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2020.10.27

日本刀の聖地・備前長船!「山鳥毛」など至高の刀剣が守るまちの姿

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岡山県瀬戸内市長船。かつてこの土地には「福岡一文字派(ふくおかいちもんじは)」・「長船派(おさふねは)」という日本刀の製作を行った名工の集団が拠点としていました。数々の名刀を生み出し、「日本刀の聖地」とまで呼ばれています。
いわばシャインマスカットや桃のように、刀剣が「特産」だった長船。日本刀のふるさとと呼ばれる場所はいくつかありますが、現在に至るまで刀剣を継続し、職人はその土地に住んでいる……というのはもはやここと岐阜県関市のみと言えるそうです。今回はその長船をめぐり、町に息づいた刀剣の空気を感じてきました!

現代と悠久の時をつなぐ。「備前おさふね刀剣の里」

奥に備前長船刀剣博物館の入り口

「長船派」は、織田信長や徳川家康など、歴史上の人物が所持した刀を多数生み出した歴史ある一派。その刀は全国に残っています。吉井川という岡山県を南北に流れる川のそばに立地し、さらに山陽道も通っている長船。恵まれた交易路のおかげで、物流を広げることができました。吉井川のそばには備前焼の地・備前市があり、交通の便がいかに重要だったかわかりますね。

博物館入口。展示期間だったのでゲームの「山鳥毛」が

JR赤穂線長船駅から車で約10分、「備前おさふね刀剣の里」では今も刀鍛冶が腕をふるっています。古くから伝わる古式鍛刀法なども行っていて、その手さばきを間近で見ることができるのも大きな魅力。敷地内には「備前長船刀剣博物館」があります。国宝・山鳥毛のクラウドファンディングでも話題になった、刀剣専門の博物館です。

初心者から通まで楽しめる、刀剣のあれこれ

刀鍛冶をはじめとする、刀職たちの居る工房。現在はガラス越しに見ることのみ可能

工房内は刀剣がどうやってできるのか? それぞれの職人が何を担うのかなど、実物を交え詳しく説明。何より博物館の横で実際の職人さんを見ることができ、直接お話を伺えるのも大きな魅力でした。現在は感染症対策のため、工房内は立ち入り禁止となっているのが残念です。
秋季展示(2020年10月4日まで開催)では日本刀の魅力の1つである、「刃文」(刀剣の刃に現れる模様。さまざまな種類がある)にフォーカス。刃文がどうやって現れるか、過程を「土置き」(土を置くこと。刃文の形作る)から順に展示。山鳥毛には山鳥の毛にも似た、ゆらめくような「大丁字乱れ」があり、美しい特徴のひとつです。学んでからじっくり眺める刀剣はまた格別の味わい!

お披露目になった山鳥毛に、現代の刀工の作品まで


新型コロナウイルスの影響でお披露目が延期となっていた山鳥毛。感染拡大防止策のため、予約制を取り公開されました。待ち望んだ展示に、予約が殺到! 9月の半ばには全日程の予約が埋まるという盛況ぶりで、問い合わせの電話も鳴り止まなかったそうですよ。

もちろん、山鳥毛だけではありません。鎌倉時代から室町、江戸時代、太刀や脇指、小太刀など、幅広い年代の、種類も作者も様々な刀剣がずらりと並び、圧巻の眺めです。現代刀工作品も展示されていましたよ。
併設の物産館では刀剣ゆかりの品々を販売。ついつい買いたくなってしまう、子どもから大人まで楽しめる魅力に溢れています!

「靱負」これ読める?ひっそりと残る足利尊氏ゆかりの神社


備前長船刀剣博物館から、歩いて7分ほどに「靱負神社 天王社刀剣の森」があります。ゆきえ、と読むそうで、歴史上の人物の名前にも使われているのだとか。その名の通り森を持つ、のんびりと美しい場所でした。とても歴史ある神社で、「眼病平癒の霊験あり」と言い伝えられています。
元々は1351年に新田義貞に負けた足利尊氏が、備前福岡に滞在中、目を患い、この神社に祈願。見事治ったことで信仰が広まったようです。今もその信仰は受け継がれていて、半紙に「め」と書かれた祈願の半紙が、拝殿の横の壁にずらりと張られていました。
靭負神社は、長船の刀鍛冶たちが目を守ってもらいたいと祈願した神社でもあります。「刀剣の森」には松の木がたくさん。刀剣は鍛刀において、主にアカマツを原材料とする「松炭」を使います。原材料となる玉鋼を製鉄するたたら製鉄にも、松炭を使用。ゆえに、刀工たちは松の木がなくならないように、植林も行っていたそうです。刀剣の森の松の木自体は、足利尊氏がお礼として植えたのがはじまりとされていますが、松の森が今も残っているというのは、えにしを感じますね。

作品を後世へ残した人々。刀匠の墓がある慈眼院


靭負神社から逆方向にジグザグと道を進むと、「慈眼院」(じげんいん)の門が見えてきます。長船刀匠菩提寺と呼ばれ、刀匠のお墓、そして「備前長船派最後の刀匠」元之進祐定が寄進した鐘があります。昨年、刀形の絵馬が登場。たくさん吊るされていましたよ!

敷地内にある刀匠慰霊塔

刀鍛冶たちのお墓……と言っても、個別のお墓があるのはほんの僅かです。お話を伺った備前長船刀剣博物館学芸員の方によれば、この地域で刀工たちが仕事をしていたということはわかっても、個々人の記録が残っているわけではない。同様に刀工自身の名前が刻まれていない刀もたくさんあります。立派な供養塔を見上げると、長船で積み重ねられた歴史を感じました。

「福岡一文字派」がいた備前福岡の歴史ある町並みも見逃せない

「長船派」の代表的な刀剣に「燭台切光忠」「小豆長光」などがありますが、先程から名前の出ている山鳥毛は「福岡一文字派」の作。長船のすぐ近く、備前福岡を拠点としていた刀工集団です。福岡って九州の県名……?と思われるかもしれませんが、実はこちらのほうが古い地名。黒田官兵衛の息子・黒田長政が徳川家康から土地を与えられたさいに、黒田家ゆかりの地名をつけたといわれています。

「福岡一文字造剣之地碑」。立て看板に説明がある

今でも歴史ある町並みが残っているので、足を運んでみるのもおすすめです。歩くと結構大変でした……。

すべてはつながっている。長船のまちには今も刀剣が息づく

武器でもありましたが、魔を祓うとも信じられていた刀剣。「守り刀」「懐刀」といった、大切な贈り物としても重要な役割を果たしていました。あらゆる苦難を乗り越え生き残り、長船の町が守る刀剣。逆に刀剣が町を守っているのかもしれません。

「備前おさふね刀剣の里」公式サイト
〒701-4271
瀬戸内市長船町長船966番地
電話:0869-66-7767

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