編集部厳選!2019年6月にオススメしたいとっておきの美術展10選!

編集部厳選!2019年6月にオススメしたいとっておきの美術展10選!

目次

2019年も気づいたらあっという間に折り返し地点が近づいてきました。史上最大のGW10連休での遊び疲れも癒えてきて、そろそろまた美術鑑賞へのモチベーションが戻ってきた頃なのではないでしょうか?

さて、6月は、毎年ちょうど春の大型展が一段落し、各美術館・博物館では夏休み向けの展覧会がスタートするまでの「合間」でもあります。こういった時期は、実験的な企画展や斬新なテーマを設定した”尖った”展覧会が増える傾向にあります。また、日本画の展覧会だと季節柄「雨」をテーマとした情緒たっぷりの作品も展示されることが多いもの。今回は全国各地で開催される美術展の中から、日本美術を中心に「趣向を凝らした」展覧会を選んで紹介していきます。

オススメ展覧会1:夏季特別展「美人画 うるわしき女性美の世界」(足立美術館)

2019年は上村松園没後70年。そこで、戦前~昭和にかけて「美人画」の名品を多数所蔵する足立美術館では、夏季特別展として同館では8年ぶりの開催となる美人画展「美人画 うるわしき女性美の世界」を開催。

まず本展で絶対見ておきたいのが、同館が誇る上村松園の優品全4点。戦前に活躍した女流日本画家として不動の人気を誇る上村松園は、外見の見た目だけでなく、内面からにじみ出る女性の本質的な美しさを描く名手でした。そんな松園作品の中でも、足立美術館が所蔵する4点は繊細さと気品を兼ね備えた秀作揃い。会場に到着したら、まずは松園の作品をじっくり見て下さい。

上村松園「娘深雪」大正3年(1914)
上村松園「牡丹雪」昭和19年(1944)

上村松園以外にも、近代日本画の描き手において松園と東西の巨匠と並び称された鏑木清方をはじめ、伊東深水、菊池契月、伊藤小坡、寺島紫明、横山大観など、ビッグネームの作品がずらり。

菊池契月「菖蒲」昭和10年(1935)
寺島紫明「美人」昭和30年(1955)
伊藤小坡「一聲」昭和6年(1931)頃

意外なオススメなのが、ここ足立美術館で所蔵している地元島根県出身の現代美人画家・石本正の作品です。着物のはだけた妖艶なヌードをはじめ、女性の美しさを様々なポーズで描き続けた個性あふれる石本ワールドが堪能できるのは、地元ならでは。ぜひ堪能してみて下さいね。

石本正「舞妓立像」昭和63年(1988)頃

全37点の展示では、大正時代から昭和後期まで様々な時代の作品を楽しむことができます。時代の移り変わりとともに、表現が多様化し、画家たちの作風が変わっていく様子を見比べてみるのも面白いかも知れませんね。毎週土・日・祝日の10時~、14時~と非常に頻繁に開催されているギャラリートークも是非活用してみてください!

展覧会名:夏季特別展「美人画 うるわしき女性美の世界」
会場:足立美術館(島根県安来市古川町320)
会期:2019年6月1日(土)~8月30日(金)
公式サイト

オススメ展覧会2:板橋区美×千葉市美 日本美術コレクション展 ―夢のCHITABASHI美術館!?(千葉市美術館)

首都圏の美術館の中でも、千葉市美術館と板橋区立美術館の両館は、特に日本美術のコレクションが充実したミュージアムとして知られています。そこで今回企画されたのが、6月末まで改修工事によって板橋区立美術館が休館中となっているタイミングを活用した両館のコラボ展示企画です。

その展覧会名はズバリシンプルに「ちたばし」。展覧会名の絶妙なわかりやすさとゆるさから、「これは面白い企画になるのでは?!」と否が応でも期待してしまいますよね。

さっそくプレスリリースに沿ってご紹介しましょう。コラボ企画ではまず「江戸琳派とその周辺」「幕末・明治の技巧派」に焦点を当てて2館から選りすぐった作品を展示します。まず、「江戸琳派とその周辺」では、俵屋宗達、尾形光琳から酒井抱一、鈴木其一、山本光一まで時代を追って琳派の系譜をたどっていきます。

