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10,11月号2024.08.30発売

大人だけが知っている!「静寂の京都」

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2021.05.05

天才絵師・葛飾北斎の生きた時代を「出版」「旅行」「色」3つのキーワードで解説!

葛飾北斎が生きたのは幕末の90年間。その才能を育み、類まれな創造力を爆発させたのは、いったいどんな世の中だったのだろうか? 絵師を取り巻く環境や背景は? そんな超真面目なテーマに、「浮世離れマスターズ」のつあおとまいこが脱力モードで挑みます。キーワードは、「出版」「旅行」「色」なのだとか。

葛飾北斎ってすご~く昔の人な気がするけれど、江戸後期の人物なんですね。意外と最近だ!

えっ? つあおとまいこって誰だって? 美術記者歴◯△年のつあおこと小川敦生がぶっ飛び系アートラバーで美術家の応援に熱心なまいここと菊池麻衣子と美術作品を見ながら話しているうちに悦楽のゆるふわトークに目覚め、「浮世離れマスターズ」を結成。さて、浮世絵はコーヒーみたいなものだったんだって。なんだそれは?

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葛飾北斎の情報を集めたポータルサイト「HOKUSAI PORTAL」はこちら
■和樂web編集長セバスチャン高木が浮世絵について解説した音声はこちら

浮世絵は江戸時代のコーヒーだった?!


葛飾北斎『北斎写真画譜』(表紙と中面より) 1814年、メトロポリタン美術館
北斎が著した絵手本(ほかの画家が参考にするために描いたモチーフ集の書籍)の一つ。「写真」という言葉を使っているのが興味深い。

つあお:浮世絵は、江戸時代は美術品じゃなかったんです。

まいこ:いきなり意表を突かれました(笑) では何だったんでしょう?

つあお:出版物だったんです。

まいこ:ほー。

つあお:多色摺りの豪華な浮世絵版画である錦絵は、当時の、世界でもトップクラスの印刷技術の賜物でした。

まいこ:浮世絵というと、最近は展覧会で見る「美術作品」というイメージですが、江戸時代の人々にとっては認識が違ったということですね?

つあお:浮世絵は、同じ絵を何百枚も摺る木版画。現代の展覧会場ではたいてい額縁に入って展示されてるけど、江戸時代は1枚1枚手に取って眺めていたんだそうですよ。

まいこ:ということは、ペライチなのだけど、今私たちが手にする雑誌や新聞のような位置づけだったのでしょうかね?

つあお:そうなんです。今の値段に換算すると、1枚数百円程度。コーヒーを味わうような感覚で気軽に眺めてたんじゃないかな。

まいこ:1ページの雑誌と考えると数百円は高い気がするけど、現代目線で「アート」としてとらえると激安かも!

つあお:錦絵は豪華な多色摺りだし、今みたいに娯楽がたくさんあったわけではなかったから、コーヒーくらいの値段なら庶民にも売れたんでしょう。

まいこ:戦乱の世が終わり、庶民にも、娯楽を楽しむ時間的、精神的余裕が出てきた時代なのかも~。

つあお:たわくし(=「私」を意味するつあお語)たち庶民のぜいたく! 江戸時代には「美術」なんていうかしこまった概念もなくて、喜多川歌麿の美人画なんて、アイドルの写真みたいな感じで買われてたみたいです。

喜多川歌麿『青楼七小町 玉屋内花紫』 1790年頃、メトロポリタン美術館

まいこ:でも、1枚数百円でそういった出版物を庶民が買って楽しむって、なんか日常に文化があったって感じでいいな~!

つあお:幕末は天保の改革とかでぜいたくが締め付けられたりもしたけど、文化は熟していたから結構楽しい時代だったのかも。錦絵は通常、雑誌のように読み捨てられる感じだったようです。

まいこ:なんかもったいな〜い!

つあお:その感覚、すっごく大事! きっと、もったいないと思った人が保存したから、今の時代にもたくさん残っているんじゃないですかね。

まいこ:ふむふむ。

つあお:浮世絵に限らず、江戸時代は出版がすごく盛んだった。「読本(よみほん)」と呼ばれる書籍もたくさん出版されていました。印刷技法はやはり木版画でした。

まいこ:ページの多い書籍の値段はもっと高かったんですかね?

