかねたマーガレットとウォルターの夫婦関係は壊れていきますが、物語はそこからさらに意外な展開へと流れていきます。ちなみに今も本作の主人公、マーガレット・キーンは存命中です。

オススメ映画8「鑑定士と顔のない依頼人」(2013)

シネマで楽しむ美術鑑賞! アート・美術がテーマのおすすめ映画10選

アートを題材とした映画では、巨匠による伝説の名画などを巡って「贋作」「盗難」をめぐる法廷サスペンスや追跡劇において、しばしば「鑑定士」が活躍するシーンが描かれますが、本作は個性的な登場人物の設定と、終盤のスリリングなどんでん返しが魅力的なフィクション作品。

全編イタリアロケで制作された美しい映像美の中で、気難しい初老の鑑定士と、人前に出るのが苦手なミステリアスな美しい依頼人が、古美術の鑑定作業を行う中で恋に落ちていくストーリーがみどころです。「そんなうまい話があるか!」と突っ込みながら観ていたら、ストーリーは終盤にかけて意外性あふれる怒涛の展開に。ネタバレ厳禁なので何がどう面白いのかこれ以上書けないもどかしさはあるのですが、ラストの衝撃展開を期待して、ぜひチェックしてみて下さい!

オススメ映画9「メットガラ ドレスをまとった美術館」(2017)

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販売:アルバトロス

ここ数年、展覧会の企画・制作や運営にかかわる裏方の作業にフォーカスした、いわゆる「美術館の舞台裏」を特集したアートドキュメンタリーが多くリリースされていますが、本作は中でも一番のオススメ。本作は、ニューヨーク・メトロポリタン美術館で年に1回開催される世界最大規模でのファッションの祭典イベント「メットガラ」と、イベントに関連した展覧会制作について、そのメイキングシーンを綿密な取材に基づいて編集した実直なドキュメンタリー。

「そこまで出しちゃっていいの?」と思えるような赤裸々な本音トークや、ファッション業界のカリスマ、VOGUE編集長、アナ・ウインター(映画「プラダを着た悪魔」でも有名)とのピリピリした緊張感溢れる打ち合わせシーンなど、ドキュメンタリーの面白さを凝縮した作品に仕上がっています。数年がかりで展覧会の準備を行い、関係者の利害調整や噴出する問題・課題に対して臨機応変に対処しながらプロジェクト管理にあたる世界トップキュレーターの激務ぶりはただただ凄まじいの一言です。

オススメ映画10「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(2018)

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「ザ・スクエア 思いやりの聖域」DVD&Blu-ray発売中
DVD 3,900円 (税抜) Blu-ray 4,800円 (税抜) 販売元:ハピネット
(C)2017 Plattform Prodtion AB / Societe Parisienne de Production / Essential Filmproduktion GmbH / Coproduction Office ApS

2017年、カンヌ国際映画祭にて最高賞「パルム・ドール」を獲得したスウェーデンのフィクション作品。現代アートを専門とする王宮美術館において人間の差別意識や貧富の格差に問題意識を投げかけた「ザ・スクエア」という新作インスタレーションの宣伝告知を巡る炎上劇と、展覧会期間中、主人公であるチーフキュレーターが遭遇した万引き事件への拙い対処が引き起こす波紋とが、同時並行でシンクロしながら描かれる風刺ドラマです。

物語では、デュシャン以来現代アートの主要テーマの一つである「何がアートで何がアートでないのか」アートと非アートの境界線をはじめ、現代アート界隈の抱える様々な矛盾点や限界が風刺たっぷりに描かれます。ストーリーの核心では社会的な文脈や環境が変われば、人間がいかに醜悪で狡い行動を取りうるのか、主人公やその周囲の人々の愚かさをコミカルなタッチでこれでもかとあぶりだしてきます。

正直なところ、心温まる感動ストーリーとは正反対の、思わず目を背けたくなるような胸糞悪いシーンが多いのですが、不思議とスクリーンから目が離せず、何度も見返してはいろいろ考えてみたくなる高品質な作品です。

オススメ映画11「FOUJITA」(2015)

シネマで楽しむ美術鑑賞! アート・美術がテーマのおすすめ映画10選

最後に、おまけとして日本人監督が制作した本格的な実写映画を1つ紹介させて下さい。小栗康平監督が約10年ぶりにリリースした日仏両国でロケを行った、藤田嗣治の内面世界に光を当てた作品「FOUJITA」です。藤田嗣治は、時代の波に翻弄されながら次々に活動場所や作風を変え、謎多き人生を送りました。戦前にパリで大成功を収め、画壇の寵児として大活躍していたにもかかわらず、その後メキシコでの絵画修業を経て日本へ帰国。日本では一転して戦争協力画を描き、終戦後はフランスへ渡り、現地でキリスト教へ改宗して日本に戻らないまま亡くなるなど、まさに激動の人生でした。

本作では、そんな藤田嗣治の人生における対照的な2つの時期に焦点を絞って、小栗監督の独自視点で徹底的に彼の内面を掘り下げています。爛熟期を迎え最後の輝きを放つパリのモンパルナスで、エコール・ド・パリの代表格として大活躍していた華やかな1920年代の全盛期を描いた前半から一転して、後半は日本へ帰国後、疎開先での生活風景が描かれます。そこは、地味で水墨画のようなモノトーンな世界。映画はいよいよ藤田の内面世界へと切り込んでいきます。そして最後にはセリフも消えて観念的な映像世界のみが映し出されます。

状況説明もほとんどなく、起伏のあるストーリーなど「わかりやすさ」を支えるための要素がバッサリ斬られているので、正直なところ初心者向けとは言い難いのですが、代わりに、小栗監督が考える「藤田嗣治に見えていたであろう世界」が一貫して映画の中で表現されています。ぜひ、藤田の心情に寄り添って、一体彼にはどんな世界が見えていたのか、小栗監督の作家性がたっぷり投影された映像世界を見ながらじっくり考えてみるのも面白いかもしれません。

面白い作品はまだまだある! 展覧会とセットで楽しもう

いかがでしたでしょうか?映画史上、非常に多数のアート関連作品が発表されてきましたが、特に2010年代に入ってからは佳作が目立つようになってきています。ここで選んだ10作品以外にも、まだまだたくさん良い作品があります。展覧会とセットで楽しむと、また違った角度から作家の人間性や作風を見ることができるので、楽しみながら教養も深めることができますよ。ぜひ、ご自身で色々と探してみてくださいね。

文/齋藤久嗣

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