鈴木其一「芒野図屏風」江戸時代(19世紀)千葉市美術館蔵

一方、「幕末・明治の技巧派」では、柴田是真、岡本秋暉、小原古邨と最近特に人気が高まりつつある超絶技巧を駆使した絵師を特集。

岡本秋暉「百花一瓶図」19世紀(江戸時代)摘水軒記念文化振興財団
小原古邨「月に木菟」1912-1867 (明治時代末期) 千葉市美術館蔵

展示後半では2館のお家芸を活かしたテーマということで、まずは「ちたばし個性派選手権」と銘打ったコーナーを設置。雪村、英一蝶、渓斎英泉ら、独自の絵画世界を築き上げた個性派絵師を大特集します。

そして、最後の特集は「江戸の洋風画」。板橋区立美術館に寄託されている、秋田蘭画などを中心とした歸空庵(きくうあん)コレクションを核として、司馬江漢、亜欧堂田善、小田野直武らの作品を一挙に展観。日本画伝統の岩絵の具を用いながらも、西洋画の絵画技法を貪欲に取り入れて描かれた江戸時代の洋風画の魅力をたっぷり味わえそう。

小田野直武「岩に牡丹図」18世紀(江戸時代)歸空庵

わずか23日間と非常に短い期間ではありますが、江戸絵画における両館屈指のコレクション約120点が出品。出し惜しみ一切なしで、非常に力が入った展覧会です。それなのに、わずか200円と、スターバックスでアイスコーヒーを飲むよりも安く観られる非常にお得な展覧会。日本美術好きなら絶対に行っておきたい展覧会です!

展覧会名:「板橋区美×千葉市美 日本美術コレクション展 ―夢のCHITABASHI美術館!?」
会場:千葉市美術館(千葉県千葉市中央区中央3丁目10−8)
会期:2019年6月1日(土)~6月23日(日)
公式サイト

オススメ展覧会3:「ご存知ですか?大坂画壇」(八幡市立松花堂美術館)

2019年は東西の日本美術に強い美術館で、相次いで「京都画壇」の画家を特集した展覧会が花盛り。伊藤若冲や円山応挙、池大雅、与謝蕪村などの巨匠よりも知名度の劣る画家にも少しずつスポットライトが当たりはじめ、18世紀後半頃から連綿と続く円山四条派を中心とした京都画壇が全国的に認知されつつあるようです。

では、京都画壇同様、大坂画壇というべき大坂の絵師たちについてはいかがでしょうか?残念ながら、大坂系の絵師たちについてはまだまだ京都画壇に比べて知名度で劣る状況が続いており、実力ある良い画家が熱心なファンに見つかるのを待っている状況です。

八幡市立松花堂美術館では、こうした状況に一石を投じるため、この夏とっておきの企画展を計画。それが、大坂画壇の画家たちを収集している個人コレクターと協力して開催される企画展「ご存知ですか?大坂画壇」です。

本展では、江戸時代から近代にかけて大坂で活躍したあらゆるタイプの絵師を網羅した40点ほどの作品が集結。円山四条派の流れを汲む画家、浮世絵師、文人画家など、「大坂」をキーワードとした様々な「知られざる」名手たちが、来館者に発掘されるのを今か今かと待っているのです!

では、早速「予習」ということで、展覧会で出品される作品をザーッと見ていただきましょう!

長山孔寅「駱駝図」個人蔵
上田公長「枯木唐鳥図」個人蔵
耳鳥齋「歳晩図」個人蔵
中井芳瀧「官女図」個人蔵
森周峰「観月図」個人蔵

いかがでしょうか?長山孔寅、上田公長、森周峰、耳鳥齋、中井芳瀧・・・。ひょっとしたら、関西圏以外に住んでいる方には、耳慣れない絵師ばかりなのかもしれません。でも、見て頂いたとおり実力は折り紙付きですよね?!