つあお:いくらだったかは知らないんですけど、貸本屋があったので、庶民は書籍で読み物を楽しんでたみたいです。葛飾北斎は読本の挿絵画家として人気があったようです。

まいこ:そうか〜! テレビや映画があったわけじゃないから、そういった読み物ってきっと、非日常感を味わう娯楽のひとつだったんでしょうね!

つあお:娯楽としては歌舞伎なんかも栄えてたから、そもそも巷では「物語」を楽しむことがすごく流行っていたんだろうなと思います。

まいこ:なるほど〜! 北斎も人気のあった戯作者(小説の作者)と組んだりして挿絵を描いてる!

つあお:滝沢馬琴の『椿説弓張月』とか!

まいこ:そうです! すみだ北斎美術館などでその実物を見て、すごく面白い絵を描いていたんだなと思いました。『椿説弓張月』の閃光のシーンなんか、ホント大迫力ですね。

葛飾北斎『椿説弓張月』続編 巻三 石櫃を破て曚雲出現す すみだ北斎美術館蔵
「しりあがりサン北斎サン-クスッと笑えるSHOW TIME!-」展(すみだ北斎美術館)通期展示作品

つあお:ド派手な漫画か劇画のようにしか見えない!

まいこ:真ん中にいる変なおじさんから、ものすごい光線が何本も出ている。音が轟いてる感じも出てるし、人々がぶっ飛んでる感じもすごい!

つあお:江戸時代の人はすごく楽しく読本を読んでたんだろうなぁ。北斎って、『冨嶽三十六景』シリーズみたいな風景画が有名だけど、実はSF映画みたいなシーンを描くのも得意だったってことなんですよね。

まいこ:映像のない時代にSF映画みたいなシーンを想像できた北斎に脱帽! 現代の漫画では定番的に使われる放射状の閃光表現を、江戸時代にここまで効果的に使っていたとは驚きです。

つあお:考えてみたら、あの有名な波の絵(『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』)なんかも、背景にはものすごい「物語」があるんじゃないかっていう感じもする。

葛飾北斎『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』 1825〜38年、シカゴ美術館

まいこ:あの波にもまれている舟に乗っている人々はどこから来て、この後どうなっちゃうんだろう? みたいな。

つあお:まさにドラマチック!

まいこ:ああいった描写は、突然『冨嶽三十六景』で出てきたわけではなく、北斎はそれまでに挿絵などでドラマチックなシーンを描く腕をバリバリ磨いていたのですね。

つあお:そうだと思います。北斎はホント奥深い。それでね、北斎のいわゆる出版とのかかわりを象徴するもう一つ重要な事例があるんです。

まいこ:!?

つあお:有名な『北斎漫画』です。

まいこ:お相撲さんとか鳥さんとかをシンプルに描いてるやつですよね?!

葛飾北斎『北斎漫画』十編 1819年、すみだ北斎美術館
「しりあがりサン北斎サン-クスッと笑えるSHOW TIME!-」展(すみだ北斎美術館)より展示風景

つあお:そうそう、あれは北斎がほかの画家に絵を描くときの参考にしてほしいと思って出版した「絵手本」という絵の見本帳なので、おんなじ人物のすごくたくさんのポーズなんかを1ページの画面に描いたりもしてる。見るだけでも楽しいですよね。

まいこ:絵手本は弟子のために描いたお手本を教科書として出版物にしたものだったんですよね! 中でも『北斎漫画』は刊行されるとすごい人気が出たうえ、明治に入ると欧米にまで渡って今や世界でも知られる逸品になってるってことか! すごいなぁ。

つあお:実はね、『冨嶽三十六景』等の錦絵シリーズはあくまでも版元(当時の出版社)の意向のほうが強かった出版物で、北斎が自分で本当に描きたいものではなかったという話があるんです。

まいこ:えっ?

