CATEGORY

最新号紹介

10,11月号2024.08.30発売

大人だけが知っている!「静寂の京都」

閉じる
Art
2016.11.08

江戸絵画のラスボス・円山応挙!2016年その全貌を根津美術館で知る

この記事を書いた人

江戸時代の人気№1=円山応挙!

若冲(じゃくちゅう)や其一(きいつ)、白隠(はくいん)、仙厓(せんがい)、北斎(ほくさい)と、今年は江戸絵画が美術界のみならず、広く世間をにぎわせました。

様々な展覧会の影響で、たくさんの江戸絵画の絵師が注目されるようになっていますが、江戸時代において最も人気を博していたのは、円山応挙(まるやまおうきょ)。

当時の有名人名録『平安人物志』の画家部門に36歳で初登場以来、長らく筆頭(№1)の座を守り続け、同時代に活躍した名だたる絵師たちも太刀(たち)打ちできないほどの人気を誇っていたのです。

江戸絵画のラスボス・円山応挙!その全貌を根津美術館で知る(~12月18日)

〝開館75周年特別展 円山応挙「写生」を超えて〟より、円山応挙筆『藤花図屛風』(左隻) 重要文化財 日本・江戸時代 安永5(1776)年 根津美術館蔵 総金地に描きだされた藤の絵は、幹や枝は「付立て」という技法で一見ラフに描かれながら、コントロールされた墨の濃淡が立体感を表現。白と青、紫の絵具を重ね合わせた斬新な花房の表現は、まるで西欧の印象派のよう。

江戸絵画に沸いた2016年のラスボス

いつになく江戸絵画に注目が集まった今年の掉尾(とうび)を飾るように、円山応挙の生涯を代表する名作が12月18日まで、根津美術館の〝開館75周年特別展 円山応挙「写生」を超えて〟で展示されています。※会期終了しています。

昨今、ゲームの最後に登場する最強のボスキャラが〝ラスボス〟と呼ばれるように、円山応挙はまさに江戸絵画のラスボス! 応挙の名作の数々は、知れば知るほどひきつけられていくような奥深さや面白さ、美しさに満ちています。

江戸絵画のラスボス・円山応挙!その全貌を根津美術館で知る(~12月18日)

〝開館75周年特別展 円山応挙「写生」を超えて〟より、円山応挙筆『雪松図屛風』(右隻) 国宝 日本・江戸時代 天明6(1786)年ごろ 三井記念美術館蔵【前期11/3~11/27展示】 老若の松が凛として立つ一双の屛風。白く残された紙の地に松葉を描きこむことで、松に積もるふんわりとした雪の量感まで表されている。松の背後の金泥(きんでい)は陽光に満ちる大気を、画面下部に蒔(ま)かれた金の砂子(すなご)は雪に反射する光を表現している。

農家に生まれた応挙が人気絵師となるまで

円山応挙は享保(1733)年に丹波国(たんばのくに)の穴太(あのお)村(現・京都府亀岡市)の農家の次男として生まれ、京都へ奉公(ほうこう)に出されています。10代後半に狩野派(かのうは)の流れを汲む鶴沢派の絵師・石田幽汀(ゆうてい)に弟子入りした応挙は、そこで作画の基礎を身につけます。さらに、西洋伝来の「眼鏡絵」の制作に携わり西洋の画法を独自に学ぶだけにとどまらず、古典や中国の絵画をも習得。そうして生み出された「写生」にもとづく新しい画風によって、日本の絵画史に革命を起こし、絶大な人気を博したのです。

【3】重要文化財_雲龍図屏風(左隻)〝開館75周年特別展 円山応挙「写生」を超えて〟より、円山応挙筆『雲龍図屛風』(左隻) 重要文化財 日本・江戸時代 安永2(1773)年 個人蔵 【後期11/29~12/18展示】 つかめそうなほどの視覚的なボリューム、表皮の神秘的な生々しさが、架空の動物に圧倒的な存在感を与えている。墨のにじみやぼかしを駆使して描かれた雲が充満する画面は生温かく、息詰まるような迫力。

【4】七難七福図巻_天災〝開館75周年特別展 円山応挙「写生」を超えて〟より、円山応挙筆『七難七福図巻』3巻のうち 重要文化財 日本・江戸時代 明和5(1768)年 相国寺蔵 【会期中巻替えあり】 経典に説かれる七難(しちなん)と七福(しちふく)をリアルに描くことで、仏神への信仰心と善行をうながす目的で制作された絵巻。天災を描いた上巻と、人災を描いた中巻で〝難〟の図を構成し、下巻が〝福〟の図。中巻には目をおおいたくなるような凄惨な表現があるが、人間と自然の諸相を描きつくした応挙の画業でも重要な位置を占める作品。

〝円山応挙「写生」を超えて〟の注目ポイント

応挙の「写生画」は、超絶的かつ多彩なテクニックによって支えられています。しかし近年、写生ないし写生画という言葉だけではとらえきれない応挙の多面性、作品世界のバックグラウンドが指摘されることも多くなっています。

そんなことから〝開館75周年特別展 円山応挙「写生」を超えて〟では様々な可能性を秘めた若き日の作品、絵画学習の痕跡を濃厚にとどめた作品、そして緻密にして鑑賞性にも優れた写生図を展示。つねに「写生」を大切にしながらも、それを超えて応挙が目ざしたものは何だったのか――。それが、展覧会を通して目の当たりにすることができるのです。