まだまだ全国的に知られていない「大坂画壇」。その入門編として、名手たちの作品をまとめて知ることができるオススメの展覧会です。併設されている松花堂庭園でも、青竹や青もみじが初夏の見頃を迎えています。こちらも是非セットで味わってみてくださいね。

展覧会名:「2019年初夏展 ご存知ですか?大坂画壇」
会場:八幡市立松花堂美術館(京都府八幡市八幡女郎花43-1)
会期:2019年5月25日(土)~7月7日(日)
公式サイト

オススメ展覧会4:「生誕125年記念 速水御舟」(山種美術館)

熱心な日本画ファンからは、「御舟美術館」と愛称で呼ばれるほど、国内の美術館では最大規模となる全120点もの速水御舟コレクションを所蔵する山種美術館。そのコレクションが形成されたのは1976年、旧安宅産業コレクションの御舟作品105点を一括購入したことがきっかけでした。同館では、過去にも頻繁に速水御舟を特集する企画展・特別展を開催してきましたが、2019年の御舟展では、なんと同館が所蔵する速水御舟コレクション全点を公開しているのです!

速水御舟は、約40年と非常に短い生涯の中で、短期間の間に作風を次々と変えながら自らが目指す理想の日本画を追求していきました。山種美術館では、初期作品から晩年期の作品まで各時期を代表する傑作群を所蔵。ミュージアムショップでもグッズのモチーフに頻繁に取り上げられ、重要文化財にも指定されている人気作「名樹散椿」(めいじゅちりつばき)「炎舞」(えんぶ)をはじめ、初夏にぴったりな四曲一双の大作「翠苔緑芝」(すいたいりょくし)など、代表作品をまとめて一気にチェックするチャンスです。

速水御舟「名樹散椿」【重要文化財】1929(昭和4)年 紙本金地・彩色 山種美術館 [前期展示 6/8-7/7]
速水御舟「翠苔緑芝」1928(昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
速水御舟「炎舞」【重要文化財】1925(大正14)年 絹本・彩色 山種美術館

意外なところでぜひおすすめしたい作品が、何気ない農家の日常風景を捉えながら、どこか現実味がなく幻想的な「春昼」でしょうか。入り口の奥に広がっている暗闇には一体何が潜んでいるのでしょうか。人気のない画面には、ホラー的な要素さえ感じます。写真ではなく、ぜひ現物を見て不思議な魅力を感じてほしい1作です。

速水御舟「春昼」1924(大正13)年 絹本・彩色 山種美術館

また、最晩年に描かれた1対の作品「あけぼの・春の宵」も必見。この2幅の作品には色のついた紙が用いられており、「あけぼの」での柳の繊細な線描、「春の宵」でのはかなく散りゆく桜の花びらの表現は、御舟がかつて極めた細密描写と、その後取り入れた琳派的なデザイン感覚が絶妙に融合。御舟の集大成的な晩年の傑作です。

速水御舟「あけぼの・春の宵」1934(昭和9)年 紙本・彩色 山種美術館
2019年は、広尾移転開館10周年を記念した記念展を開催中の山種美術館。「特別展」という名にふさわしい、速水御舟の「全て」を味わえると言っても過言ではない非常に力の入った展覧会です!

展覧会名:「【山種美術館 広尾開館10周年記念特別展】生誕125年記念 速水御舟」
会場:山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
会期:2019年6月8日(土)~8月4日(日)
※会期中、一部展示替えあり(前期: 6/8-7/7、後期: 7/9-8/4)
公式サイト

オススメ展覧会5:「知られざる?!大和文華館コレクション」(大和文華館)

大和文華館といえば、古美術を専門とする関西屈指の名品が揃った私立美術館。閑静な高級住宅街に囲まれた広大な敷地は、一歩入るとまるで都会とは別世界のような優雅な空間が広がっています。広大な庭園には季節の草花がよく手入れされており、展示だけでなく建物や敷地も含めてじっくりと味わえるので、筆者もお気に入りの美術館なのです。

さてそんな同館に対する一般的なイメージですが、琳派作品、中国や朝鮮の古美術や茶道具、僧侶や茶人の書跡が充実している・・・という印象がありますよね?