つあお:一方、同じ出版物でも『北斎漫画』のほうはそうではなくて、自分の意思で出したのだとか。自分の絵の力をほかの画家に伝えたいという意欲が強かったのでしょう。版元も「ウン」と言わされたのかも。

まいこ:そうなんですか〜! どうりで『北斎漫画』のほうは生き生きとしていて楽しそうな絵が多い。でも、どちらも世界にウケちゃうところが、さすが北斎という感じです。

つあお:北斎はやっぱり天才。どんな場面でも才能がほとばしり出ちゃうってことでしょう。想像ですが、『北斎漫画』は版元も「出版してよかった」と思ったでしょうね。北斎没後にも刊行が続いてますし。

ピクチャレスクで素晴らしい旅行ガイド

葛飾北斎『冨嶽三十六景 諸人登山』 1825〜38年、シカゴ美術館

つあお:江戸時代といえば「旅行」です。

まいこ:いきなり話題が変わりましたね(笑) 旅行って江戸時代だと結構大変そうな気もしますが、普通に行われるようになったということでしょうか? 皆さんどの辺りを旅行してたんでしょう?

つあお:まずはお伊勢参りでしょう。

まいこ:江戸から伊勢って、結構な距離じゃないですか? 歩いて何日もかけて行ったのでしょうね。

つあお:庶民は馬とかにはあまり乗らないだろうし、飛脚みたいに走ったりもしないですからね。江戸からお伊勢さんに行くだけで半月くらいはかかっていたらしいですよ。

まいこ:それで宿場とかも数多くできて賑わっていたのですね!

つあお:特に東海道は栄えていたんじゃないでしょうか。十返舎一九が『東海道中膝栗毛』とか書いてるし。

まいこ:「東海道五十三次」っていうくらいですから、江戸と京都の間に宿場町が53ヶ所あったんですね!

つあお:北斎と同じ時期に活躍した歌川広重の『東海道五十三次』シリーズは、当時の東海道の旅行ガイドの役割を果たしていたそうです。

まいこ:やっぱり「出版物」だったんですね。ピクチャレスクで素晴らしい旅行ガイド!

つあお:まさに!

まいこ:現代の旅行ガイドは写真満載ですけど、この時はアーティストたちが描いた風景画。それはそれで、すごく素敵だなぁ!

つあお:広重の絵なんかを見ながら旅行の準備を仲間とわいわいやるのって、すんごい楽しそう!

歌川広重『東海道五十三次 箱根』 1833〜34年頃、メトロポリタン美術館

まいこ:そうですね〜。北斎も旅行ガイドは描いたのですか?

つあお:やはり『冨嶽三十六景』のシリーズはその位置づけになると思います。

まいこ:いろいろな名所から、何かしら富士山が見える風景にしたというところがグッドアイデアですね!

つあお:当時は「富士講」という富士山信仰が盛んで、北斎のこのシリーズもその人気にあやかってできた模様です。実際に富士山に登る人も多かったのだとか。

まいこ:そうか〜。でも、ただ写実的に同じような富士山を描くのではなく、デザイン的だったり、桶の向こうに小さく山の姿が見えるなど構図が一ひねりしてあったり。北斎の天才ぶりがバリバリ出てる!!

葛飾北斎『冨嶽三十六景 尾州不二見原』 1825〜38年、シカゴ美術館

つあお:このシリーズを見てたら、描いた場所に行ってみたくなるんじゃないかな。

まいこ:なるなる!

つあお:実際行くと、やっぱり感動するだろうし。

まいこ:そうそう、「冨嶽」(富士山)が北斎の絵のように見えた場所が、東京、神奈川、静岡あたりで結構特定されていますよね。私だったら同じ構図で写真を撮ってインスタグラムに載せちゃいますよ。

つあお:まいこさん、ぜひやってみてください。

まいこ:富士山ポーズとかキメちゃおうかな(笑) 漫画家のしりあがり寿さんも面白いことをしてくれそう。

つあお:しりあがりさんは北斎のパロディ、たくさん制作してますもんね。

まいこ:すみだ北斎美術館の「しりあがりサン北斎サン -クスッと笑えるSHOW TIME!-」、かなり笑えましたね!

