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2019.06.22

若冲の傑作屏風が動き出す!? アメリカ・ワシントンの展覧会で大評判のチームラボの快作!

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奇想の絵師として、日本美術では別格の人気を誇る伊藤若冲。

多くの人に若冲が愛されている理由のひとつに、すべての生き物に対する温かいまなざしを感じられる作品が多いことがあげられます。

その代表的な作品が、画面全体を方眼紙のように区切って、数万もの升目ひとつひとつに彩色する「升目画」の手法で描かれた『鳥獣花木図屏風』と『樹下鳥獣図屏風』。
六曲一双の屏風に生き生きと描かれた色鮮やかな動物と鳥の楽園は、江戸時代の作品とは思えない斬新なデザイン性と、ユニークな着眼点において比類のない傑作です。

その動物や鳥たちを現代の感覚で表現するとしたら……。

若冲作の鳥獣の楽園が、動きだした!

アメリカ、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー・オブ・アートで開催中の動物表現に関連した大型の日本美術展「日本美術に見る動物の姿 / The Life of Animals in Japanese Art」で人気を集めている作品が『世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う』です。

若冲が屏風に描いたファンタジーな升目画の世界と、升目ごとに抽象化された世界とが、鑑賞者の存在により入り混じるインタラクティブなこの作品は、あのチームラボが手がけたもの。

若冲ファンにはもちろん、日本美術に縁がなかった海外の人も思わず引き込まれてしまうワクワクするような作品は、2019年6月2日(日)から8月18日(日)まで展示されています。

チームラボならではの最新の日本美術

江戸時代中期の京都で活躍した若冲の升目画を代表する『鳥獣花木図屏風』『樹花鳥獣図屏風』をモチーフにしたこの作品についての、チームラボの解説をご紹介します。

升目画は、どこかコンピュータの機能的制約から生まれたピクセルアートに通ずるところがある。
若冲の升目画は、西陣織(京都西陣で織られる伝統的高級絹織物)の制作工程の工業的制約か、もしくは、それに触発されて描かれたのではないかという説がある。
ピクセルアートも機能的制約で生まれたが、機能的制約がなくなった現在でも、表現のひとつとして愛されている。
升目画は、ひとつの升目ごとに何種類かの色彩を使って四角の中に模様を描いており、印象主義や点描主義よりも以前から、視覚混合の光学現象を意識して表現しているかのように思える。

以上の観点から、仮想の三次元空間の中で動植物を立体物として動かし、その空間を「超主観空間」という映像作品にしたのが『世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う』です。

三次元空間上の色は、画面の升目ごとに、升目の中の何重にも描かれた模様によって分割され、彩色されています。
画面の升目は固定されています。しかし、空間は動いているため、作品の中で升目内の彩色と三次元空間が違う時間軸で共存しています。

などと言葉で説明するのは難しいので、作品の動画をご覧ください。

チームラボ / teamLab とは?

アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家などさまざまな分野のスペシャリストから構成されている「ウルトラテクノロジスト集団」を標榜するアートコレクティブ。

47万人が訪れた「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」(2014年)、「ミラノ万博2015」日本館をはじめ、シリコンバレー、台北、ロンドン、パリ、ニューヨーク、中国、シンガポールなど国内外で常設展およびアート展を開催するほか、東京・お台場に《地図のないミュージアム》「森ビルデジタルアートミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」を常設。

2020年秋まで東京・豊洲にて《水に入るミュージアム》「チームラボ プラネッツ TOKYO DMM.com」、2019年8月24日までTANK Shanghai(中国・上海)にて「teamLab: Universe of Water Particles in the Tank」を開催中。

また、チームラボの作品は、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(オーストラリア・シドニー)、南オーストラリア州立美術館(オーストラリア・アデレード)、サンフランシスコ・アジア美術館(アメリカ・サンフランシスコ)、アジア・ソサエティ(アメリカ・ニューヨーク)、ボルサン・コンテンポラリー・アート・コレクション(トルコ・イスタンブール)、ビクトリア国立美術館(オーストラリア・メルボルン)、アモス・レックス(ヘルシンキ・フィンランド)に永久収蔵されています。

teamLab is represented by Pace Gallery.
チームラボ Instagram Facebook Twitter YouTube


『世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う / United, Fragmented, Repeated and Impermanent World』
teamLab, 2013, Interactive Digital Work, Endless, 8 channels, Sound: Hideaki Takahashi

「日本美術に見る動物の姿 / The Life of Animals in Japanese Art」展

5世紀の埴輪から現代にいたるまで、動物表現に関連した日米の重要なコレクションから、選りすぐりの作品300点以上が一堂に会する、かつてない規模と内容の展覧会。
『埴輪犬』から、康円『木造騎獅文殊菩薩及脇侍像』(重要文化財、東京国立博物館蔵)、『八相涅槃図』(名古屋市・西来寺蔵)、伊藤若冲『旭日松鶴図』(摘水軒記念文化振興財団蔵)、河鍋暁斎『惺々狂斎画帖(三)』(個人蔵)、草間彌生『SHO-CHAN』など、表情豊かな動物が描かれた作品が展示されます。

会期 2019年6月2日(日)~ 8月18日(日)
会場 ナショナル・ギャラリー・オブ・アート 東館 コンコースギャラリー
6th and Constitution Avenue NW, Washington, DC
開館時間 10:00~17:00(日曜は11:00~18:00) 料金 無料
公式サイト #teamLab
ナショナル・ギャラリー・オブ・アート

書いた人

通称TAKE-G(たけ爺)。福岡県飯塚市出身。東京で生活を始めて40年を過ぎても、いまだに心は飯塚市民。もともとファッション誌から始まったライター歴も30年を数え、「和樂」では15年超。日々の自炊が唯一の楽しみ(?)で、近所にできた小さな八百屋を溺愛中。だったが、すぐに無くなってしまい、現在やさぐれ中。