しかし、それだけでは終わらないのが大和文華館の懐の深いところ。開館以来コレクションを拡充し続けてきた同館には、実はそれら以外にもまだまだ知られざる名品が揃っているのです。今回の「知られざる?!大和文華館コレクション」では、まさにそうした同館のイメージとは(良い意味で)少しかけ離れた意外性のある所蔵品や、普段なかなか企画展などで紹介されてこなかった、出品機会が少なかった所蔵品に焦点を当てて展示が構成されています。

今回、その中でも特に注目したいのが、古代遺跡からの美しい出土品です。

「犬塑像」大和文華館蔵
「土偶立像」大和文華館蔵

原三渓ごのみの茶道具を始めとした古美術専門の美術館なのかと思いきや、なんと縄文時代や古墳時代といった古代以前の名品も所蔵しているんですよね。これは意外でした。同館の熱心なファンの方でも、新鮮な気持ちで観ることができるのではないでしょうか?

これを逃したらまた次はいつ観ることができるかもわかりません。ぜひ、大和文華館の「知られざる」コレクションを堪能してみてくださいね。

展覧会名:「知られざる?!大和文華館コレクション」
会場:大和文華館(奈良県奈良市学園南1-11-6)
会期:2019年5月24日(金)~7月7日(日)
公式サイト

オススメ展覧会6:水野コレクション「日本画デラックス ー雅邦、大観、玉堂、松園、巨匠たちの系譜」(水野美術館)

横山大観、菱田春草、川合玉堂、上村松園・・・ここ数年、各地の美術館で明治期以降の日本画の巨匠を大きく取り上げた展覧会がずいぶん増えました。日本画の世界に足を踏み入れたきっかけが、展覧会でこうした巨匠達の作品を観たことがきっかけだった方も多いのではないでしょうか?

横山大観「讃春」1953年頃 水野美術館蔵 【後期展示:7/17~9/1】

もう1歩深く日本画を鑑賞してみたいな、と思った時に役に立つのが、画家達の「系譜」を知ることです。彼らの師匠や弟子、同時期のライバル達の作品と比較して、流派や作風がどのようにして形成されてきたのか。そのルーツを知ることで、日本画の面白さが見えてきます。

そういった日本画ファンの期待に応えてくれた展覧会が、本展「日本画デラックス ~雅邦、大観、玉堂、松園、巨匠たちの系譜」なのです。展示会場では、たとえば、橋本雅邦、横山大観、川合玉堂、上村松園といった近代日本画の巨匠を起点として、彼らの作風がどのようにして形づくられ、下の世代に継承されていったのかを、展覧会で作品を時系列に見比べながら楽しく学ぶことができるようになっています。

本展では、以下の6つの「系譜」に焦点が当てられています。

・橋本雅邦の系譜
・美人画の系譜
・信州の系譜
・玉堂の系譜
・大観の系譜
・東京美術学校の系譜

橋本雅邦「紅葉白水」1902年 水野美術館蔵 【通期展示】/狩野派の末裔として新たな日本画を作ろうとした橋本雅邦の下には、横山大観、菱田春草といった、明治時代に活躍した名だたる人材が集まりました。
池田蕉園「貝あはせ」1915年頃 水野美術館蔵 【通期展示】/大正時代、大阪・島成園、京都・上村松園とともに「三都三園」と評された、実力派女性美人画作家。早逝したため作品数も少なく、非常に貴重な作品です。
川合玉堂「鵜飼」1951年 水野美術館蔵 【通期展示】/玉堂といえばこの「鵜飼」の図を思い浮かべる人も多く、彼が好んだ代表的なモチーフ。同館所蔵の鵜飼図は中でも特にクオリティの高い一作です。
池上秀畝「盛夏」1933年 水野美術館蔵 【前期展示:6/1~7/15】/本展では地元「信州」を系譜とする作家も特集。県外在住の方は、信州出身の思わぬ掘り出し物作家と出会えるかもしれません!