つあお:しりあがりさんも天才だな。ウンウン。北斎には、極め付きの風景画のシリーズがもう一つ! 『琉球八景』といいます。

まいこ:何と、沖縄ですか?! 北斎、きっと沖縄には行ってないですよね?

つあお:なんでばれたんだろう(笑)

まいこ:勘です(笑)

つあお:素晴らしい。まいこさんはやはり侮れないなぁ。実は、ほかの絵師が描いたモノクロのスケッチのような絵を見て、錦絵に翻案したみたいなんです。

まいこ:へー! つあおさんがそれを極め付きというのはなぜですか?

つあお:北斎ったら、沖縄の雪景色まで描いちゃってるんですよ!

葛飾北斎『琉球八景 龍洞松濤』 1827〜37年、シカゴ美術館

まいこ:わーお! 北斎おちゃめ! 想像力満開! でも北斎が描いたら、天気のほうがそれに合わせて雪を降らせちゃいそう(笑)

つあお:ハハハ。少なくとも旅心は掻き立てますよね。実際に琉球に行けた人はほとんどいなかっただろうけど。みんな、今の宇宙旅行みたいな感覚で見てたのかな。

まいこ:江戸時代のVRみたいなものかしら?!

古今東西、画家は「青」に憧れる

日本の伝統色より藍色

つあお:北斎が『冨嶽三十六景』を描いたのは70歳前後だと言われますが、このシリーズで特に際立っているのが「青」なんですよね。

まいこ:確かに、『冨嶽三十六景』と聞くと、まず「青」のイメージが頭の中に浮かんでくるかも!

つあお:この時に長崎を通じて海外から輸入した「プルシアン・ブルー」(「ベルリン藍」「ベロ藍」とも言う)という人造絵の具を使ったのは有名な話なんですが、最近そのことを考えていて思ったのが、「青」ってやっぱり画家にとって憧れの色なんじゃないかなってことなんです。

まいこ:数ある色の中で、画家はなぜ「青」に憧れるんでしょう?

つあお:世界的に見ても、「青」はいろんな美術家がこだわってます。

まいこ:というと?

つあお:例えばフェルメールの超有名な絵画『真珠の耳飾りの少女』。以前は『青いターバンの少女』という名前で親しまれていました。頭に巻いた布を、当時貴重だった「ラピスラズリ」という高級な顔料で描いた作品なんです。

まいこ:現代の日本画家さんを取材したときに、ラピスラズリが15gあたり数万円とか聞いたことがある!!

ヨハネス・フェルメール『真珠の耳飾りの少女』 1665年頃、マウリッツハイス王立美術館

つあお:イヴ・クラインという20世紀フランスの画家は何と「インターナショナル・クライン・ブルー」っていう絵の具を自分で開発して、ひたすら青い作品ばかり制作していたんですよ!

まいこ:探究熱心!

つあお:ピカソは「青の時代」と呼ばれた作画期に、親しい友人が亡くなった悲しみを癒すかのように青い絵ばかりを描いていたし、「青」に固執した画家は結構多いですね。

まいこ:そうなんですね。考えてみたら、自然には「青」が多いから、風景をたくさん描くとなると、美しい「青」が欲しくなりそう。

つあお:やはり、空の青と海の青でしょうか。

まいこ:そうですよね! 北斎は『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』では富士山まで「青」で描いているし!

つあお:同じ『冨嶽三十六景』シリーズの『凱風快晴』は、プルシアン・ブルーで色をつけた空の青が際立っている。空はなぜ青いか知ってますか。

空はなぜ青いのか?

まいこ:ええ? いきなり理系な質問(笑) 私、バリバリ文系なんですけど。

つあお:ははは。たわくしも文系です。

まいこ:つあおさんはラクガキ系でしたね(笑) 空の青かぁ。空気と光の共鳴でしょうか?

