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2016.11.22

日本美術初心者がゆく展覧会「禅 —心をかたちにー」後期展

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今、史上最大規模の禅に関する展覧会「禅―心をかたちに―」が東京国立博物館で開催していることをご存知でしょうか?ですが、禅ってどこが面白いんだろう?なんだか難しそう!なんてぶつくさ言っていると、和樂編集長の暴君洗馬さんに「グズグズ言わんと見てこんかい!」と怒鳴りつけられてしまいました。こわーい!というわけで、今回は編集長が面白いという禅に疑問を持つ日本美術ビギナーの私、yuが11月8日から始まっている後期展示をレポートします。

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今回の展覧会は「禅宗の成立」「臨済禅の導入と展開」「戦国武将と近世の高僧」「禅の仏たち」「禅文化の広がり」の5章に分かれており、様々な角度から禅を学ぶことができます。ですが、後期展示の見どころはなんといっても、雪舟と白隠の慧可断臂図(えかだんぴず)。

水墨画の巨匠である雪舟(せっしゅう)の慧可断臂図は、雪舟が77歳で手がけた禅の最高傑作であり、教科書やポスターをはじめさまざまなところで目にする機会はありましたが、実物を目にしたのは初めてでした。実際見るとまず驚いたのが、その大きさ!教科書などで想像をしていたより数倍大きく、黒い巌窟の壁と達磨の白さが対象的で、しかも、どの線よりも達磨の輪郭の線が太いことから達磨の存在感がとても強く感じられました。

一方、白隠(はくいん)の慧可断臂図は、雪舟のものとは対象的に、絵のテーマからはとても想像できないくらいどこかほっこりとさせてくれる印象。こちらは大分で新たに見つかったもので、本展覧会が初公開なのだとか!

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画像左:国宝 慧可断臂図 雪舟等楊筆 室町時代 明応5年(1496) 愛知・齊年寺蔵 11/8~11/27展示/画像右:慧可断臂図 白隠慧鶴 江戸時代 18世紀 大分・見星寺 11/8〜11/27展示
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今回の後期展示の大きな見所は、特別出品で伊藤若冲の鷲図(わしず)と旭日雄鶏図(きょくじつゆうけいず)が展示されていること。旭日雄鶏図は数十羽の鶏を飼っていた若冲の作品だけあって、羽や真っ赤なとさかなどが本物のようで今にも動きだしそうな印象でした。そんな繊細な旭日雄鶏図に対して力強い水墨画の鷲図。この2作を見ただけでも若冲のスゴさが感じられます。

本展では、この他に国宝22件、重要文化材102件が展示されており、たくさんの名作を見ることができます。日本美術初心者にとって、禅の美術とは固く、遠い存在であると感じていましたが、今回の展覧会ではそんな初心者でも楽しめる要素がたくさん詰まっていました!では各章ごとを見ていきましょう。

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達磨像 白隠慧鶴筆 江戸時代 18世紀 大分・萬壽寺蔵 通期展示
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まず第1章は、禅の歴史について。誰でもどこかで何となく聞いたことがある「喝っ!」。この言葉は、臨済宗の祖、臨済義玄(りんざいぎげん)が多用したもので、「臨済といえば喝」とも言われています。そんな臨済義玄の肖像画は迫力満点。後期展示では伝曾我蛇足(そがじゃそく)筆の達磨・臨済・徳山像で見ることができ、握りしめた拳やカッと見開いた目を見ていると背筋がピンとしてしまいます。

2章に進むと禅僧や天皇などの像や墨跡などで臨済禅の導入と展開を見ていくことができます。中でも一番私の目を引いたのが「蘭渓道隆坐像」(らんけいどうりゅうざぞう)。鋭い目の奥がキラキラと光っていて、思わず吸い込まれてしまいそう!これは表面から水晶板を嵌め、水晶の裏に中心の黒い瞳から放射状に金の線を引き、虹彩を描いた独特の技法で作られているためだそうです。普段は建長寺、西来庵開山堂に所在されており、今でも修行僧を厳しく見つめているのだとか。