本展終了後、水野美術館は館内の改修工事のため長期休館となります。そのため、休館前の最後の展覧会として、今回は特に気合が入っています!「デラックス」と展覧会名にある通り、同館が所蔵する珠玉の名品群がここぞとばかり出品されているのです。ぜひ、夏休み期間を活用して遠征しても見ておきたい注目の展覧会です。

展覧会名:水野コレクション「日本画デラックス ~雅邦、大観、玉堂、松園、巨匠たちの系譜」
会場:水野美術館(長野県長野市若里6-2-20)
会期:2019年6月1日(土)~9月1日(日)
展示替えあり【前期:6/1~7/15、後期:7/17~9/1】
公式サイト

オススメ展覧会7:特別展「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション」(兵庫県立美術館)

吉野石膏株式会社という会社をご存知でしょうか?1901年、山形県の吉野鉱山で採れる石膏原石で「石膏ボード」の生産を始めたことをきっかけに、現在まで100年以上にわたって続いてきた「石膏」を主とする建材及びその工法開発に関わる事業を幅広く手がける優良企業です。

熱心な美術ファンならご存知かもしれませんが、実は同社は優れた近代日本画・西洋絵画のコレクションを多数所蔵していることでも知られています。創業者から歴代3代の社長がコツコツ買い付けを継続してきた結果、2019年現在では、500点を超えるまでにコレクションが拡大しているのです。

2019年、この「吉野石膏コレクション」の中から、西洋絵画約70点を展示する全国巡回展が開催されています。6月1日からは、名古屋に続いて2会場目となる兵庫県立美術館でスタート。関西在住の方は絶対見逃せない凄い作品群がやってきます!

今回選り抜かれた70点では、フランス写実主義、バルビゾン派、印象派、後期印象派、フォーヴィスム、エコール・ド・パリの作品群など、19世紀後半から20世紀前半までの約100年間のフランス美術史を代表する巨匠たちの作品が登場。中でも絶対観逃せないオススメは、モネやルノワールといった印象派の巨匠たちの手による作品です。いくつか見てみましょう。

クロード・モネ「睡蓮」1906 年 油彩/カンヴァス 吉野石膏コレクション
ピエール=オーギュスト・ルノワール「シュザンヌ・アダン嬢の肖像」1887年 パステル/紙 吉野石膏コレクション

こちらは、大人から子供まで大人気の作品。森の奥深くまで続く紅葉のトンネルが見事です。知らず知らずのうちに森のトンネルの先に視線が引き込まれていきますよね。森の奥には誰かいるような気もしますし、漆黒の闇が広がっているようにも見えますよね。

クロード・モネ「サン=ジェルマンの森の中で」1882年 油彩/カンヴァス 吉野石膏コレクション

また、これも観ておきたいのが、ゴッホがフランスへ移住する以前、まだオランダで画家修業に打ち込んでいた時代の貴重な初期作品。バルビゾン派やオランダハーグ派に近い作風で、どんよりした冬の曇り空の下、農作業に打ち込む農夫たちの日常風景を描いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ「雪原で薪を運ぶ人々」1884年 油彩/カンヴァス 吉野石膏コレクション

フランス西洋絵画のコレクションとしては、質量ともに国内屈指の威容を誇る「吉野石膏コレクション」。西洋美術展としては若干会期が短めになっていますので、是非この機会を見逃さず、ハイクオリティな作品群を思う存分味わってみてくださいね。

展覧会名:特別展「印象派からその先へ-世界に誇る吉野石膏コレクション」
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
会期:2019年6月1日(土)~7月21日(日)
公式サイト

オススメ展覧会8:「はじめての古美術鑑賞―絵画のテーマ―」(根津美術館)

日本美術だけでなく、中国・朝鮮など東アジア全般の古美術の各ジャンルにおいて豊富なコレクションを所蔵する根津美術館。同館では、例年5~7回程度企画展や特別展を実施していますが、毎年初夏の時期には初心者向けに「古美術鑑賞」について指南してくれる展覧会を開催。筆者は毎年これを非常に楽しみにしています。毎年少しずつ取り上げられるテーマは変わっていきますが、今年度は「はじめての古美術鑑賞―絵画のテーマ―」ということで、「絵画」の読み解き方を学ぶ展覧会となりました。

展示会場では、同館の所蔵する作品を使って、初心者がつまずきやすい日本美術の難解な「画題」をやさしく解説。


・なぜ変顔や怖い顔をした1対の仙人や中年の禅僧が描かれるのか?
・お爺さん達が描かれた山水画は何を意味しているのか?
・古代の経典はいったいどうやって楽しく鑑賞したらいいのか?