つあお:なんて素晴らしい回答なんだ。それを正解にしたいなぁ。

まいこ:もったいぶらずに正解を教えてください。

つあお:実はほぼ正解! 太陽から降ってくる光にはすべての色が含まれているのですが、青い光は波長が短いので空気中の塵にぶち当たって、地面に届く前にたくさん四方八方に拡散する。その青が見えるのだそうです。

まいこ:科学的〜!

つあお:北斎って結構科学の目も持ってそうな感じです。たとえば、『神奈川沖浪裏』には、本物の波を高速度撮影したような細かな表情が、しゅわしゅわっとした部分に描かれている。

まいこ:確かに〜。古今東西天才的なアーティストは科学の目を持っているのかも! 北斎は動体視力も突き抜けていそう!

つあお:それゆえ、北斎は「青」の追究もすごかったんじゃないかと思うんですよ。版元がプルシアン・ブルーを使わせたという話ではあるけど、北斎は、その実際の効果についてすごく研究したんじゃないかな。

まいこ:画材の研究!

つあお:江戸時代の浮世絵師は研究熱心。北斎が西洋絵画風に描いた水彩画が、近年オランダで発見されたりもしてるんです。

まいこ:わーお! やっぱり北斎はただものじゃないですね! 北斎には、青ばかりを使って描いた絵もあるとか?

つあお:そうなんです。「藍摺絵(あいずりえ)」と呼ばれています。英語でも”Aizuri-e”なのだそう。

葛飾北斎『冨嶽三十六景 甲州石班澤』 1825-38年、シカゴ美術館

まいこ:ラピスラズリの親戚?

つあお:うまい!

まいこ:そんなわけないですね(笑) 藍摺絵は、北斎独特のものなのですか?

つあお:ほかの絵師の錦絵にもあったようです。ほとんど青だけで描いた風景画もなかなかオシャレです。

まいこ:素晴らしい! 墨の濃淡で描く墨絵はよく見るけど、青の濃淡で描き分けるってすごいな。

つあお:植物系の染料の青の使い方も絶妙。見惚れます! プルシアン・ブルーも使えるようになって、表現の幅がどんどん広がった。

まいこ:たくさんのいろいろな「青」が手に入って、うれしくて「青」ばかりで描いちゃった! 子どもみたいにはしゃぐ北斎が目に浮かんじゃいました!

つあお:実はね、アメリカに「アイズリ・クァルテット」っていう弦楽四重奏団があるんですが、北斎らが描いた藍摺絵から名前を拝借したんだそうです。

まいこ:なんと! マニアックなネーミング! しかもアメリカ!

つあお:4人のメンバーのうち2人は日本人(2人はアメリカ人とカナダ人)であることも関係がありそうですが、やはり色の名前を団体名にするのはセンスがいいなぁと思う。ちなみに、国際的な室内楽コンクールで優勝経験を持つ、グローバルでスゴ腕の弦楽四重奏団なんですよ!

まいこ:素晴らしい!

つあお:濃淡のある美しい青と巧みな造形で一つの絵を成立させる藍摺絵のような演奏をするってことですね! 憧れちゃうなぁ。

まいこ:令和時代のクラシック音楽の演奏家たちにまで影響を与えてしまうとは、恐るべし北斎!

まいこから一言

「浮世」絵についていろいろ語ってきましたので、私たちのユニットネーム「浮世離れマスターズ」について一言(笑)
「浮世(うきよ)」は、もとは「憂(う)き世(よ)」の意。仏教的厭世観から、つらいことの多い、いとうべき現世とのこと。
「浮世離れマスターズ」は、アートによって「憂(う)き世(よ)」を脱するプロ(笑)としてその術を広く伝えたいと思っております。皆さん、一緒に憂き世を離れて浮き浮きしましょう!