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重要文化財 蘭渓道隆坐像 鎌倉時代 13世紀 神奈川・建長寺蔵 通期展示
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3章では武田信玄、織田信長、豊臣秀吉など誰でも聞いたことがある戦国武将たちと禅僧のつながりを学ぶことができます。その関係はとても深いもので、戦の指導をうけていたことや、禅僧、沢彦宗思(たくげん そうおん)が織田信長に「信長」と命名していたことなど驚きがたくさんありました。

4章に続くと、思わず同じポーズをとりたくなってしまう「伽藍神立像」(がらんしんりゅうぞう)や禅の悟りにいたる道筋を、牛を主題とした十枚の絵で表した、漫画のような伝周文筆(でんしゅうぶんひつ)の「十牛図巻」(じゅうぎゅうずかん)など、思わずふっと笑ってしまいたくなるようなものから、達磨の肖像画の中で一番大きいとされている吉山明兆(きつさん みんちょう)筆の迫力満点の達磨・蝦蟇・鉄拐図など幅広く禅の仏たちを見ていくことができます。4章にある、「十八羅漢坐像」のなかの「羅怙羅尊者」(らごらそんじゃ)は顔が醜かったと伝えられますが、心には仏が宿っていることを自分の胸を開いてみせています。1階ロビーには仏の部分に自分の顔をはめ込める写真パネルがあり、顔をはめて羅怙羅尊者の気持ちになってみるのも良いかもしれません。(シャイな私は残念ながら試すことができませんでした!)

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画像左:十八羅漢坐像のうち「羅怙羅尊者」 范道生作 江戸時代 寛文4年(1664) 京都・萬福寺蔵 通期展示/画像右:1階ロビーにある写真パネル
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最後の5章では禅文化の広がりということで、その展開や成立に禅が深く関わったという茶の湯の茶碗や器などが多く展示されています。茶の湯について初心者の私でも、油滴天目(ゆてきてんもく)や玳玻天目(たいひてんもく)などは見とれてしまうほどの美しさでした。

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国宝 玳玻天目 吉州窯 中国・南宋時代 12世紀 京都・相国寺蔵 通期展示
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後期展示からは足利義持が「丸くすべすべした瓢簞(ひょうたん)で、ぬるぬるした鮎(なまず)をおさえ捕ることができるか」ということを題材に31人もの禅僧に詩を詠ませた国宝、瓢鮎図(ひょうねんず)や長谷川等伯(はせがわとうはく)の竹林猿猴図屏風(ちくりんえんこうずびょうぶ)も展示されています。実物を見てみると猿の表情や毛の細かさなど色々な発見がありました。

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国宝 瓢鮎図 大岳周崇等三十一僧賛 大巧如拙筆 室町時代 15世紀 京都・退蔵院蔵 11/8~11/27展示
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重要文化財 竹林猿猴図屛風 長谷川等伯筆 安土桃山時代 16世紀 京都・相国寺蔵 11/8~11/27展示
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禅は難しく、全く分からない世界と思っていて、恐る恐る足を踏み入れた展覧会でしたが、聞いたこと、見たことあるかも!というものや、意味はチンプンカンプンでも面白く表現されているものがたくさんあり、展覧会を後にする頃には禅って面白いかも、もっと知りたい!という気持ちが芽生えてました。以上、日本美術ビギナーyuの禅展レポートでした。洗馬編集長いかがでしょう?

会期は11月27日まで!

東京国立博物館
特別展「禅-心をかたちに-」

【会期】10月18日(火)〜11月27日(日)
【会場】東京国立博物館 平成館 地図
【会館時間】9時半〜17時(入館は16時半まで)
【休館日】月曜日
【観覧料金】一般1600円/大学生1200円/高校生900円/中学生以下無料

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