こういった、初心者なら誰しも一度は思い浮かべたことがあるような素朴な疑問について、本展では実際の作品を使ってわかりやすく解説。何の解説もなければ一見退屈そうに(見えるかもしれない)日本美術の本当の面白さを知ることができる展覧会なのです。

雪村周継筆「寒山拾得図」日本・室町時代 16世紀 栃木県立博物館蔵/変顔をした2人の仙人は何を意味しているのでしょうか?
板谷広長筆「伊勢物語図」日本・江戸時代 18世紀 小林中氏寄贈/三幅対の大和絵。平和そうな貴族の日常生活が描かれていますが、よーく見てみると、物語絵のある「名シーン」を描いていることが一目瞭然なのです!

うれしいのは、作品展示ごとにつけられた、こうしたわかりやすい解説。このキャプションを順番に読んで行くだけでも相当な知識量となり、展覧会を見終わったら着実にレベルアップした実感がもてるかもしれません!

もちろん、展覧会は約50作品展示されているので、よほどの上級者以外でなければ必ず作品を通して学びが得られるはず。もっと鑑賞眼を鍛えたい!もっと楽しく日本美術を見たい!という人全てにオススメの展覧会です。

「青花琴棋書画図壺」 景徳鎮窯 中国・明時代 16世紀/絵画作品だけでなく、やきものなど工芸品に描かれた「絵付」からも読み解いていきます。

また、頭を使ってしっかり学んだ後は、オリジナルメニューが用意されたNEZUCAFEや、青々と葉が生い茂った初夏の庭園で涼を取るのもおすすめです!

展覧会名:企画展「はじめての古美術鑑賞―絵画のテーマ―」
会場:根津美術館(東京都港区南青山6-5−1)
会期:2019年5月25日(土)~7月7日(日)
公式サイト

オススメ展覧会9:「遊びの流儀 遊楽図の系譜」(サントリー美術館)

平安時代以降、日本絵画では「遊び」をテーマとした名画・名品が数多く生み出されてきました。中国で名士が身につけるべき教養として奨励された琴、囲碁、書道、絵画の4つをまとめた「琴棋書画図」や、襖や屏風などに人々が室内や庭園で楽しげに遊興する「遊楽図」などは、一度はどこかの展覧会で目にした人も多いかもしれません。熱心なファンの中には、毎年お花見の時期になると、東京国立博物館で公開される「遊楽図」の代表格である国宝「花下遊楽図屏風」を楽しみにしている人も多いかもしれませんね。

本展「遊びの流儀 遊楽図の系譜」では、江戸時代初期を中心として多数制作された「遊楽図」の中に描かれた人物たちの表情に注目します。双六やかるたに興じる人々、野外での花見や水遊びを楽しむ人々、お祭りに熱中する人々など、様々なシチュエーションを楽しむ人々の姿から、作品が描かれた当時の風俗を観察したり、時代の雰囲気を感じ取ることができそうです。

重要文化財「遊楽図屛風」(相応寺屛風)八曲一双のうち左隻(部分) 江戸時代 17世紀 徳川美術館 ©徳川美術館イメージアーカイブ/DNPartcom 【展示期間:6/26~7/15】
「邸内遊楽図屛風」六曲一隻(部分) 江戸時代 17世紀 サントリー美術館【全期間展示】

また、展示後半では実際に江戸時代に使われていた双六盤かるた、輸出用のバックギャモンなどの実物展示も要注目。

重要文化財「清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤」 一合 桃山時代 17世紀 サントリー美術館 【全期間展示】
「金地うんすんかるた」 一揃 江戸時代 滴翠美術館 【全期間展示】

「扇の国、日本」では“扇”に着目した個性的な展示を実施したり、「寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽」では絵画・工芸など幅広い作品から17世紀前半における江戸初期の「雅」を感じ取る試みを行ったりと、いつも他館を圧倒する企画力で日本美術に関する優れた展覧会が開催されるサントリー美術館。今回も室内遊楽図の傑作、国宝「松浦屛風」(大和文華館)を筆頭として、日本全国から名品が集結しており、日本美術ファンは絶対見逃せない展覧会となりそうです!