まいこセレクト/しりあがり寿『Great Tree』

しりあがり寿『Great Tree』 2021年、和紙にインクジェットプリント ©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵 展示協力:太平洋クラブ
すみだ北斎美術館「しりあがりサン北斎サン-クスッと笑えるSHOW TIME!-」展(すみだ北斎美術館)より展示風景

もし北斎が「プルシアン・ブルー」に出合っていなかったら、Great WaveがGreat Treeになっていたかも!
なんて想像が広がる1点。

つあおセレクト/しりあがり寿『冨士だけほぼ三十六景』

しりあがり寿『冨士だけほぼ三十六景』 2021年、和紙にインクジェットプリント ©しりあがり寿 すみだ北斎美術館蔵 展示協力:太平洋クラブ
すみだ北斎美術館「しりあがりサン北斎サン-クスッと笑えるSHOW TIME!-」展(すみだ北斎美術館)より展示風景

漫画家のしりあがり寿が、北斎の『冨嶽三十六景』シリーズから富士山の描写だけを46枚集めて構成した作品。有名な『神奈川沖浪裏』でうんと小さく描かれている富士山は、最上段の左から3番目。北斎の表現にはデフォルメが多いが、この作品を見ると、多様でありながらも意外なほどリアルに描かれていることがわかる。トークでまいこさんがしゃべっていたように、青い富士山も多い。

つあおのラクガキ

浮世離れマスターズは、Gyoemon(つあおの雅号)が作品からインスピレーションを得たラクガキを載せることで、さらなる浮世離れを図っております。

Gyoemon『和樂三十六計 逃げるに如かず』

怪物が来たら尻尾を巻いて逃げるのが一番という当たり前の教訓を描いた迷作。やはりアイズリエは美しい…かどうかは皆様の判断におまかせします。

展覧会情報

展覧会名:しりあがりサン北斎サン -クスッと笑えるSHOW TIME!-
会場:すみだ北斎美術館
会期:2021年4月20日(火) 〜 2021年7月10日(土)(緊急事態宣言の影響で変更になりました)
前期|6月1日(火)~20日(日)
後期|6月22日(火)~7月10日(土)
休館日|毎週月曜日
(下記公式サイトにてご確認ください)
公式サイトURL:https://hokusai-museum.jp/sansan/

主要参考文献

辻惟雄『奇想の江戸挿絵』(集英社新書ヴィジュアル版)
永田生慈『葛飾北斎の本懐』(角川選書)
内藤正人『北斎への招待』(朝日新聞出版)
小川敦生『美術の経済』(インプレス)

和樂web編集長セバスチャン高木が浮世絵について音声で解説した番組はこちら!

5月28日(金)劇場公開! 映画『HOKUSAI』

『HOKUSAI』5月28日(金)全国ロードショー(C)2020 HOKUSAI MOVIE

工芸、彫刻、音楽、建築、ファッション、デザインなどあらゆるジャンルで世界に影響を与え続ける葛飾北斎。しかし、若き日の北斎に関する資料はほとんど残されておらず、その人生は謎が多くあります。

映画『HOKUSAI』は、歴史的資料を徹底的に調べ、残された事実を繋ぎ合わせて生まれたオリジナル・ストーリー。北斎の若き日を柳楽優弥、老年期を田中泯がダブル主演で体現、超豪華キャストが集結しました。今までほとんど語られる事のなかった青年時代を含む、北斎の怒涛の人生を描き切ります。

画狂人生の挫折と栄光。幼き日から90歳で命燃え尽きるまで、絵を描き続けた彼を突き動かしていたものとは? 信念を貫き通したある絵師の人生が、170年の時を経て、いま初めて描かれます。

公開日: 2021年5月28日(金)
出 演: 柳楽優弥 田中泯 玉木宏 瀧本美織 津田寛治 青木崇高 辻本祐樹 浦上晟周 芋生悠 河原れん 城桧吏 永山瑛太 / 阿部寛
監 督 :橋本一 企画・脚本 : 河原れん
配 給 :S・D・P ©2020 HOKUSAI MOVIE

公式サイト: https://www.hokusai2020.com

書いた人

つあお(小川敦生)は新聞・雑誌の美術記者出身の多摩美大教員。ラクガキストを名乗り脱力系に邁進中。まいこ(菊池麻衣子)はアーティストを応援するパトロンプロジェクト主宰者兼ライター。イギリス留学で修行。和顔ながら中身はラテン。酒ラブ。二人のゆるふわトークで浮世離れの世界に読者をいざなおうと目論む。