国宝「婦女遊楽図屛風」(松浦屛風) 六曲一双のうち右隻(部分) 江戸時代 17世紀 大和文華館 【展示期間:7/24~8/18】
展覧会名:「サントリー芸術財団50周年 遊びの流儀 遊楽図の系譜」
会場:サントリー美術館(東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3階)
会期:2019年6月26日(水)~8月18日(日)
※会期中展示替えあり
公式サイト

オススメ展覧会10:「松方コレクション展」(国立西洋美術館)

戦前の日本を代表する西洋美術の大コレクターだった松方幸次郎。戦前、松方はヨーロッパで西洋絵画など多数の美術品を買い付けますが、彼が集めたコレクションは紆余曲折の運命をたどりました。

たとえば、松方が現地で購入した半数近くの美術品は日本に持ち帰られましたが、その多くは売り立てなどで散逸してしまいます。一方、イギリスやフランスなどヨーロッパで保管していた千数百点に関しては、ロンドンの倉庫に置かれていた分が火災によって全焼しました。

残ったロダン美術館にて保管されていたフランス国内のコレクションについても敵国人財産として戦後しばらくフランス政府に接収されていました。しかし、日本に松方コレクションを適切に展示できる美術館を建設することを条件に、1959年にその大半が日本へと返還されることになりました。その時に建てられた美術館こそが、現在の国立西洋美術館なのです。

ピエール=オーギュスト・ルノワール「帽子の女」1891年 国立西洋美術館(松方コレクション)
クロード・モネ「睡蓮」1916年 国立西洋美術館(松方コレクション)

国立西洋美術館では、それ以後も失われた松方コレクションの行方を地道に調査を継続。一度は松方から他のコレクターの手に渡った作品群を少しずつ買い戻しつづけています。近年少しずつ新規収蔵されている作品は同館の地道な活動が身を結んだ成果と言えるでしょう。

ジョヴァンニ・セガンティーニ「羊の毛刈り」1883-84年 国立西洋美術館(旧松方コレクション)

また、今回は国立西洋美術館開館時にフランス政府から返還されなかった作品や、松方の手を離れて第三者の手に渡った代表作品なども国立西洋美術館に集結。いろんな画集にも頻繁に登場する「あの有名作品」も実は松方コレクションゆかりの作品だったの?!ときっと驚かれることでしょう。

フィンセント・ファン・ゴッホ「アルルの寝室」1889年 オルセー美術館
Paris, musée d’Orsay, cédé aux musées nationaux en application du traité de paix avec le Japon, 1959
Photo© RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
エドガー・ドガ「マネとマネ夫人像」1868-69年 北九州市立美術館

そして、今回目玉作品の一つとなるのが、昨年、ルーヴル美術館にて新たに発見された旧松方コレクションに属するモネの作品。画面の半分以上が失われ、残存部分も相当痛みの激しい状態で発見されました。

クロード・モネ「睡蓮、柳の反映」1916年 国立西洋美術館(旧松方コレクション)

本作は発見後ほどなくして日本への返還が決定。返還後は、残存部分の修復作業と、残された白黒写真からCG画像で元々の全体像をデジタル復元するプロジェクトが進められました。デジタル推定復元の制作等にかかる費用の一部を賄うため、クラウドファンディングが活用されましたが、つい最近目標の300万円に到達。修復された原画とともに、展覧会で復元映像を楽しむことができそうです。

展覧会名:「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」
会場:国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)
会期:2019年6月11日(火)〜9月23日(月・祝)
特設サイト

「谷間」シーズンだからこそ、バラエティに富んだ展覧会が出揃っています!

いかがでしたでしょうか?6月に始まるオススメの美術展10展を紹介させて頂きました。時期的にちょうど春と秋の大型展の谷間となる時期ということもあり、各美術館・博物館で「尖った」展覧会が出揃った印象です。普段なかなか観ることのできないレア作品が展示される所蔵品展や初心者向けの「学べる」企画、他館とのコラボ展示、テーマを凝らした個性的な展覧会など、バラエティに富んだ展覧会を集めてみました。ムシムシと高温多湿な梅雨の季節ですが、快適な美術館の中で涼を取りながら今月も楽しんでいきましょう!

編集部厳選!2019年6月にオススメしたいとっておきの美術展10選!
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